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テスラを訴えたシャープの訴訟結果発表
風の噂で、テスラを訴えたシャープの事件が和解になったと聞いて、東京地方裁判所に行ってきました。
民事事件記録等閲覧をしたところ、本当に今年の3件あった事件は全て取り下げ(和解)されていました。
最新の3/19に提起した事件について閲覧請求した結果を載せてきます。
なお本件含め閲覧は可能ですが謄写や複製はダメだったので、手書きのメモ残しですので誤記はご容赦願います。。
シャープHPによると特許権侵害差止請求訴訟の提起は1月31日、2月3日、3月19日の3回にわたって行なわれたそうです
訴訟結果
3/19に提起しています3件目の事件ですが
事件番号:H2(ワ)7457号
東京地裁民事40部1B
佐藤達文部長の合議体、
三井大有判事
吉野俊太郎判事のお名前がありました。
10月2日に取り下げし、被告からも同意を得て無事終結しています。残り2つの訴訟も似たような時程で取り下げしたものでしょう。
それでは書誌事項より。
原告シャープ 代表者は戴正呉さんでした。CEO兼会長、フォックスコンの副総裁でもあります。
原告担当弁護士は服部誠先生
知財ブティックの阿部・井窪・片山法律事務所のパートナーですね。色々な講演などでもお馴染みの重鎮です。
代理人としてはほかに岩間智女先生、黒田 薫先生等々が載っていました。
被告のテスラモーターズジャパン
被告担当弁護士は岡田誠先生
5大事務所のひとつTMIのパートナーですね。設立パートナーに稲葉弁理士が居て知財にも、先端技術にも強いイメージです。
岡田先生はスタンフォード大学のロースクールを卒業されているのでテスラモーターズとしても依頼しやすかったのでしょうか。
そういえば、最近出た雑誌、東洋経済の知財弁護士にも目立つところには内田誠先生のお名前があったと思います。他に下町ロケットで有名な先生や、城山先生が載っていました。
今みたら、両筆頭弁護士は「誠」繋がりですね。どうでも良かったですが。
さて本件は3月19日に提起し、何度も言うように10月2日 取り下げになっていますが時系列に見ていきます。
訴状
訴えのイ号はテスラの車載LTEです。
別紙のイ号製品はTesla モデルS,3,Xが載っていました。
訴額3億7500万円
年の売上80億円の5%を利益と見積もり利益は4億円
7.5年の(2017.5.19登録)総計は30億円
関与を1/8として3.75億円
対象特許は
特許第6145137号
移動基地局側の特許です。移動体は厳密には車両側ではないですが明細書を見ると
課題の欄に「ハンドオーバーが理由のランダムアクセスにおいては、他の移動局と衝突が発生すると通信が途切れてしまうため、衝突が発生しないことが望ましい。」ので【0027】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、ハンドオーバーやページングの応答など、基地局装置からの指示に応じて移動局装置がランダムアクセスを行なう場合において、ランダムアクセス時に発生する衝突を防止することができる処理方法、基地局および移動局を提供することを目的とする。
移動局である車両が通信先の基地局をハンドオーバー(切り替え)するときに
きれいに切り替えできるような処理に関する特許です。上の図にあるst405がポイントです。
出願事務所は、シャープのお膝元である大阪の特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARKの出願です。
SEPなので下記のESTI規格の内容を実施しているという当てはめを行っています。
TS36.321v812.0
つまり4G、LTEのリリース8をやっていると主張しています。
後で間違いを指摘され修正しますのでまずはこんなところで。
68条本文@「特許権者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する。」を侵害するという主張です。
訴状の中では事前交渉が有ったとしており、具体的にはAVANCIのFRANDについて、
3年以上ライセンスの申し出をしたが音沙汰がないという主張あり。
よって特許法100条により差し止めも求めています。
答弁書
テスラ側としては答弁書は徹底抗戦 すべて認めず
でまずは返しています。そしてその後、
求釈明6月18日し、
岡田先生よりテスラに載っているTCU
Le940b6のモジュールはリリース10を実施している。
添付資料もHW TELIT なので、リリース8での当てはめは失当であるとの主張。
いわゆる門前払いですね。
これに対しシャープは、
原告準備書面7月10日で
服部先生はイ号をリリース8ではなく
リリース10LTEで作成し直し提出しています。
内容は訴状のリリース8とほぼ同じ。まあ当たり前ですが上手く動いているシステムであるときはリリース8、9,10でそれほど差が出ることはありません。
https://www.etsi.org/deliver/etsi_ts/136300_136399/136321/10.00.00_60/ts_136321v100000p.pdf
被告テスラの反論
被告準備書面8月7日
テスラ側は第1シグネチャがSEPの内容と異なるため属さず非侵害であるとしています。
クレーム1(以下、CL1)のbのエレメントが異なるので、前記で「第1シグネチャ」の記載があるエレメントc、dを含めて非侵害であるとしています。とりあえずCL1だけでも見ておきます。
【請求項1】
a所定数のシグネチャの中の一つのシグネチャを使用して基地局装置にランダムアクセスを行う移動局装置において、
bランダムに選択できるシグネチャである第一のシグネチャの数を示す情報を前記基地局装置から取得し、
c前記第1のシグネチャと、前記第1のシグネチャと異なる第2のシグネチャの数を制御するものであって
d前記第一のシグネチャの中から一つのシグネチャをランダムに選択し、ランダムアクセスを行うことを特徴とする移動局装置。
構成b-dで争う。
取り下げ案件でもあり、ここではその技術的な詳細には踏み込みません。但し、第1シグネチャはLTE の内容と異なるため、4Gの標準必須特許ではないということは追記だけしておきます。どっかで訴えられたら思い返してください。
