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中日の特許拒絶理由

粗雑乱造の極秘のノウハウ、方法を中国の特許庁にあたる国家知識産権局が公開しました。もとい量から質の向上に向けた転換を進めるための一連の措置として公告しています。

まずは世界の特許の出願件数から

国家知識産権局(CNIPA)は、2019年の知的財産権に関する統計データを公表しています。

特許出願件数は2018年まで増加傾向にあったが、2019年は減少に転じて140.1万件(日本は307969件)となり、2018年の154.2万件(313567件)と比べて14万件弱減少、約9.1%減した。(なおカッコ内は日本特許庁の特許出願件数の推移より抜粋)

減ったとはいえ出願件数がとてつもなく、長期間の日本の何倍なんだ?を調べて見ます。

まず、日本の四、五倍の出願件数がどれだけ凄いかというのを国別の特許出願についてまとめたWIPOの下記にみます。

受理官庁毎の特許総件数

https://www3.wipo.int/ipstats/ipslinechart

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2018年のうえから青線 中国、紫線 アメリカ合衆国、黄線 日本、緑線 韓国、赤線 ドイツ

になります。各国横ばいのなか中国ひとりだけ二次曲線を引いている出願件数なんです。

日本は06年にアメリカ、10年に中国にも抜かれ第三位です。韓国が追って来てます(EUのEP特許は国別から除く)。

10億人をこえる中国が140万件なら、

30万件を切った日本は善戦と言えるかもしれません。(正確には294366件、昨年R1年は31万強)

これだけ中国の出願件数が多いって何か悪いことしてるのではと噂をしていましたが、当局の取り締まりという形での自白です。事例がなければわざわざの無駄打ちになるので困っているはずだと推測します。

中国の同日施行した公告

2月10日に意見募集した「特許出願行為の規範化に関する弁法」を3月11日付の国家知識産権局公告第411号により公示し、同日施行したそうです。意見募集=アナウンスのようで意見に回答してちまちま修正なんてせず男らしく公示したら即施。

まずは類型を機会翻訳で示しますが、後で概要と日本の拒絶理由との比較も行います。

中国の非正常特許出願行為を排除する施策

非正常特許出願行為で、意見募集から1項目少なくなったので、1月前が全くのアナウンスだけではないですね。。
(1)同時に或いは前後して発明創造内容が明らかに同一、或いは実質的に異なる発明創造の特徴或いは要素を簡単に組合せ変化させて作成した複数の特許出願の場合
(2)出願された特許出願に発明創造内容、実験データ或いは技術的効果に捏造、偽造、変造、あるいは従来技術または従来意匠の剽窃、簡単な置換、寄集めなど類似の情況が存在する場合
(3) 出願された特許出願の発明創造と出願人の実際の研究開発能力及び資源の条件とが明らかに一致しない場合
(4) 出願された複数の特許出願の発明創造内容が主にコンピュータプログラムあるいは他の技術を用いてランダムに生成されたものである場合
(5)特許出願の発明創造が特許性審査の目的を回避するために意図的に作成され、明らかに技術改良或いは設計の常識に矛盾し、あるいは実際の保護価値がないように改悪、必要でない積みあわせで保護範囲を縮小する発明創造、あるいはいかなる検索及び審査の意味もない内容である場合
(6)非正常特許出願行為の監督管理措置を回避するため実質的に特定の単位、個人あるいは住所に関連付けられる複数の特許出願に分散、前後或いは異なる場所から出願した場合
(7)特許技術、意匠或いはその他の正当な目的を実施するため特許出願権あるいは特許権を転売、或いは発明者、創作者を虚偽で変更した場合
(8)特許代理機構、特許代理師、或いは他の機関或いは個人が他人を代理、誘導、教唆、或いは共謀し各種非正常特許出願行為を実施した場合
(9)信義誠実の原則に違反し、正常な特許業務秩序を乱したその他の非正常特許出願行為及び関連の行為の場合

参照サイトhttps://www.cnipa.gov.cn/art/2021/3/12/art_74_157677.html

粗雑乱造の類型

さて、これだけだと何の付加もないので、下の図のように○を本願出願だとして、四角をパクった技術の大きさとしてください。

三角は3の出願人の能力の大きさだと思ってください。

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1)実質同一 組合せ変化

これは日本の新規性違反と同じく全く同じような技術が有り、それとほぼ一致する出願です。先行技術を調べなければ出願を出せるという話です。

四角をパクったというより、同時に開発し、一部の要素だけを変えて出願することも該当します。バネと弾性体とゴムと真空密閉体と樹脂、発泡スチロールを分ければ六件なり。もうひとつ複数あれば全通りなら莫大に増やせます。

