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ボードゲーム論としての「ルル三条」
自分が「おもちゃとゲームの違い」について気になりだしたのは、2018年10月あたりから。ネット検索などで拾えるかと思ったのですが、なかなか見当たらなかったのですが、
ボードウォークコミュニティのえらく初期のころに書かれた「ゲーム論」が見つかりました。
簡潔にいえば、
「ゲーム」は所作(ルール)。「おもちゃ」はもの(器具)。
です。ゲームとはなにか、ということについて「ルール」を重要視する傾向は、数々のゲーム研究者の見解でもあります。
二代目さんがあげた記事は、非常に参考になりました。
で、この記事を見て気づいたのは、
なんで、日本人とか東洋の視点でのゲーム論がないの?
です。次々と翻訳書が出版されるのはありがたいのですが、じゃあ日本はどうよ?と疑問に思います。
実際のところは、遊戯史の研究や教育という視点での玩具・おもちゃ論などについてたくさんあります。ただ、東洋的思想・日本的思想からのボードゲーム論はあまりないように見受けられます。
1978年にとある日本の文学者が雑誌にある論文(というかコラム)を書いています。それを「ボードゲーム論」として考えてみたいと思います。思いますがその準備としての「ある概念」を今回紹介します。それがタイトルに書いたルル三条です。
ルル三条とは「ルール」「ロール」「ツール」
編集者(エディター)の松岡正剛さんが培った編集術を「編集工学」と名付けています。その中の方法(メソッド)の1つにルル三条があります。
これは、ボードゲームだけではなく様々な行動を3つのカテゴリに分ける、というものです。その3つが、
「ルール」…規則や手順、取り決め。
「ロール」…役割。
「ツール」…物や場所など。
です。たとえば、「歯の磨き方」だと
「ツール」…歯ブラシや歯間ブラシ。歯磨き粉。コップ。水。
「ロール」…「ツール」を「ルール」に従って使いながら行う。
「ルール」…「ロール」がどのように「ツール」を使うかなどの方法や
順序などを決める。
という感じです。この考え方は、何かアレンジを加えるときにも助けになります。たとえば、歯を磨くのは普通1人でしょうが、「高齢者の介護」の場合だと、
「ロール」…「歯を磨く」役割と「歯が磨かれる」役割の2つに分ける。
「ルール」…「ロール」が2つに分離したので、役割の分担に加え、
「ロール」同士の協力など取り決めも決めていく。
「ツール」…高齢者なので「入れ歯」という追加もありえるので、
それに対応する「ルール」「ロール」なども決めていく。
と変化します。1つなにか変わると、3つがダイナミックに呼応していきます。
ボードゲームをルル三条でわけてみる
ということで、ボードゲームも当てはめてみます。
「ルール」…ゲームの流れ、コンポーネントの使い方、勝利条件など。
「ロール」…プレイヤーとして、コンポーネントを使い、勝利条件などを
満たすように行動する。
「ツール」…コンポーネント(構成物)。
大雑把ですが、こうなりますね。ただ、
以前書いた「Game System」も、ルル三条でわけると、ボードゲームと同じです。とすれば、違いは何かというと
「ルール」を主軸として据えているのが、ボードゲーム
(「ルール」によって、「ロール」が何をするのか、「ツール」はどのような意味でどう使われるのかを示す)
「ツール」を主軸として据えているのが、Game System
(「ツール」の特徴によって、「ロール」はどのように使うのか、どのような「ルール」を当てはめるのかを決める)
と考えます。これは、最初に書いた、ボードウォークコミュニティの「ゲーム論」
「ゲーム」は所作(ルール)。「おもちゃ」はもの(器具=ツール)。
と酷似していますが、全く同じではありません。
「ルル三条」だともっと考えを広げることもできて、たとえば、「ロール」を中心に据えた場合だと、それはなにか?という問いも生まれます。1つの回答として、「テストプレイ」があります。さらに言えば、
「ツール」…「ボードゲーム」全体。
「ロール」…「判断する者」としてプレイヤーや他の視点から、
「ボードゲーム」を行う
「ルール」…「ルール」や「ツール」などに問題点や矛盾点などが
ないか検討する。あれば、「ボードゲーム」の「ルール」
を変更する。
というように、「ツール」をメタ化して考えることもできます。
「ロール」
/ \
「ツール」――「ルール」
※ルル三条の関係図。「ツール」にボードゲームを当てはめると、
「ロール」
/ \
/ \
「ルール」 \
/ \ ――――「ツール」
「ツール」――「ロール」
※上のような関係図になる。
ということで、次のノート(ボードゲーム論としての『遊字論』)に続きます。