このように3GPPの内容と異なるためSEPではないという主張です。
また交渉について、アバンシーはライセンス対象となる特許番号そして本件特許を提示していない。よって番号が分からなければ対応の仕方が無いという反論です。
ここはSEPのマニュアルにもある誠実な応答対応に関わる論点なので、網羅的なライセンス対象の依頼の時には反論として参考になるかと思います。
資料的にはその後の話も少しあるのですが、書面としては、日時のみの数枚あって、その後いきなり10月2日に取り下げし、同日同意。その原因のひとつとおぼしき、
シャープは9月11日、ダイムラー(Daimler AG)に対するドイツでのLTE規格特許に関する特許侵害訴訟に勝訴したと発表。
9月10日付で、ダイムラーに対して差止および損害賠償を求め提起していた特許侵害訴訟(事件番号:7 O 8818/19、特許番号:EP 2 667 676)に関して、ドイツのミュンヘン地方裁判所より勝訴の判決文を受領したとしている。
ファミリー特許は無いですが大きな影響を与えたのは間違いなさそうです。
今回は事実ベースで予断を載せずに報告のみにしておきます。
先行して訴えた2件も和解済みなので日本で継続中の訴訟は在りません。
参考までに東京地裁で閲覧する方法について載せておきます。
<訴状の閲覧方法>
東京地裁14階に民事事件記録等閲覧・謄写ができるフロアがあります。
ここで記載する下記の表を載せておきます。
このとき、私は今はやりのハンコ・レスだったのですが、拇印では無く赤いペンでのサインでも可能でした。
また、事件番号を記載するのですが、分からなければ担当者様に検索いただけるので聞いてみてください。
原告と、被告の名前だけで何とか調べて頂けました。
結構神対応で教えて頂けます。心細い状況だったのでありがとうございました。
蛇足ですが、第三者は印紙150円が必要となりますが、
資料の到着を待っている間にB1にある郵便局やコンビニで購入できるので、安心して待っておいてください(内容によっては閲覧不可の場合もあるため、事前や急いで購入する必要は無いそうです。)
つまり、最悪ですが本人確認できるもの+150円さえ有れば閲覧可能です。
閲覧自体は間仕切りで区切られたスペースを自由に確保できます。
なお、パソコンの持ち込みは可能で、結構打ち込む音がうるさかったです。なお電源は無いので自分で確保してくださいとのこと
また、休憩時間12時から13時は退出を求められます。
さてテスラはいくら払って解決したのでしょうか。その金額は表には出るはずがない秘匿の内容です。
和解で終わった事件はPRが無ければそのままという事も多いです。
たまには足を使ってみました。いいねボタンが欲しいですね。
いいねボタンが付かないのでアメリカのテスラ訴訟を追加します。
シャープはアメリカでは訴えていませんでした。
Unicorn Energy GmbH v. Tesla, Inc.
2:20-cv-00338
Eastern District of Texas
10/26/2020
Optis Wireless Technology, LLC et al v. Tesla Inc.
2:20-cv-00310
Eastern District of Texas
09/20/2020
Sisvel International S.A. et al v. Tesla, Inc.
1:20-cv-00655
District of Delaware
05/15/2020
Sisvel International S.A. et al v. Tesla, Inc.
1:19-cv-02288
District of Delaware
12/17/2019
Conversant Wireless Licensing, S.A.R.L. vs Tesla, Inc.
6:20-cv-00323
Western District of Texas
04/24/2020
Conversant Wireless Licensing, S.A.R.L. VS. Tesla, Inc.
6:20-cv-00324
Western District of Texas
04/24/2020
Arsus, LLC v. Tesla Motors, Inc.
3:20-cv-00313
Northern District of California
01/14/2020
JG Technologies LLC v. Tesla, Inc.
2:20-cv-00172
Eastern District of Texas
05/31/2020
08/14/2020
West View Research, LLC v. Tesla Motors, Inc.
3:14-cv-02679
Southern District of California
11/10/2014
03/31/2016
West View Research, LLC v. Tesla Motors, Inc.
16-1951
05/02/2016
04/19/2017
Delaware Radio Technologies LLC et al v. Tesla Motors Inc.
1:13-cv-01958
District of Delaware
11/20/2013
07/15/2014
Nikola Corporation v. Tesla Incorporated
3:18-cv-07460
Northern District of California
12/12/2018
Nikola Corporation v. Tesla Incorporated
2:18-cv-01344
District of Arizona
05/01/2018
12/07/2018
Clear With Computers LLC v. Tesla Motors Inc
6:14-cv-00087
Eastern District of Texas
02/11/2014
12/08/2014
Pointset Corporation v. Tesla Motors, Inc
3:13-cv-02635
Northern District of California
06/07/2013
08/05/2013
Intergrated Solar Power Systems and Components