2)出願に捏造、偽造、変造、

従来技術/意匠の剽窃、簡単な置換、寄集めなど類似ですがこちらは既に特許庁に提出済みの公開公報を寄せ集めています。以前は出願することで補助金や助成金受給できる環境だったので横行していたらしいです。登録まで時間がかかるので取り得だったり、あとは単純に出願件数を誇りたかったとか。

あと件数が多いと出願費用が一部減免されるため、あと一歩の時に悪事に手を染めるようです。

3)出願人の実際の研究開発能力

これは例えば最先端のバイオ化学の出願を町の個人発明家が出したときに弾く手段です。器具がなくて、ナノの物性は解析出来ないはずなのでアンマッチをみています。

4)発明創造内容が主にコンピュータプログラム或いは他の技術を用いてランダムに生成されたものである

特許にはマーカッシュクレームという「AとBとCとD…のいずれかひとつからなる薬 」のようなものがあり、ここからランダムに抽出して発明とするのかと思います。だいぶ要素が少なくて同じ効能があれば勝ちです。

でも余り自信が無いのは、プログラムで生成するなら、もっとスマートだと思いたいので保留です。

5)常識に矛盾し、保護価値がない改悪、積み重ね、必要でない保護範囲を縮小する発明

これは日本でもある迂回発明です。改悪したり、必要でない要素を増やして保護範囲を縮小するものです。昔、キャノンの出願が本体の発明に電源ケーブルまで含んだコピー機の出願をして進歩性(複数の資料の組み合わせ)でないと潰せない状態にしていましたが、今でもやってるそうです。

6)実質的に特定の単位、個人或いは住所に関連付けられる複数の特許出願に分散、或いは異なる場所から出願

これは広い中国ならでは、あっ、インドもですが異なる場所から出願すれば北京と上海と四川の別の特許庁で審査されるため同一内容だと共有できずいずれも登録まで持っていけるという話です。日本だと大阪や四国にいくはずだった特許庁一ヵ所なので余り意味がないです。なお、以後も中国の国家知識産権局を日本の特許庁と同等とみなしています。

7)発明者、創作者を虚偽で変更した場合

特許権を転売とか、虚偽で変更ってここまで来たら詐欺だと思いたいので、割愛します。

日本だと冒認と言われる当事者系の無効理由です。

8)他人を代理、誘導、教唆、或いは共謀し各種非正常特許出願行為を実施

これは特許事務所が勝手に他人を代理、誘導って日本では無い気がする。ランキング入りしたかったのかな?

さすが中国、奥が深い。

9)信義誠実の原則に違反

その他です。不備がなにか有ったらこれで抑える。

長くなりましたが、この違反に該当すると、

申請者は、特許の異常な出願の予備的な決定に不服を申し立て、指定された期間内に意見を述べ、十分な証拠を提出しなければならない。 正当な理由なく期限内に回答しない場合、関連する特許出願は撤回とみなされ、関連する法的手続きの申請は未提出とみなされます。

また特許庁は減額された費用の返還を求めるそうです。

繰り返し犯した重大な状況の申請者は、異常な特許出願行為が認められた日から5年間、特許出願の手数料を減額しない。

https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/3/12/art_74_157677.html

以上機械翻訳です。凄い精度高いと思います。

元々「特許出願行為の規範化に関する若干の規定」(国家知識産権局第75号局令)を出して出願行為の規範化、不規則事例を取り締まっていました。

しかし非正常特許出願が引き続き存在し、1月27日に国知発保字〔2021〕1号による補助金制度の廃止、非正常特許出願行為を排除する施策を推進していました。

今回の本弁法は全8条からで、第2条に非正常特許出願の出願行為を規定しています。また、3条と4条には具体的な対応、5条には弁理士会に当たる全国専利代理師協会の自律的懲戒処分規定、6条に行政が把握した場合の通報義務が規定され、7条には刑事責任を言及しています。

