「部下にコーチングを徹底することは可能なのか?」について考える
みなさんこんにちは林です。
普段は株式会社POPERという教育業界向けSaaSを提供する企業のCOOを務めるかたわら、普段会社のみんなに教えていることをnoteに記録として残しています。
今回は「コーチング」についてです。
「マネージャーにはコーチングのスキルが必須である」という意見はめずらしいものではありませんよね。
むしろ「部下なんて言われたことやってればいいんだからコーチングなんて不必要だ」なんていう方を見つけることのほうが難しいと思います。
僕は執筆時点の2021年に38歳になりますが、人に対してマネージメントする立場になってから10年が経ちました。
その間書店に並んでいるコーチング関連の本は色々と目を通しました。
非常に有用な内容だなと感じることが多い一方で、
「でもこの考え方を常に実践することって可能なのかな・・・」
と、ビジネスの上司ー部下の間におけるコーチングの有効性について懐疑的に考えることもしばしばでした。
今では「間違いなく企業で「上司」という立場の人は全員コーチングについて最低限理解しておいたほうがいい」と考えていますが、その考えにいたるまで上記のモヤモヤがしばらくありました。
そこでこの記事では、
元インテルの伝説的な経営者であるアンディーグローブ著の「HighOutputマネジメント」
そして、コーチング関連の書籍を数多く執筆されている、コーチ・エイ社の代表鈴木氏が監修された、「コーチングの基本」
の2冊を参考にしながら
1.マネージャーが目指すべきものは何か?
2.それを達成するためにコーチングはどのように役立つか
についてまとめてみようと思います。
少しでも悩めるマネージャー達のお役に立てれば幸いです。
そもそもマネージャーとはどんな存在だろうか?
「マネージャーの使命とは何か?」
ときかれたら100人のマネージャーが100通りの定義をするでしょう。
人類が組織というものをつくりあげてから数千年、近代化して以降もマネジメントに関する書籍が毎年出続けているのですから、その問いに対しての唯一無二の定義づけをするのは無理なんだと思います。
世の中のあり方が変われば組織のありかたが変わる。
組織のあり方が変化するのであればマネジメントのあり方がかわる。
そのように考えると仕方がないのだろうと思います。
しかしながら、一部の書籍の中には、マネジメントのあり方について
時代が変わっても色褪せないエッセンスを含むものがあります。
HightOutputManagementもその一冊だと思います。
同書は、マネージャーの役割からはじまり、マネージャーのあるべき仕事の仕方、そしてMTGの仕方まで触れている本ですが、
僕は冒頭の「マネージャーの役割」部分の考え方が特に参考になると思っています。
著者のアンディグローブ氏曰く、
「マネージャーはチームのパフォーマンスとアウトプットのみによって評価される」
「マネージャーが部下の生産性を向上できる方法は2つしかない。それはモチベーションの向上と部下の教育だ」
とのことです。
「モチベーション」については、その定義をどうおくかによって皆さん色んな意見がおありかと思いますが、
・マネージャーは「チーム」のアウトプットの最大化を目指すのである
・そのためにメンバーを教育するのである
という考え方はすべてのマネージャーが持つべき発想だと思います。
やり方を教えることだけが教育か?
マネージャーが「チームのアウトプットを最大化するためにメンバーを育成しなければいけない存在」だとして、
メンバーの「教育」とはどのように行うべきものでしょうか。
できないこと・知らないことを手取り足取り教えればいいんでしょうか。
もちろんそれも重要な要素でしょうが、それだけでは不十分な気がしますよね。
だってそもそもそれが教育なのだとすれば、結局は部下があなたのレベルを超えるまで常に手取り足取り教え続けることになってしまいます。
そこで考えたいのは、「最終的に部下にどうなってほしいのか?」です。
おそらく皆さんはメンバーに「自分で考えて動ける自走人材」になってほしいんじゃないですか?
