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#5私の過去体験

胡散臭い話というのはそこら中に転がっていて、
私も若い頃近づいた経験がある

高校生のとき、友達がとある基礎化粧品を勧めてきた
高校生にとっては高価なライン
せっけんと化粧水とクリームが基本で、サロンに購入した自分の化粧品を持参すると、それを使ってエステ的なものをしてくれるというシステム
クリームとかせっかく買ったのに惜しみなく使われた、、
スチームを当てながらマッサージされた

友達のお姉ちゃんがそこのサロンに出入りしていて、私も何度か訪ねてサロンの女性オーナーやそこで働く人たちと仲良くなった
世間知らずだった私は、美容のプロたちに初めて出会ってその世界にいられることに浮かれていた
化粧品は友達がまず仕入れてそれを購入するというシステム
たくさん買うと会員ランクが上がってより安く仕入れられるようになり、自分の利益が増えるというもの
まぁ、いわゆるねずみ講ってやつなんだけど
世間知らずな高校生、そんなもんなのかなと思ってしばらく続けていた
親には心配されたが静観されていた
(言い出したら聞かない私の性格を知っていた)
メイクアップのイベントがありそれに出たりもした
肝心の肌質が改善されたかどうかは記憶にない

あるとき大阪で会社のパーティがあるから行かないかと誘われた
友達は行かないらしいがそれは後から聞かされた
少し不安だったが参加することにした
(お金を払ってくれた親には感謝している、行けば目が覚めるからと言って送り出してくれた、ある意味信用されていた、、)
黒スーツを着てヘアメイクもバッチリしてそんな集団の中に居いられることが楽しかった
豪華なホテルに泊まり、披露宴会場みたいなところで食事した
女性会員の人たちが余興でAnnieのミュージカルを行った
それを見て私は感動して涙が自然に出てきた
仲良くしてくれていた女性会員に、大丈夫?!と聞かれて、私は感動した〜!と言って笑い合ったのを今でも覚えている

それからどうしたのかはあまり記憶にない
その友達とも自然と離れてしまったが、嫌な感情は全くなく、サロンとも高校卒業して自分のやりたいことに忙しくなってからはその存在もすっかり忘れるほどだった

あの夜にAnnieを観て涙が出てきたのは間違いなく洗脳の賜物だったと今ではわかる
ああいった場所に居続けることはとても危ないことなのだ
私は運良くのめり込むことはなかったが、陶酔してしまったら大切なものを失っていたかもしれない

これが、のちのちの人生において私に警戒心を教えてくれた経験となったことは間違いない

・・・・・

もう一つは社会人になってからすぐのこと
これもまた友達繋がりなのだが
高校の時の一番の親友が、会って欲しい人がいるからと私を誘ってきた
お互い別の大学に進み会社に勤めて、それなりに経験を積んでいた頃だった
ベイエリアのタワーマンションに友達と足を踏み入れた
タワーマンションなんて初めて入るから少し嬉しかったが、油断しては行けないと心に武装した
共有スペースのソファに案内された
夜だったので室内は薄暗く、外の夜景が綺麗だった

そこに住んでいるという少し年齢が上の若い女性が1人でやってきた
薄ぼんやりとしか覚えていないがそんなに派手な印象はなく、むしろちょっとダサいニットとスカート姿だった
友達の目はキラキラしていた
当時スマホはまだなくて、友達は手帳とペンを取り出して女性の言うことを熱心にメモしていた

その女性はコンサルタントをしているらしかった
コンサルタントという仕事がどのようなものなのか私は当時知らなくて、女性の説明では企業と企業をつなぐ橋渡しをしていて、ネットワークが広いからさまざまな人と知り合い、合う人、合う会社とを繋げてビジネスを広げていくという話を聞いた
人と人を繋げて利益を生んで収入を得るということがぼんやりしすぎていていまいちピンと来なかった
(当時私はアパレル勤め、友達は会社員だった)

友達はコンサルタントになりたかったのか、そもそも何をしにその女性に会い、はたまた私を連れて行ったのかは覚えていない、、
ただ、胡散臭い空気がすごかった
私は大切な友達が間違った道に進まないように見守った

この女性が本当にこのタワーマンションに住んでいるのかはわからなかったが、会社か上司かに住まわせてもらっていると言っていた
女性の夢は銀行を作ることらしかった
今ある銀行は、駅前に店舗を構えて、揃いの綺麗な制服を着せて、余計なお金がかかっているから
地方の人が泣いている
私は自分の銀行を作って地方の人を救いたい
というようなことを熱弁していた
友達は終始真剣な顔で女性を見ていた
今の銀行の問題を問われたが、そんなこと考えたこともなかった私は、こんな若い女性が銀行を作りたいなんてそんなことできるのかなぁ、すごい夢だなとしか思えなかった

面白くなってきて、女性を論破したくなってきた私は自分の分野であるアパレル業界について質問した
女性はその少しダサいニットとの左裾をめくって製造国を確かめた
安い賃金で服を製造しているであろうその国に想いを馳せていたのか、その国に過酷な労働をさせて何たらかんたらと言っていたが詳細は覚えていない

とにかく不思議な夜だった
私は全く洗脳されることはなかったが、知らない世界を見た気がした
この友人はこのあとも真面目に商社で会社員をしているから道を踏み外すことはなかった
この女性が銀行を作れたのかどうかはわからない

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