本を読みなさい、と母は無理強いした
読書アレルギー
恥ずかしながら、宮沢賢治も夏目漱石も司馬遼太郎も、ヘミングウェイも村上春樹も伊坂幸太郎もハリーポッターも、全てまともに読んだことがない。
本が手元に無かった訳ではない。
母は本の虫だったため、棚には小難しそうな百科事典から漫画まで様々並んでいたし、積んでもあった。
教科書に載るような文学は、幼い頃から手の届く範囲にあった。全集は、ふりがなが振ってあって小学生用に読みやすくされていた。
だが、ハードカバーで厚さ4cmもあるそれは、子供の手には大きく、重かった。
さらに活字中毒の母が時折繰り出す「読め読め」攻撃が、本嫌いを加速させた。
押しつけられたら余計に反発する性格であるため、途中から「絶対読むもんか」という確固たる信念が芽生えた。
文字を読むのが嫌いというわけではないのだが、『本を読む』というところにアレルギーがある。なんなら漫画も読めない。
とにかく本に対する苦手意識が強い。
私にとって読書は、スカイツリーとまではいかないが、東京タワーくらいにはハードルが高い。
『これから本を読むぞ』という敷居が、重圧がある
フーッと息を吐いて、ヨシッと気合を入れて読み始めなければならない。そういう覚悟がないと読めないので、必然と能動的に読まなきゃいけない本より受動的に流れてくるYouTubeをずるずると再生してしまう。
登場人物の名前が覚えられない
せっかく分かりやすく名前を説明してくれていても、それはもうまるっきり覚えられないのである。3人以上は無理。外国の人名が出てくるとなおさら。
しおりを挟まない方がいい説の否定
しおりは使わない派の人がいると思う。再び読み返すことで理解が進んでいい、みたいなことも言われた気がする。
いやそれ面倒やから、と食い気味にツッコミたい。
遅々として
速読ができる年下の友人は「本をたくさん読めば話の先を予測しながら速く読めるようになるよ」と言った。
1ページごと、カメラのシャッターを押すみたいに読む、という説も聞いたことがある。
斜め読みってなんですか。
速く読むなんて、魔法か何かの類だと思っている。
速読があるのなら、遅読というのだろうか。
そんな言葉あるのか?
ちどく。体に悪そうだ。
調べると実在し『じっくりと時間をかけて読むこと』だそう。
私の場合、意図的にじっくり読んでいるわけではないので遅読でもなさそうだ。
遅々読(ちちどく)とでもしておくか。
ちょっとエロくなった。
遅々読は、1文字づつ心の声が読む。
知ってるんだ、それじゃあダメだってことは。
おのずと読む本の量が少ない
つまり圧倒的に知識量が少ない。
言わずもがな学がない。
要はバカである。
自認しているからこれ以上責めないでください。
当たり外れが一目で分からないから躊躇する
面白いかどうか、読みやすいかどうか。表紙と数ページからしか推測ができないメディア。一冊一冊が重い私にとって、本の選択自体が重荷。
じゃあいっそ読むのやめれば?
伊坂幸太郎『モダンタイムス』を友人らに勧められたので恐る恐る手に取ってみた次第。
今、酷く時間がかかりながらも上巻は読み終えた。
そして上巻よりも分厚い下巻の重みに怯えながら1ページめくった。
やっぱり1文字づつ心の声を出しながら最後まで読んでみようと思う。
サポート…?こんな世知辛い世に私をサポートする人なんていな…いた!ここにいた!あなたに幸あれ!!