日系企業の知財訴訟三件
アメリカ合衆国で日系企業が訴え、訴えられ、その両方に関わる、3つの事例から何故か日本では行わない理由を読み解きます。
US訴訟ウォッチがいまいち出来てなくて久しぶりにやったら色々日本企業絡みが有りました。メインはパナソニックがMAGNAを訴えた事件です。
最後に何故かを✅チェックリストにしました。
パナソニックがMAGNAを訴えた事件
Case 6:21-cv-00319
事務所は最大手のQUINN EMANUEL URQUHART & SULLIVAN, LLPです。
対象特許はレーダー装置の10,615,516と10,673,149。リアビュー6,970,184と、モニタリングシステム6,912,001の四件です。
訴状では交渉苦節10年、やもなく訴訟と読んだのですが期間が長いです。 パナソニックさんはOn December 2, 2010,にお手紙書いた。マグナのCTOのDr. Niall Lynam,さんたら…はさすがにヤバいので自粛します。
Magna has had knowledge of the ’001 Patent since at least Winter 2010. On December 2, 2010, Tetsuyuki Watanabe, Director of the Licensing Center with the Intellectual Property Rights Operations Company of Panasonic Corp., sent a letter to Dr. Niall Lynam, Chief Technical Officer of Magna Electronics, Inc., identifying that Panasonic had developed many technologies for use in vehicles that relate to image manipulation, graphic overlays, lens detectors, and camera devices. See Ex. 25. In Appendix A of Exhibit 25,
さて、Panasonic製 のADASなど車には色々使われているらしく提供先として訴状では以下の例示をしています。
FCAから表彰されるイノベーティブな会社だそうです。
今回の訴状に記載されたイ号製品が搭載された車の例示はthe 2020 MY Ford F-150です。フイスカーもこれから?来年?出るみたいです。
パナソニックとしては、フォードこれが売られて居ないと駄目なので日本ではなくアメリカ、訴訟を提起したようです。また台数が多ければ申し分無いですし。
ちなみにレーダーのマーケットはデカイみたいです。
For example, the global radar market was valued at $32.56 billion in 2019, and has been projected to reach $49.43 billion by 2027.
そりゃ各社参入します!マグナにとっても差し止めとかされたときアメリカ市場が一番痛いと思います。少なくとも日本の市場では無いですね。
日系企業が訴えられる
M-Red対任天堂 2:21-cv-00076 提起日: 03/05/2021
技術内容は半導体、SoCなので技術説明しても面白くもないので割愛です。発振回路の組み込みと電源管理のためのオンチップ温度センサの利用に関する特許です。特許番号は6,853,259と7,068,557と7,209,401と6,177,843と6,628,171の5件です。って結構書いてしまった。
中国・台湾企業3社と共に訴えられています。具体的には三菱電機(2:21-cv-00075)、Xiaomi(2:21-cv-00077)を同時期に訴えました。
日本企業としてはパナソニック株式会社、三菱電機株式会社、訴状をあげた任天堂が訴えられています。
とはいえパナソニック株式会社は19年7月に提訴され、翌20年6月にいち早く和解しています。その少し遅れてAcerとMediaTekも和解しています。これを第一弾とすると次のロットですね。エイサーがここに出ました。覚えておいて下さい。
NPEはIPブリッジなど日本発もありますがアメリカで訴えます。和解交渉での金額からして○が二桁違いますからしょうがないです。
訴訟金融会社ロングフォード・キャピタルを含む第三者との資金調達契約をするなどマネタイズする方法も揃ってます。
今回も2019年3月にIV という知財関連企業から50の米国特許のポートフォリオを購入して訴えた事例です。このようにNPE間でも流通しているので活発です。
あと、微妙な権利範囲の糞みたい(失礼)な特許こそ、権利が曖昧で訴えて来ます。恥の文化の日本人からしたら、はしたないや、みっともないとか思うものほど何でも訴えられ、使い勝手が良いようなのです。
ディスカバリーで相手方から情報が提示されたら、勝手に証拠は集まり、あんまり異なるようだったら修正訴状でお化粧直しします。これをヒントに違う会社を探して第○○弾の訴状を作る人もいます。
今回がそうだとは言ってないですからね。あくまでもそういう例があるということです。
両方日本
富士通もNECの特許で訴えられ、これで訴え、訴えられ、コンプリートです。まあ訴えたのは例によって特許を買い取ったNPEです。
ロッククリークネットワークスLLCは、IEEE 802.3azエネルギー効率イーサネット(EE)に準拠したネットワーキングデバイス(LANアダプタとイーサネットコントローラなど)の提供をめぐって訴状を提出しました。
