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幹線道路で動物たちを助けた話

 私の住んでいるところは、新興住宅地なのだが結構な田舎である。
幹線道路沿いから一歩離れれば、森や農地、貯水池に囲まれている。自ずと人間以外のモノたちもウロウロしている。
 キジや猪、野ウサギ、野ネズミ。特にキジのオスがこれほど色鮮やかとは思わなかった。体の深緑に頭は赤。「ケーッケーッ」という意外と大きな鳴き声にも驚かされた。

 田舎住みの人からすれば「それくらい当たり前」なのだろうが、東京からここへ引っ越してきた身としては毎日新鮮だ。

 だいぶその野生のモノたちにも慣れた頃、車で帰宅中に事件は起こった。


 交通量の多い片側二車線を直径20㎝は軽く超えるサイズの亀が、右足、左足、右足…とゆったりゆったり横断しているではないか。
しかも真ん中には中央分離帯があって、その亀はきっと登れない。

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▲こちらは別日の亀との遭遇の様子

見て見ぬふりすることもできたが。


「ああ!もう!」
 急遽路肩に停めて、通行中の車の合間をぬって亀を拾い上げた。
亀は持ち運ばれてる最中、首をすぼめ、さも敵から身を守るような体勢をとっていた。
「お前、私がいなかったら危うく死ぬとこだったんだぞ!」
と心の中で叫びながら貯水池の付近で放した。
亀は敵からの防御の体勢のまましばらくそこに佇んでいた。
私はそいつを背にして「亀って触って大丈夫だっけ、菌とか」と両手を見つめた。

またあるときは、カモの親子を助けた。

犬と散歩中のときのこと。
「クエッグエッ」という聞きなれない鳴き声が遠くから聞こえる。それは近づくにつれ迫力を増す。

見ると親子のカモだった。テレビニュースでたまに見かける、警官が横断をサポートしてやっているアレである。小さいホワッホワのやつらがピーピーいいながら親鳥の周りを群れている。

マジか。
交通量の多い片側二車線の道路、中央分離帯を越えられずに立ち往生しているカモ親子。

どうしたものか。


とりあえず犬を少し離れた場所につなぎ、救助へ向かう。
追い立ててみたが分散してしまうカモたち。
右から追いかければ左へ行き、左から追いかければ右へ行く。
交通量が多い道路の真ん中で私は焦っていた。
それに反してカモたちは全然中央分離帯を越えようとしない。

無名のヒーローたち。

 そんなとき、通りかかったトラックの運転手さんが道路を封鎖するように停めてくれた。
「ネェちゃん、渡らしてやってくれや」
運転席から声をかけてくれたお兄さん。見た目怖いけど優しい。ありがたい(奇跡的にこのnote見てたらその節は本当にありがとうございました)

 さらには、ジョギングをしていた男性もこの騒動に参加してくれた。
まったく知らない者同士のはずのアイコンタクトは完璧で、おかげで1匹残らず横断できた。

 無事にカモが渡り切ったのを見届けた後、何事もなかったかのように3人はサッと解散した。気分は各々の役割を達成して世界を救ったスーパーヒーローだった。

ちなみにまだカメもカモも恩返しには来ていない。

サポート…?こんな世知辛い世に私をサポートする人なんていな…いた!ここにいた!あなたに幸あれ!!