目標達成のために何をすべきかのかを自ら考え、そのためにどんな知識や情報が必要か考え、行動に移せる。
そんな人材なら何人でもほしいですよね。
そういった思考・行動の習慣づけの支援につながるスキルこそが「コーチング」です。
コーチングが目指すもの(コーチングの定義)
「コーチングの基本」では、コーチングを
対話を重ねることを通じて、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセスである。
と定義しています。
ここで重要なのは、コーチングにおいて、主役は常に対象者である、ということです。
コーチがコンサルタントのように対象者のかわりに解決を行うことはありません。対象者が「自分の力で達成する」ことを支援するのです。
じゃあ本題。ビジネスの上司ー部下、の間でコーチングは機能するのか?
コーチングに関する本を何冊か読んでみるとみなさん気づくと思いますが、
多くの書籍が、「コーチングを生業として行う人のための本」として執筆されています。つまり、お金をもらってコーチングをプロとして提供する人(になりたい人)向けの本です。
そのため、書籍を読んでもなんだかしっくりこなかったり、
「いやいや、そんなの職場では徹底できないよ」という違和感を覚えるわけです。
そうして「ビジネスの上司ー部下の間がらで、本当にコーチングって有効なの?」という疑問が生まれます。
実はこの点について触れている書籍は多くはないと思いますが、この点について「コーチングの基本」では下記のような記載があります。
私自身、管理職の実務において本当にコーチングは実践できるのか?とあえて疑問を投げかけつつ日々実験を繰り返しています。
私の結論から申しますと、管理職の実務においてコーチングは役に立つという実感があります。
もちろん、およその管理職業務はコーチングを採用することでうまくいく、という論には個人的に現実味を感じることができません。
・・中略・・
しかし管理職にとってコーチングの考え方や技術を知ることによって得られるものは多いと考えています。
同書はプロのコーチによって執筆された本ですが、そんな彼らですら「マネージメントにおいてコーチングは万能ではない」と示しています。
僕個人も「上司・部下の間柄で100%コーチングを徹底することはできない」と考えています。
理由はコーチングの基本原理と照らし合わせるとシンプルです。
前述の通り、コーチングの主体は対象者です。
つまり上司が部下にコーチングを行うのであれば「部下」が主役です。
そしてコーチングは対象者に気づきを与える質問や考える機会は与えるが、答えや指示を与えるものではありません。
一方でビジネスの現場では、上司が部下に指示をだすことがあります。
また、有料で行うプロのコーチングのように、「対象者の気のゆくまで時間を使って」が許されないこともあります。
そういった理由から、コーチングを「100%徹底する」ことはできないのです。
しかしながら、コーチングの持つ「自ら考え、行動に移すことのできる自走人材に近づけるための接し方」が、部下を成長させる上で非常に有効であるため、上司部下の間柄でもなるべくコーチングを意識しよう、という考えになるのです。
僕が経営に携わるPOPER社では、部下に常に答えを示すのでなく、うまく時間とタスク難易度を創出し、コーチングを通じて「自らが考えて、上司が考えるきっかけを与えたことによって、達成できた」
という経験を積ませてあげられる上司がいい上司である。と教えています
いかがでしたか?
読んでみると当たり前に感じる内容だったかもしれませんが、
マネージャーの役割、コーチングの目的と限界をつなげて理解することで
よりコーチングの活用イメージが湧いた、ということであれば執筆したかいがあります。
コーチングはすごく奥深いテーマです。
そのため「マスターするのだ」と意気込むと気持ちが折れたり、逆に日々のマネージメントがうまくいかなくなると思います。僕もそうでした。
特にベンチャーではプレーヤーとしても活躍しつつ、事業も考え、メンバーのことも考え、という中でコーチングのことについてだけ考えているわけにはいきませんもんね。
なのでまずはコーチングについても基本的な原理原則だけを理解した上で、「まずはやってみる」ことが重要だと思います。
このnoteでもマネージャーが抑えておきたいコーチングの最低限のポイントについては「【まずはここから】マネージャーの仕事術マガジン
」にまとめていこうと思います。
これからもコーチング以外にも、マネージャーが持っておくべき「まずはこれだけ」という最低限、を意識して色んなスキルや考え方について更新していこうと思います。
参考になった、という方は今後もお付き合いのほどよろしくお願いします!
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