前位相空間を理解する5
今回はコンパクトに関する重要な定理"Tychonoffの定理"を証明する.
定理6
前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$がコンパクトであることは次の(i)または(ii)と同等である.
(i)有限交叉性をもつ$${X}$$の任意の部分集合族$${\frak{X}}$$に対し, $${\bigcap_{X\in\frak{X}}\mathrm{cl}(X)\neq\varnothing}$$
(ii)$${X}$$上の任意の極大フィルター$${\mathscr{F}}$$に対し, $${\bigcap_{A\in\mathscr{F}}\mathrm{cl}(A)\neq\varnothing}$$
証明
(i)と(ii)が同等であることは, フィルターが有限交叉性をもつことと, 有限交叉性をもつ部分集合族には, それを含み極大フィルターが存在することから明らかである. 従って今, (ii)がコンパクトと同等であることを示そう.
$${x\in\bigcap_{A\in\mathscr{F}}\mathrm{cl}(A)}$$というのは, 任意の $${A\in\mathscr{F}}$$及び$${V\in\mathcal{V}(x)}$$に対し, $${V\cap A\neq\varnothing}$$であることと同等であるが, 今$${\mathscr{F}}$$が極大フィルターであるため, $${V\in\mathscr{F}}$$. 即ちこれは$${\mathscr{F}}$$が$${x}$$に収束することを意味する.
定理7
前位相空間族$${((S_\lambda,\mathcal{V}_\lambda))_{\lambda\in\Lambda}}$$の直積空間を$${(S,\mathcal{V})}$$とするとき, $${S}$$がコンパクトであるためには, 全ての$${S_\lambda}$$がコンパクトであることが必要十分である.
証明
必要であることは射影$${\pi_\lambda}$$が連続写像であることから容易に導けるから, 十分であることを示そう. 簡単のため$${\bigcap_{X\in\frak{X}}\mathrm{cl}(X)}$$を$${D(\frak{X})}$$と書く.
$${S}$$がコンパクトをいうには定理6から, 有限交叉性をもつ$${\frak{X}}$$に対し, $${D(\frak{X})\neq\varnothing}$$を示せばよい. ここで, $${\Omega}$$を有限交叉性をもつ部分集合族全体とすると, これは包含順序について極大元をもつ. 特に,
$${\frak{X,X'}\in\Omega,\frak{X\subset X'}\implies D(\frak{X})\supset D(\frak{X'})}$$
より, 極大元$${\frak{X}}$$について示せれば, $${\Omega}$$の全ての元について成り立つ.
今$${\frak{X}}$$を$${\Omega}$$の一つの極大元とする. このとき$${Y\in\frak{P}(S)}$$が全ての$${\frak{X}}$$の元と交わるなら, 極大性から$${Y\in\frak{X}}$$であることが分かる. 今$${\{\pi_\lambda(X)\bm{\mid}X\in\frak{X}\}}$$は$${S_\lambda}$$において有限交叉性をもつ. $${S_\lambda}$$はコンパクトであるから, $${\bigcap_{X\in\frak{X}}\mathrm{cl}(\pi_\lambda(X))\neq\varnothing}$$.
全ての$${\lambda\in\Lambda}$$についてこれが成り立つため,
$${E=\prod_{\lambda\in\Lambda}(\bigcap_{X\in\frak{X}}\mathrm{cl}(\pi_\lambda(X)))}$$
は選択公理から$${S}$$の空でない部分集合である. $${E\subset D(\frak{X})}$$を示せば, 証明は完了する.
$${x=(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}}$$を$${E}$$の任意の点とすれば, 各$${\lambda\in\Lambda}$$に対して
$${x_\lambda\in\bigcap_{X\in\frak{X}}\mathrm{cl}(\pi_\lambda(X))}$$
より, 任意の$${X\in\frak{X}}$$及び, $${V_\lambda\in\mathcal{V}_\lambda(x_\lambda)}$$に対し,
$${V_\lambda\cap \pi_\lambda(X)\neq\varnothing}$$.
よって,
$${\pi_\lambda^{-1}(V_\lambda)\cap X\neq\varnothing}$$.
$${\frak{X}}$$の極大性から$${\pi_\lambda^{-1}(V_\lambda)\in\frak{X}}$$
$${\lambda_1.\cdots,\lambda_n}$$を$${\Lambda}$$の任意の有限個の元とすると, $${\frak{X}}$$の有限交叉性から,
$${\pi_{\lambda_1}^{-1}(V_\lambda)\cap\cdots\cap\pi_{\lambda_n}^{-1}(V_\lambda)\in\frak{X}}$$
であり,
$${(\pi_{\lambda_1}^{-1}(V_\lambda)\cap\cdots\cap\pi_{\lambda_n}^{-1}(V_\lambda))\cap X\neq\varnothing}$$
である. $${\pi_{\lambda_1}^{-1}(V_\lambda)\cap\cdots\cap\pi_{\lambda_n}^{-1}(V_\lambda)}$$は$${x}$$の基本近傍系をなすため, $${x\in\mathrm{cl}(X)}$$. よって, $${x\in D(\frak{X})}$$.
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