その日のために、この家族と共に
If you build it, he will come.
フィールド・オブ・ドリームスという映画がある。
高校生のときにみて以来、ずっと大好きな映画だ。
この作品の中に
If you build it, he will come.
という有名なセリフがある。
ケビン=コスナー扮するレイ=キンセラがとうもろこし畑の中で聴く天の声であり、日本語訳では、「それをつくれば、彼が来る」とされている。
その日からレイは「彼」に会うために「それ」をつくりはじめるのだが、なんと言ってもこの作品の中で際立っているのは、アニー=キンセラ、つまりレイの奥さんの存在だ。
詳しくは作品をみていただくとして…
男のひとりよがりであることは百も承知だが、ぼくはこのアニーが好きだ。あんな女性を伴侶に持ちたいものだと、心のどこかでずっと思っていた。
6月21日
なんだろう、ソワソワする。たとえるなら、バレンタインデーを控えた男の子の気持ちに近いのかも。もしくは通信簿を受け取る前のドキドキかな。
こちらから催促するわけにもいかないし、でも本当に気づいていないのだとしたら、さりげなく注意喚起したい気もする。
ぼくには小5の娘と小1の息子がいる。
おそらくはここ数年間限定の、局所的恒例行事なのだろう。
前日までまったくそのそぶりも見せなかったから、半分覚悟していた。
当日朝。「おとうちゃん、めをつぶってこっちにきて」と息子に手を引かれた瞬間、あ! ってなった。
さいきんようやく字を書けるようになってきた息子から、たぶんはじめての手紙らしい手紙をもらったこともうれしかった。
「服をいっぱい買ってくれてありがとう」という、娘のゲンキンなメッセージも笑わせてもらった。
それだけでも涙が出そうだった。
でも、ぼくがいちばんうれしかったのは、妻からのメッセージだった。
楽しい事をたくさん話してくれてワクワクするよ。
私も世界中、色々見に行きたいな。
妄想ともいえる他愛もない夢ばかりいつも語って、出世とはずっと無縁で、ちっとも生活を楽にしてあげられなくて……。迷惑ばかりかけている妻に、そんなふうに言ってもらったことが、無性にうれしかった。
アニーは映画の中だけの理想の女性ではなかった。
ここに、ぼくのいちばん近くにいた。
ぼくが気づいていないだけだったのだ。
If I do it, that will come to us.
ぼくたちの物語とするため、ぼくはこれをやり遂げなければならない。
妻と二人の子どもたちを、世界中に連れて行ってやらねばならない。
だから、もうすこしだけ待っていてね、みんな。
ずっと君たちをワクワクさせられるお父さんでいられるよう、もっとがんばるから。