ジョルダン標準形(プチ理論)
注意
この記事は, ジョルダン標準形についてその本質を理解することを目的として書かれています. 理論的な厳密性, 言い回し等が不正確な部分もあります.
ご了承ください.
奇妙な形の理由
ジョルダン標準形がべき零変換・一般固有ベクトルを考えることで構成できることが分かった. では, ジョルダン標準形はなぜあのような対角成分の上に1が並んだ形になるのか? そこにある種の"必然性"は存在するのか? これを検証していこう.(簡単のためここではべき零変換のみを考える)
線形変換が対角化できない原因は, 固有ベクトルが線形空間の基底とならないことだった. では, それはなぜか? 答えとしてはあまり適切ではないかもしれないが, それは対角行列では表せないほどその線形変換が"豊かな", "複雑な"構造を持っていたからと言えよう. ここで我々はべき零変換にフォーカスを当てているので幾分か考えなくて済む部分が出てくる.(即ち, 考える線形変換の固有値は全て0としてよい)
線形変換の移り先が他の基底に影響を及ぼしてしまう, または他の基底から影響を受けてしまうならば, その影響を最小限に抑えることが標準化の目標となるだろう.
ここで, 一般固有ベクトルは線形空間の基底となるのであった. ということは, 一般固有ベクトルに対し線形変換を施した移り先もまた(0ベクトルでなければ)一般固有ベクトルになるのではないか? まるで線形変換によって基底がスライドしているようではないか!? そう!!これこそがジョルダン標準形の対角成分の上に1が並ぶ本質的な理由である!
ここまで来ればもう, ジョルダン標準形があのような形である必然性が分かっただろう.
余談1(より強い対角化可能性)
線形代数の定理として, 任意の正規変換に対し, 適当な正規直交基底をとれば, その基底に対しての表現行列が対角行列になる(即ち, 正規行列はユニタリ行列で対角化可能)というものがある.
もっと対象を絞って, エルミート形式(エルミート行列)を考えよう. もちろんこれはユニタリ行列で対角化可能であるが, 適当な"正規直交"とは限らない基底を用いることで, アフィン標準形というものを与えることができる.
これは対角行列であり, その対角成分(即ち, 固有値)が 1 か -1 か 0 のものである. これは単位行列に非常に近いとは思わないだろうか? 実際このエルミート形式が正値(半正値)という条件を満たせば適当な正則行列を用いて単位行列(Smith標準形)にすることが可能なのである.(但し, ここで用いる正則行列はユニタリ行列でないため, 厳密に対角化と全く同じ操作ではない. そこら辺の深い議論は専門書に委ねよう.)
エルミート形式とは, それだけ強い条件を持った"行儀のいい"線形写像なのだ.
余談2(実行列の標準形)
ここまでの議論では, 行列の固有多項式が分解可能であること(即ち, 重複を含めてその多項式の次数分だけの解を持つこと)を仮定してきた. しかし実行列の場合そうはいかない. これは, 実正規変換についても同様である. このような実行列に対し, どのような標準形を与えることができるだろうか?
具体的にどんな形になるかお見せしたいが, 現在私はTeXの練習中なのでそれはまた後日別記事で載せるかもしれない.(気になる方は自分で調べたほうが早いかもしれない. ただ, このことについて書かれた文献は少なくとも私はネット上では見つけられなかった. 余談と言って始めたのにこんなに締まりが悪くて申し訳ない.)
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