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三姉妹

今日は映画のレビューをしようと思います。

年末が近づいてきて、いつもの“今年はどんな映画をどのくらい見ただろう”を振り返る時期になってきました。

そんな事を思ってる隙にとんでもない映画に出会うことが多いんですよね。

ずっと見たかったイ・スンウォン監督の「三姉妹」
今日はこちらにレビューをしたいと思います。

タイトル通り三姉妹のお話なのですが、そもそも私は一人っ子なので、兄弟に関する映画にはあまり理解ができなかったり、共感なんてもってのほかって事が多いんですけど、そんな中でも登場人物を掘り下げて兄弟関係以外の所にフォーカスして考える事が多いんですが、この映画に関しては、本当に、わからない!!

何がわからないって、兄弟で支え合う、長女、次女、三女の立場。
どんな事を相手に対して思っているか、全くわからない。
序盤はそんなことの連続で見進めていました。


次女役の役者さんムン・ソリはオアシスという映画で障害を抱えた難しい役どころを演じていて印象深かったので、気になっていた女優さんでした。

あらすじは、大人になった三姉妹のそれぞれの人生のお話なのですが、これがまた皆んな厄介な物事を抱えて生きています。

今回は印象に残ったセリフや場面にフォーカスして行きたいと思っていて、何故なら兄弟関係や事情を全く共感できない私に対してもグサッと来る、身に覚えのある、苦しいシーンが多数あったからです。

まず主人公である三姉妹ですが、
三女は幼い頃からいつも姉妹の蚊帳の外。
あんたはなにも知らなくて良い、と言わんばかりに育てられます。
その結果、演出家としての仕事はうまくいかず、仲間にうまく接することもできず、旦那が連れてきた子供との親子関係もうまくいかず。
毎日酒浸りのアル中。
役者さん、すごいです。
あれは完全にアル中の顔。
いつも顔が真っ赤で荒いキメの肌。
だけどきちんとお母さんになりたくて必死にもがく。


次女は結婚して二人の子供といい家を手に入れて一見うまく行っているけど、宗教に縋り、夫には浮気される。
浮気相手に暴力を振るう。

三女は問題児の娘のいるシングルマザー。
しがない花屋を営み別れた旦那にお金を渡す貧困の生活。

ここからはもしかしてネタバレになるかもしれないので、これからみようと思っている方は注意です!!




この映画はラストで別々に暮らす三姉妹が父の誕生日に久しぶりに家族で集まるのですが、その会食ので起こる家族全員の一色触発のシーンが凄まじいです。
そしてそのシーンが全てでした。


結局彼女たちがこうなったのは全部父のせいだったんですよね。
私がこの映画を通して感じた事、監督が伝えたかった事は、家父長制が引き起こす負の連鎖だと思いました。

日本よりこういったテーマに繊細なイメージのある韓国が、家父長制をズタズタに全否定した事に驚きを隠せませんでした。
宗教二世が話題になっている近頃、2022年の映画にこのテーマを打っ込むのはすごいの一言です。

家庭で威張り散らして散々迷惑をかけ、子供の人格にまで影響を与えてきた父ですが、ラスト数十分。例の会食のシーンで謝罪を求められるのですが、謝りません。

三女の娘が「大人の癖に謝れないのかよ」と言ったのが爽快で印象的でした。
爽快、というか、この映画の心理でもあるというか。
家父長制の家庭で育った子供達は、子供達なりに自分の信念、常識を身につけていきます。長だった父(謝れないのかよと言った子からしたらお爺ちゃん)から血縁が遠ざかるにつれて他人を地位や権力で押さえ込むという血筋が薄まっているようでホッとしました。
母も父を庇い「お父さんはもう変わった」と言いますが、今となっては穏やかな父かもしれないけれど、トラウマを植え付けた事は謝っても償いきれません。


次女は父に似て、思うようにいかない事には怒鳴り、圧で相手を貶めます。
それが自分でわかっていて、そうなりたくないと思う気持ちとの葛藤は見ていられませんでした。

幼い頃から父に虐待を受けてきた長女は、自分が悪くなくてもすぐに謝る。
貧乏で食生活も乱れ化粧もせず、娘には罵倒される生活を送っています。
彼女が会食で一色触発した時に言い放った「皆んなご飯だけは食べて。次女がこの会のために50万ウォン(※日本円で約5万円)も出したのよ。」と食べ、泣きながら訴えました。
彼女はガンでした。
それを家族達が知ったのはこの時で、きっと裕福な暮らしをしている次女がこんなくだらない会食に50万ウォンも出している。自分の病気の治療費には私は1万ウォンと出せないのに。と心の声を感じ取り、この映画で一番グサっときたシーンでした。


次女が旦那に浮気され、離婚話になった時に言った「まずあなたに貸した〇〇の時の〇〇ウォン。それとあの時の〇〇ウォン。それを返してもらってから別れます。」ここまでは現実的にそうだよなと思ったのですが、それに続けて「離婚するにも努力がいるの」
と言いました。
これはかつて自分の知人が言っていた、結婚よりも離婚の方が何十倍も面倒で色んな労力を削ってる。という言葉を思い出しました。

三女は「今日からは家族全員でご飯だから」と言って、家族を作っていこうとします。“お母さん”がしたかったんだな、と、なんでも見て見ぬ振りをさせられていた三女の信念が見えた気がしました。


ラスト、三姉妹は思い出の海に行って写真を撮り、一件落着のようで実際は絶対そんな事ないんだろうなという終わり方にも絶望を感じ、納得なんかしてないけど、やって行くしかないという決心が見えました。


爽やかなジャケットからは想像できないような内容だったので、三姉妹のほのぼの話を思っている方は要注意ですが、いい意味で裏切られ、兄弟でなくても血縁関係、絶対に拭えないDNA、そして新しい時代に向けての叫び、これらを存分に感じ取れると思います。
今リアルに熱量を感じられる作品です。

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