では2000年辺りまで長らく世界一だった日本はどうだったのか比較してみます。対象は特許庁のお助け解説をコピペしておきます。

https://www.jpo.go.jp/system/basic/otasuke-n/tokkyo/kyozetsu/kaisetsu.html

日本の拒絶各理由の解説


新規性(特許法第29条第1項第1号から第3号)
新しいものでなければダメ

請求項に記載した発明と同じものが、出願の前に文献やインターネットなどで公開されていた場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第III部第2章第1節(PDF:266KB)をご確認ください。

中国の1)実質同一ですね。以下も当てはめしていきます。

進歩性(特許法第29条第2項)
容易に思いつきそうなものではダメ

請求項に記載した発明が、出願の前にすでに知られている発明を通常行われる範囲で変更したものや、他の知られている発明と組み合わせたものと考えられる場合等に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第III部第2章第2節(PDF:507KB)をご確認ください。

2)出願に捏造し、従来技術/意匠の剽窃、簡単な置換、寄集めなど類似すること。

先願(特許法第39条第1項)/同日出願(同条第2項)
その発明についての最先の出願でなければダメ

請求項に記載した発明が、本願よりも先になされた出願や同日になされた出願の請求項に記載された発明と、同一である場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第III部第4章(PDF:678KB)をご確認ください。

6)省をまたぐ同一出願

実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)
発明を実施できる(作れる/使える)ように書かれていなければダメ

明細書の発明の詳細な説明が、請求項に記載した発明をどのように実施するかがわかるように記載されていないと考えられる場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第II部第1章第1節(PDF:405KB)をご確認ください。

次も同じですが3)出願人の実際の研究開発能力、つまり実施していない紙上の空論です。

あとは弁理士さんの書き方が悪いことも多く悪事までとは言いません。

サポート要件(特許法第36条第6項第1号)
請求項の記載が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えてはダメ

請求項に記載した発明が、発明の詳細な説明に発明として記載されたものと、実質的に対応していないと考えられる場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第II部第2章第2節(PDF:348KB)をご確認ください。

明確性(特許法第36条第6項第2号)
請求項の記載を読んで発明を理解できなければダメ

請求項の記載に曖昧な表現や技術的な不備等があり、発明を明確に把握できない場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第II部第2章第3節(PDF:451KB)をご確認ください。

発明該当性/産業上の利用可能性(特許法第29条第1項柱書)
「産業上利用することができる発明」でなければダメ

請求項に記載した発明が、自然法則自体(例:万有引力の法則)や単なる発見、自然法則を利用していないもの(例:ゲームのルールやビジネスを行う方法自体)、技術的思想でないもの(例:フォークボールの投球方法)、人間を手術、治療又は診断する方法の発明等である場合は、特許法で保護される「発明」ではないため、拒絶理由が通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第III部第1章(PDF:434KB)をご確認ください。

新規事項(特許法第17条の2第3項)
出願当初の明細書等に無い事項を追加する補正はダメ

補正された事項が、出願したときの明細書等に記載した内容の範囲内にない場合に通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第IV部第2章(PDF:590KB)をご確認ください。

これこそ中国の1)実質同一ですね。

発明の単一性(特許法第37条)
技術的に関連性の低い二つ以上の発明を、一つの出願の請求項に記載してはダメ

技術的に関連性の低い二つ以上の発明が一つの出願に含まれている場合、一部の発明に関する請求項について新規性・進歩性等の審査を行わない場合があります。そのような審査を行っていない請求項が存在する場合に、この拒絶理由が通知されます。
詳しくは特許・実用新案審査基準第II部第3章(PDF:576KB)をご確認ください。

バラけさせているので中国とは逆のベクトルです。

厳密にいうとまだ、その他の理由もありますがお上のあげた文面そのものがこうなっています。

まとめ

あれ、中国の粗雑乱造ノウハウとあんまり日本の拒絶理由との差がないように思ったあなたは知財担当になれます。

もちろん土地が広く複数の特許庁がある点をついたり、特許事務所自体が粗雑乱造に手を貸す以上の加担するのは中国ならではです。

最近のAIを使ったプログラムによる発明を出願すること4)があるのが中国の方が今どきです。

中国のSNSをみているともう摘発された事例があるそうです。そんなに特許が欲しいなら日本の休眠特許を束ねて中国企業に売れたら商売になりますね。実感としても最近売却する話を聞いたこともあります。シャープの通信規格の特許がHUAWEIの持ち物になったのは以前ここでも紹介しましたね。

中国も遂に量から質へと舵を切ると宣言したので玉石混淆の今の状況から改善方向は間違い無しです。


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