バイリンガル教育で1番怖いのはセミリンガル(ダブルリミテッド)
バイリンガル教育をする上で、1番気をつけなくてはならないことはセミリンガル(ダブルリミテッド)だと思います。
セミリンガル(ダブルリミテッド)とは?
「セミリンガル、ダブルリミテッド」とは、二言語とも充分に発達していない状態のことを指します。(*1)
バイリンガル教育の話となると、『英語よりまずは母国語が大事!』や『母国語が育ってから英語を学べば間に合う!』など、低年齢の時期のバイリンガル教育が批判されることがあります。
これはある意味正しくて、ある意味違います。
何が言いたいか、というと結局は国語力が大事ということです。
どちらの言語でも国語力が育っていないのに、2言語を詰め込んでも子供は混乱してセミリンガルになるだけです。その点で、早期バイリンガル教育が批判されるのは妥当でしょう。
一方で、発音には臨界期があるので、早期バイリンガル教育は早いに越したことはありません。
つまり、早期バイリンガル教育を意味のあるものにするのなら、2つの言語のうち1つだけでも年齢相応の国語力をつけることを目指すべきです。
年齢相応の国語力とは?
専門用語ではCALP (Cognitive Academic LanguageProficiencyの略)と呼ばれる、認知学習言語能力のことです。CALPと対になるのが、BICS(Basic Interpersonal CommunicativeSkills)といわれる日常的な会話(言語)能力です。
日本の子どもがアメリカに行くと、通常BICSは1~2年で習得できます。しかしCALPの習得には6~10年ほどかかるので、認知能力が順調に育っている小学生の段階で教育言語が変わると、新言語(英語圏なら英語)でのBICSを身につけながら、日本語CALPの伸長を継続しないと、どちらの言語でも年齢相応に達していない不幸な状況に陥ります。(*2)
私は母語転換した後はずっと日本語環境だったので、CALPは維持することができましたが、渡航や帰国のタイミングによってセミリンガルとなっているハーフや帰国子女の友人もいます。
セミリンガルの彼らは日英どちらも7割くらい話せる方が大半で、日常生活には全く問題がなく1番困っていたのは進学や就職の時でした。
例えば、日本を選んだとしたら、砕けた話はできるけど敬語が変、とか、論文が書けないとか、基本的なマナーがなってない。日本がダメだからと、逆にアメリカを選んだとしても、そこらへんのアメリカ人のネイティブには太刀打ちできないという…それぞれなんとも苦しい胸の内があるようでした。
noteでも何人かセミリンガルについて参考にさせていただいた方々がいらっしゃいますので、紹介いたします。
バイリンガル教育を目指す上で、セミリンガルの危険性については常に意識するべき事柄であると思います。
(*1)にわとりの会
https://www.niwatoris.org/current-status/
(*2)田浦 秀幸『公益財団法人私立大学退職金財団』