アマゾンCEO交代と特許
AmazonのCEO候補は三名だったと聞いていますが知財情報からそれが見抜けるのか特許情報から見ていきます。って書きながら無理に決まってるやんと、自分にツッコミです。発明家=経営者ならずですよね。
CEO争いは今年初めには決着がついていたようで2021年初めにジェフ・ウィルケ氏が退職しています。退任の発表自体は昨年8月だったので、けりがついたのはもっと前かもしれません。
何か知見が無いかと知財情報をみていきます。新CEOのJassyさんを特許で検索すると14件が発明者として載っていました。AWSのトップなのでもっと多いかと期待。しかし後ろで書くように分割だらけで件数は少なめです。
Andy Jassy新CEOはアマゾンに97年入社しています。 コンピューターサイエンス学科ではないようですが2006年よりAWSのスタートを主導し、クラウド事業の生みの親とも呼ばれています。
ちなみに旧CEOのBezos会長が十倍の140件でした。
ジェフ・ウィルケさん、CEOの競合だった物流関係のwilkeさんで同様に検索すると5件ヒット。
大穴だと噂されていたCFOのolsavskyさんはゼロ件でした。
これだけだとまったく掴めませんね。
新CEOのJassy Andrew R.さん
新CEOのアマゾン関連最初の出願をみてみます。
【出願】 10/924,521(2004/08/23) 【公開】
【特許】 7,287,042 (2007/10/23) 【優先権】
【発明の名称】 Search engine system supporting inclusion of unformatted search string after domain name portion of URL
【出願人/権利者】 A9.com, Inc.
【発明者】 Jassy Andrew R.;Manber Udi;Leblang Jonathan
【IPC】 G06F007/06
SEO キーワード検索のサーチエンジンの特許です。機械翻訳による要約を載せてますが参考にもならないので次のパラグラフまで飛んで下さい。
この発明は、ユ-ザ計算デバイスからのURLリクエストメツセ-ジの処理、特に、ウエブベ-ス探索エンジンに対して探索問合せを提出するための構成に関する。この発明の方法は、ユ-ザ計算デバイスからURLリクエストを受信し、このURLリクエストによりドメイン名を含むURLを表し、前方スラツシユ(斜線)、キヤラクタストリングにより中間的に従属し、キヤラクタストリングに、非探索リクエストURLとしてURLを認識する所定のプレフイツクス(先頭部分記号)を含み、キヤラクタストリングがURLを認識する所定のプレフイツクスを含むとき、そのURLにより参照される内容を検索することを特徴とする。実施例をFig.1,2により説明する。Fig.1は、この発明に基づきURLリクエストを処理する方法を表す。フオ-マツトwww.DOMAIN_NAME.COM/CHAR_STRINGのURLを含むURLリクエストメツセ-ジを受信する(10)。次に所定のプレフイツクスでCHAR_STRINGが始まるかを確認する(12)。所定のプレフイツクスでCHAR_STRINGが始まる場合、非探索リクエストURLとしてURLを取り扱い、次にそのURLにより参照されるデイレクトリ又はオブジエクトにアクセスし、リクエストされたクライアントを検索、及び/又は作成する(18)。次にウエブペ-ジ又はリクエストされた内容をリタ-ンする(20)。一方、次に所定のプレフイツクスでCHAR_STRINGが始まらない場合(12)、探索リクエストURLとしてURLを取り扱い、探索を実行するため探索ストリングとしてCHAR_STRINGを使用する(14)。次に探索結果ペ-ジを作成し、リタ-ンさせる(16)。Fig.2は、この発明を実現するための機能構成を表す。ウエブサイト30には、ウエブサ-バ32、問合せサ-バ40を含み、内容42,46を処理する。
というサーバがらみの動きと、アマゾン以外からの出願というのが、面白い点です。
では新CEOのアマゾン内の特許をみます。このように分割だらけの2008年12月の出願とかになります。
一番末席の発明者欄なので、特許を取り扱う人は分かる話かもしれません。いってませんよ、発明者が誰かなんて。偉いさんだから載せたなんて。
クレームを20におさめて金額ピッタリにしようとクレーム1~3をキャンセルしています。
合わせてクレーム23~26と28~31もキャンセル処理しています。
最初の独立クレーム4よりクレーム27の方が短いというアメリカ人の適当さを利用した後ろのクレームの方が広いというトラップもしっかり作っています。
技術スタッフとしてベゾスさんをサポートし2006年よりAWS開始を主導し、クラウド事業の生みの親とも呼ばれている割には拍子抜けしました。
ただ、広告にも関わるこれからのビジネスなので、新CEOは買いです。
CEOを最後まで争ったお相手の出願
Wilke Jeffrey A.さんカタカナだとジェフ・ウィルケさんの特許です。アマゾンの世界コンシューマー部門のCEOをしていました。
こちらも後々再利用したくて関連特許を参考までに載せておきます。配送や輸送がらみの出願ですが次のパラグラフまでスキップ推進です。
【出願】12/825,249(2010/06/28)
【公開】2011/0320034(2011/12/29)
【特許】8,156,013(2012/04/10)
【発明の名称】Methods and apparatus for fulfilling tote deliveries
【出願人/権利者】AMAZON TECHNOLOGIES, INC.
