前位相空間を理解する4
さて, いよいよ位相空間の超, 超重要な概念である"コンパクト"について前位相空間に導入していこうと思う.
定義10
集合$${X}$$上のフィルター$${\mathscr{F}}$$が次の条件を満たすとき極大フィルターという.
$${\mathscr{F}\subset\mathscr{F'}}$$なるフィルター$${\mathscr{F'}}$$が存在するならば$${\mathscr{F}=\mathscr{F'}}$$
即ち, 極大フィルターというのは, その名の通り$${X}$$上のフィルターで, 包含順序においての極大元であることを意味する.
任意のフィルター$${\mathscr{F}}$$について, それを含む極大フィルターが存在することは$${\mathrm{zorn}}$$の補題からただちに示される.
ここで, "有限交叉性"という概念について定義しておく.
定義11
$${X}$$の部分集合族$${\frak{X}}$$が有限交叉性をもつとは, 次の条件を満たすことである.
任意の$${\frak{X}}$$の有限部分集合$${\frak{X'}}$$に対し$${\bigcap\frak{X}\neq\varnothing}$$
有限交叉性をもつ$${\frak{X}}$$に対し, $${\mathscr{F}=\{A\bm{\mid}\exists X\in\frak{X}\quad s.t.\quad X\subset A\}}$$とすると, これは$${\frak{X}}$$を含むフィルターとなる. この$${\mathscr{F}}$$を記号を流用して, $${\lang\frak{X}\rang}$$と書くことにする.
有限交叉性をもつ$${\frak{X}}$$に対し, $${\frak{X}}$$を含むフィルターが存在すること及び, それを含む極大フィルターが存在することからただちに次が成り立つ.
$${\frak{X}}$$が有限交叉性をもつならば$${\frak{X}}$$を含む極大フィルターが存在する.
定理4
集合$${X}$$上の極大フィルター$${\mathscr{F}}$$及び$${X}$$の部分集合$${A}$$について次が成り立つ.
任意の$${F\in\mathscr{F}}$$に対し$${A\cap F\neq\varnothing}$$ならば$${A\in\mathscr{F}}$$
証明
仮定から, $${\mathscr{F}\cup\{A\}}$$は有限交叉性をもつため, これを含む極大フィルターが存在するが, これは$${\mathscr{F}}$$が極大フィルターであることに矛盾.
定理5
集合$${X}$$上の極大フィルター$${\mathscr{F}}$$及び$${X}$$の任意の部分集合$${A}$$について次の(i)(ii)のいずれか一方が成り立つ.
(i)$${A\in\mathscr{F}}$$
(ii)$${A^c\in\mathscr{F}}$$
証明
フィルターについては補足の定理における(i)(ii)(iii)のいずれかが成り立つが, (iii)が成り立ったと仮定すると定理4から$${A\in\mathscr{F},A^c\in\mathscr{F}}$$となり矛盾.
定義12
前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$がコンパクトであるとは
"$${X}$$上の任意の極大フィルター$${\mathscr{F}}$$は収束する"
ことである.
即ちコンパクトとは, フィルターを極限まで細かくしていけば必ずどこかで収束することを意味する. これは実解析における"$${\mathrm{Bolzano}\text{-}\mathrm{Weierstrass}}$$の定理"を一般化したものといえる.
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