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地方ワンオペ寺院住職の弱者の戦略


一般的に”坊主丸儲け”のイメージが強い寺院業界ですが、その実態は半数以上が年収500万円にも満たない(住職の年収ではなく、宗教法人としての収入です)という調査結果が出ています。そのような状況の中、他の勤めを持ちながら兼業で住職となり、寺を護るという兼業住職の割合が大きくなっており、さらに増加傾向にあります。そんなマクロの流れの中、私は5年前に勤め人を辞めて専業住職となる逆の道を選びました。そして、専業になって5年の一区切りのタイミングで、”地方寺院”と”ワンオペ住職”というリソースが限られた弱者の立場から、これまで取り組んできたことの振り返りをしてみたいと思います。

檀家さんの満足度をあげる

地域に根差した寺院にとって、檀家さんとの関係は地域社会そのものです。まずはその人たちと向き合い直すことを考えました。寺院として、企業でいうところの既存顧客に当たる、檀家さんの満足度向上を目指す取り組みを行なっていきました。

年4回のお便りの発行

四季折々の寺の活動報告、法話などを盛り込んだお便りを年に4回、檀家さんにお届けしています。このお便りは、地域の暮らしと共にある寺院の姿を伝え、檀家さんの生活に寄り添うことを大切にしています。地域の特産物や季節のイベント情報も取り上げることで、檀家さんが寺院を通じて地域とのつながりを感じられる工夫をしています。

仏事の見直し

当たり前に行っている法事も、その意味やお焼香の作法などについて説明し、一緒に読経できるようにするなど、参加している方々に意義を感じていただけるように変えていきました。お便りの中でもそういった話題を取り扱ったりして、わからないことを気安く質問していただけるようにもしました。


 境内や墓地通路をキレイにする

当たり前のことといえば当たり前なのですが、お盆や春秋の両彼岸には、特にお墓参りの方が多いですが、季節を問わず土日休日を中心に多くの方がお墓参りに訪れます。1人ではやりきれないので、檀家さんに協力していただいたり、時には業者さんに外注したりもしています。しかし、いつも満足にやりきれているかというとそうでもなかったりします…。


地元ローカルメディアへの露出

山梨県という範囲であれば、地元メディアに寺の活動を紹介してもらえる機会は結構作りやすいです。何かイベントや新しいことを始める際に、地元のテレビや新聞に情報を流すと、結構な確率で取り上げてもらえます。何回かそんなやりとりを続けていると、顔馴染みの記者さんもできます。
お寺が関わるメインの世代はいまだに新聞・テレビが一番の情報源の方が多いので、自分のお寺や住職が取り上げられると、檀家さんも「自分たちの寺(住職)が紹介された!」と誇りに思っていただけます。特に、地域の出来事や行事に住職が参加することで、寺が地域の一部として認識され、檀家さんの満足度も自然と向上します。

ネットでの情報発信

少し調べれば、ネットの世界で発信している僧侶を沢山見つけることができますが、全国に10万人ほどいる仏教寺院の僧侶数と比べれば、ほんの一握りというかひとつまみくらいのものです。特に、地方ローカルの範囲に限定すれば、インターネットでの定期的な発信は、ほぼ手がつけられていない分野と言っても過言ではありません。私も特別フォロワー数が多いわけではありませんが、継続して情報発信をしていることで、地元地域でお寺や仏教に興味がある方や供養や祈願のニーズがある方に見つけてもらって、そこからご縁が始まった例も多々あります。
ローカルの人に見つけてもらうということを中心に考えると、ネット上に発信するコンテンツ自体の質やフォロワー数とかはあまり気にかける必要がなく、寺で地に足をつけてやっていることの、報告や告知をしているだけで価値が十分にあると思います。

また、お寺が関わる世代は主に60代以上ですが、それ以上の年代の方が全くネットを使わないかというと決してそうではありません。60代、70代の半数以上は日常的にインターネットを使っています。

年齢階層別インターネット利用率(出典)総務省「通信利用動向調査」

寺の名前と実名を出してやっていると、結構みてくれている檀家さんもいるみたいで、定期的に発信をしていることを褒めてくれる方や遠方の檀家さんで寺の様子がわかって良いと喜んでくれる方もいたり、檀家さんの満足度を上げる効果も実感しています。なので、アテンション目的の投稿なんかはしないようにしていますw(この種明かしみたいな記事見られると、したたかな住職だと思われるかもしれません…w)

まだまだホームページを作っている寺院も少ないので、ホームページも作成しました。


地域×お寺で事業づくり

全国的にも問題になっており、当然、地元南アルプス市でも増加している空き家を活用し、宿坊として新たな価値を創出しています。空き家活用についてはさまざまな手法が話題になっていますが、寺院の宿泊施設という切り口は全国的に見てもほとんど無いようです。

寺院という地域に根ざした存在が運営することで、宿坊は単なる宿泊施設にとどまらず、地域の資源を活かしたサービス(果物やワイン、地元の食材を使ったBBQプランなど)や仏教体験(朝のお勤め、写経、瞑想体験など)をすることができます。まだまだ満足するほどの、結果は出せていませんが、檀家さんを中心に地域の方々にも応援してもらいながら事業を続けられています。


振り返ってみると…

改めて見直してみると、思ってたよりも弱者の戦略を取り入れられている活動をしていることに気がつきました。しかし、まだまだ焦点が絞りきれていないと考えさせられる箇所にも今回気がついたので、これらをブラッシュアップしながら今後に繋げていきたいと思います!


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