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【回想録】人生を変える師匠との出会い

フィレンツェに来て3ヶ月が経過しいよいよ家具修復のコースがスタート。
具体的な内容は何も知らずかなり不安でしたがアルノ川南側の工房へ。

語学学校の斡旋という形なので普段から何箇所か修復工房の候補があるようでしたが通うことになった工房がまさに自分の人生を変えることになります。

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自分の師匠となるRenato Olivastri氏。
見たことのない道具や材料が並ぶ雰囲気のある工房。
普段はPalazzo Spinelliという日本にも分校がある有名な修復技術学校の先生もしている方です。

レッスンがいよいよスタート。
レナートは英語が苦手なのでそのことがよりイタリア語を勉強するモチベーションにもなりました。
道具や材料の名前を聞くたびに全てメモ。
それに伴う作業の動詞などもメモをして、、、という感じだったので通い始めた当初はあっという間にメモ帳がいっぱいになってしまいました。。。

言葉もそうですが木工の作業という面でもほぼ初心者。
道具の使い方もゼロから学びました。

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初めは彫刻刀を慣らすために古典の装飾デザインを何パターンか製作

レナートは自分が持っていたイタリア人のイメージとは違って寡黙な方でやり方を見せてくれてあとは自分の作業を進めるといった感じ。

午前中は語学学校、午後は工房というスケジュールだったのであっという間に時間は過ぎていきます。

木彫の後は工房にあった古いオブジェを掃除段階から磨きまで。

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工房にあったアンティークの椅子2脚をバラして組み直し、強度補強をして張り替え前の磨きの状態までを体験。

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びっくりしたのが1800年代の椅子だったのですが最初に工程を説明してもらってからはほぼ放置。わからないところがある時にはやり方を聞くといったレッスンで最初のうちは本当にドキドキでした。

後から聞くことになるのですがレッスンで一番困るのは怪我をされること。
いくつかの作業の様子を見てその恐れがあまりないから放っておいても大丈夫という判断をして勝手にやらせてくれていたそうです。
それでも耳でいつも作業を観察してくれていて道具が変な音を立てるとすぐにそばに来てくれてやり方を教えてくれます。

そして、この3ヶ月のレッスンの中で修復の技術の一つとして習ったのが、、、今の自分の専門職である木象嵌という技術。
家具修復といってもイタリアでは様々な分野に細分化されていて職人の数も日本とは比較になりません。
フィレンツェの家具修復職人だけでも日本中の修復職人より多いくらいです。
基本的にはどの職人も一通りの作業は出来るのですがその中でも得意分野があって、それはまず立体系と平面系に分かれます。
立体系というのは彫刻などをメインにしている工房で平面系というのが木象嵌の修復をメインにしている工房。
さらに時代や国などのスタイルでさらに細分化という感じです。

レナートが得意とするのは17世紀のフランス宮殿スタイルを代表するBoulleと言われる家具。

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木とベッコウと真鍮を象嵌で組み合わせた家具で絢爛豪華な装飾が特徴。
素材がミックスされているので加工、接着、磨きと特殊な技術が必要です。
ヨーロッパでもこれを得意とする工房は数少ないため世界中からこのスタイルの家具修復の依頼がレナートの所には来るんです。

他の工房になる可能性も十分ある中でレナートの工房に通うことになったのはある意味、運命的なことでそうでなければ一年で日本に帰国していたかもしれません。

Zouganistaのすべてはここからはじまります!!

続く

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