【発明者】Dearlove Janice Vivienne
;Vuillemot Ward W.;Wilke Jeffrey A.
;Herrington Douglas J.
【IPC】G06Q030/00;G06F007/00
客は、ネットワークサイトへユーザーインタフェースを介して特定の住所および配送日に関して、仮想運送箱に品目を加える。S202で、所定の日に顧客の配送区域へ配送走行するのに先立って、対応する仕分ノードで、再利用可能な物理的な運搬箱に、仮想運搬箱の注文の品目が入れられ、S204で、その配送区域を担当する配送車両上に顧客の運搬箱を積載する。S206で、顧客の運搬箱は、特定の配送日に特定の住所へ配送され、もしあれば、空の運搬箱を引き取る。
もう一件ほど
【出願】12/825,226(2010/06/28)
【公開】2011/0320320(2011/12/29)
【特許】8,175,935(2012/05/08)
【発明の名称】Methods and apparatus for providing multiple product delivery options including a tote delivery option
【出願人/権利者】AMAZON TECHNOLOGIES, INC.
【発明者】Dearlove Janice Vivienne;
Vuillemot Ward W.;Wilke Jeffrey A.
;Herrington Douglas J.
【IPC】G06Q030/00
【CPC】G06Q10/08;G06Q30/06;
G06Q30/0641
【筆頭旧USC】【筆頭新USC】705/027.1
【要約】Methods and apparatus for providing multiple shipping options to customers of a network site. A user interface to the network site may provide two or more shipping options to customers of the site when ordering items offered by the site. The shipping options include a tote delivery service that directs delivery of items ordered by the customers via the network site to delivery addresses corresponding to the customers in reusable totes on scheduled tote delivery days. Selecting the tote delivery service option for an item may automatically place the item in a tote order to be delivered in a reusable tote on a specified upcoming tote delivery day. Alternatively, selecting the tote delivery service option may open a user interface that allows the customer to specify a particular tote delivery day and/or delivery address before completing the order.
【機械翻訳した和文抄録】この発明は、アイテムを輸送するため輸送選択肢を提供する方法に関し、特に輸送選択肢ユーザインタフェースを表示するシステムと、コンピューター読取可能保存媒体に関する。この発明の方法は、ネットワークサイトが提案されるアイテムを輸送するための輸送選択肢を提供し、そのサイトが荷物の配送日を顧客に割り当て、顧客からの入力でユーザインタフェースにアクセスし、輸送選択肢ユーザインタフェース要素を表示し、輸送選択肢ユーザインタフェース要素を選択し、荷物配送ユーザインタフェースを表示し、アイテムの特定の荷物配送日を選択し、そのアイテムの注文を発生することを特徴とする。実施例をFig.5により説明する。Fig.5は、この発明を適用するシステムの構成を示す。顧客310は、インターネット312を通じてネットワークサイトのユーザインタフェース320および事業企画ロジック330とデータを授受して処理を行う。事業企画ロジック330は、コンピュータープログラムを実行し、荷物配送サービスロジック332を動作させて決済センター350にデータを転送する。荷物配送サービスロジック332は、荷物配送データをデータ保存装置334に保存する。ユーザインタフェース320は、輸送選択肢ユーザインタフェース要素322を含む。ネットワークサイトのユーザインタフェース320は、提案されるアイテムを輸送するための輸送選択肢を提供し、荷物の配送日を顧客に割り当てる。ネットワークサイトのユーザインタフェース320は、顧客からの入力でユーザインタフェースにアクセスし、輸送選択肢ユーザインタフェースを表示する。ネットワークサイトのユーザインタフェース320は、複数の配送日からアイテムの特定の荷物配送日を選択する。
ネットワークサイトの荷物配送サービスロジック332は、アイテムに対する注文を発生し、アイテムの配送を指示するという物流関連特許です。
既に書いた通り、両雄並び立たずのためアマゾンを退社済みでした。
新CEOの経歴について
記事だと2006年というのもありますが、06年はAWSをスタートした時期で正確にはその三年前からやっているようです。特許からはその開発経緯は直接、読み取れずでした。