D-Link等の第1弾のあとVIA、Huawei等とすこし時期をずらしてCASwell、D-Link、リアルテックセミコンダクター、ジクセルと続けて訴えています。
対象イ号製品はエクストリームスイッチング X460-G2です。
富士通 LAN アダプタ D3035 サーバー
対象特許は米国 6,671,750 B2ランインターフェイス
特許自体は2000年3月が優先日で、NECは2009年に他の特許と共にエイサーに譲渡しました。エイサーは2020年10月にロッククリークに売却しています。
概要だけ書くと、コントローラが非アクティブな場合にI/OバスからインタフェースのLANコントローラを切断できる「リンクパルス検出器」を備えたLANインターフェイスに関連するみたいです。
ロッククリークは2020年9月にテキサス州で結成されました。モート法律事務所PLLC(オースティンに拠点を置く特許事務所)の創設者であるレイモンド・W・モート3世が関係しています。
弁護士自ら立ち上げて訴状を提出する。ネットの開示請求とかでは見ますが日本だと無いですね。
まとめ
知財活用する事を考えながら花見がてらの散歩中です。
もう桜吹雪が舞う季節です。儚く花びらは散ってます。
知財を使うなら生き汚なく、がめつく権利活用しないといけないでしょうね。
食虫植物とまでは言いませんが、鉢植えの盆栽のように育ててそのままはモッタイナイです。
今回アメリカ合衆国の訴訟をみたのに、パナソニックがこれも外国(カナダ企業)を訴え、別件では訴えられています。同一の特許訴訟では任天堂や三菱電機、エイサーも訴えられていました。
このエイサーを経由してですがNECの特許で富士通が訴えられたのもアメリカ合衆国。これが数ヶ月、過去の訴訟を含めても数年で起こっています。ダイナミックな活動です。
あれ?アメリカ企業の存在は?弁護士事務所やNPEなどいましたが知財権の創作には関わっていないケースも有りました。イギリス人のいないウィンブルドン状態です。
では何故、日本ではなくアメリカなのか、手垢がついたところとしては
✅訴額がアメリカの方が大きい
✅ディスカバリーで被告企業の情報を閲覧できるので有利
✅裁判所で有利不利の色分けがあり、原告有利なテキサス、大企業が居を構えたり、工場で人を雇用してた州の裁判所は一概には言えませんが被告も戦えます
ということでしょう。それ以外にもパナソニックの訴状をみると
✅市場がアメリカの方が大きいので販売数が違う
✅そもそも日本に被疑侵害品が無い
というのも原因として見つかりました。
パナソニックの訴状では R&Dに下記の金額を使っていると言ってます。
In 2020 alone, Panasonic spent $4.47 billion on R&D.
有効活用しないとコストパフォーマンスが悪すぎます。訴訟も辞さずというのも分かります。
次の日本企業が訴えられた事例から
✅半導体回路など見えない事例はディスカバリーがないとそもそも侵害品が特定しにくい
✅NPEをサポートする事業が充実している
知財流通センターではないが売買も活発だし、そのお金も昔はヘッジファンド、今はソフトバンクまで用意してもらえます。
✅2019年3月にIV という知財関連企業から50の米国特許のポートフォリオを購入して訴えた事例でもあり、NPE間でも流通している
✅システマチックに訴えられる
アメリカでは1訴訟1企業の原則があり数が増えます。日本だと共同被告でバタバタ入れられる?まあ裁判所で併合されるので見た目はアメリカの方が多く見えます。
✅ウィンブルドン選手権のように外国企業同士が訴えるとき、日本は選択肢にそもそも入らない。
✅契約書の中に書いた準拠法や、裁判所がアメリカ合衆国のデラウェアなどが多い
今回は違いますがアメリカの発明家がテキサスで訴えたら
✅国内産業保護や大企業に虐げられたイメージ戦略で勝率アップ
特に陪審員が入るとその傾向は顕著です
✅ITCの差し止めなど、アメリカから閉め出せるので市場の大きさが影響する
最後に両方日本企業絡みの事例から
✅LAN アダプタ を販売する企業だけでもCASwell、D-Link、リアルテックセミコンダクター、ジクセルがいて相手方が豊富
日本だと新興企業家も少ないイメージで大企業が多く、数も少なめ。少額和解を繰り返すならアメリカの方が有利
✅日本よりアメリカの方が和解を含めても原告有利
✅弁護士自ら訴訟のため会社を立ち上げ訴える活動的な動き
弁護士のアワーレートも高く、成功報酬体系もしっかりしているので法律事務所が積極的
✅身銭を切っているので訴訟提起も積極的
✅そもそも日本語の資料だと読めない人も多く、イ号製品を探せない
とりあえず二十はいかずともこんなのが日本ではなくアメリカで訴える理由です。
お上は一個づつ潰して行ければ日本も訴訟大国とか、法改正をみてると考えていそうです。でもそもそも市場が閉鎖的で限られ、日本語の参入障壁があると可能性があるのか疑問です。
もちろん呼び込む方法は有りますよ。例えばドイツのミュンヘンとか通信規格の特許訴訟で原告有利な判決を出してます。訴えるならミュンヘンとかあるかもです。日本でも無茶苦茶原告有利な判決を出してしまえば裁判は増えるかも。
その代わり日本に売りたくないと更にジャパンパッシングされるかもしれないけどね。
桜の隠喩として。葉桜が有ります。一度散らないと葉っぱは生えられない。何の話か分かりませんが、そんな気分です。
下のように木によっては後塵に任せないと枯れ果てる例も有りました。枝垂れ桜でも葉の生える木もあればこんな枝だらけの木もある。
よーく観てたらそれでも芽生えてはいます。
書いてるうちに真っ暗な空、夜のとばり開けない夜はないらしいので頑張って逝きましょう。
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