アンディ・ジャシーCEOは03年にベゾス氏とクラウドサービス「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」を立ち上げ、16年にAWSのCEOになった。
というクラウド事業の生みの親です。経歴は
ジャシー氏はハーバード大学を卒業した後にMBIという収集品を扱う会社で数年働き、のちにハーバードビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得。1997年にアマゾンに入社した。
とのことで、エリート層なのは間違いありません。
さて育ての親らしいAWSの開発経緯を見ていきます。
社内向けのデータベースやストレージなどのインフラサービスを一元化して運用するノウハウを社外に販売することからAWSが始まります。
AWSはサーバ管理が重荷になる中小零細企業にとってセキュリティーの面でも、安全で費用対効果の高いデータセンターとなったそうです。
CEO交代のタイミングについて
昨今のコロナ禍の巣籠もりでAmazon含めECサイトは新規需要も増えて増収増益です。あわせてAmazonプライムのプライムビデオも好調だと書いてありました。だから今の景気の良いうちにCEOを交代という話らしいです。
Amazonの2019年の売上高は2805億ドル(約29兆円)。
2020年直近4Qの Net Sales MM$で
$125,555
$87,437 2019年同Q実績から大幅な増加です。
内訳は
12%がAWS
61%が北米
27%がそれ以外のインターナショナル
だそうで新CEOの担当領域は1割強の売上高です。ただし
4Q Operating Income$6,873
という営業利益の多くの割合がAWSとなっています。
米アマゾン・ドット・コムは予想どおり、四半期で初めて売上高1000億を越える1256億ドルです。
しかしワクチンが市中に渡れば反動で人々は外に出歩き減収減益の恐れがあります!少なくとも次のquarterはまだまだ稼ぎは安定しそうですが近々にその恐れはあります。
またGAFAへの風向きは、アメリカでさえも間違いなく逆風で独禁法や不兢法の適用を噂されています。
まあCEOから会長になったベゾスさんが残っているので、いざとなれば復帰も考えられるのですが、このタイミングはスケープゴートそういうことかもしれません。上手く舵を取れれば御の字でしょうが、お手並み拝見なのでしょう。
最近の出願やCEOの特許調査から読み解くアマゾンです。
Amazonの商売についての抽象的な分析
Amazonは、「まとめてお得」を世界規模で実施する会社だとまとめました。
Amazonが本を販売し、最初にインターネットで注文を受注した時、近所の本屋に買いに行ったという逸話を聞きました。
それが今では大きな倉庫に膨大な量の在庫書籍を集めています。日本の再販制度がアメリカには無いため、本の値段も上下するためロングテールの希少本や年間1冊しか売れない本で利益をあげ商売を行うことを狙っていました。
買い物の快適さから顧客は更に集まり、購入した本に対する口コミをアマゾンは長年蓄積していきます。まさにベゾスさんがナプキンに書いた正のループです。
そこで本から他の日常品までカテゴリー広げます。強みは極端に広い物流拠点を一括で持っていること。ここでも「まとめてお得」です。
新CEOの出願した時の母体A9.comはこのSEO対策で有名です。あるカテゴリーでいかにインデックスを作るかにより、ユーザーにとってのUXの向上を図っています。
Amazonは余りに膨大なECサイトになり社内のデータ管理も大変に。そのノウハウを利用したAWSもサーバーの維持管理を一括で行ってもらえればという「まとめてお得」です。
そのまま社外までサーバ管理をひろげて「まとめてお得」をひろげます。
本自体もkindleでまとめる「まとめてお得」
プライムビデオもあちこちのデータを「まとめてお得」そもそもは販売していたVHSビデオやDVDのストリーミングなのでこれも「まとめてお得」です。
生鮮食品のために高級スーパーを買収しました。アリババ系列のフーマーは「倉庫に顧客がウォークインできる」場所とスーパーを定義しており、アマゾンも同様の考え方だと思います。
生鮮食料品は鮮度など実際に魅せたほうが購入ハードルが下がるので、実際に倉庫内を契約社員がアイテムを探す姿をみせて、次回のオンライン購入につなげています。「まとめてお得」のカテゴリーを賞味期限の短い足の早いものにまで拡大したとみます。
次の「まとめてお得」は、
自動車で進むCASEへクラウド事業をてこに参入するでしょうか。
調べたら、blackberryと提携してAWSを使った自動運転のデータを使用するようです。
これも車両情報を集める「まとめてお得」だと、言えると思います。
日本企業の対応
Amazonにより破壊される産業リストが出回りますが日本企業はどうすれば良いのでしょうか?
日本企業が勝ち抜くなら「まとめて損」になるというキーワードが生まれました。
✅・ニッチな領域
ハードウエア含みにしてわずかに残る日本の品質管理半端ねーというブランディングを利用する。
B2B など部品の精度や保証に特化する。
✅・プラットホームとしてアマゾンを利用する。寄生する。
一品一葉の作りこみなど、趣味に走る。
多品種少量生産する
う~ん、コレジャナイ感が満載ですね。じり貧ですが、アマゾンのCEOも検討したら結構厳しい立場だとわかったので、いずこも楽な分野は無さそうです。
特許からハーバードMBAの活躍は読み解けないのは確かにわかりましたが、CEO交代以後もAmazonの動きは注視したいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?