anafunctorの圏論

anafunctorとは言わば関手の一般化である.  普通の圏論ではまず使わないがanafunctorを考えることで,  選択公理を避けた議論ができたりする(らしい).  日本語の文献はあまりネットに上がっていないので,  ここでできる限り解説しよう.

定義

$${\mathcal{C,D}}$$を圏とする.  このとき$${\mathcal{C}}$$から$${\mathcal{D}}$$へのanafunctor$${F\colon\mathcal{C\xrightarrow{a} D}}$$とは三つ組み$${<|F|,\hat{F},F>}$$で次の条件を満たす.

(i)$${|F|}$$は圏
(ii)$${\hat{F}\colon|F|\to C,F\colon|F|\to D}$$は関手
(iii)$${\hat{F}}$$は対象について忠実充満かつ(本質的ではなく本当の)全射.

(i)$${\mathcal{C,D}}$$を圏,  $${F\colon\mathcal{C\to D}}$$を関手とする.  このとき,  $${|F|=C,\hat{F}=\mathrm{id}_\mathcal{C},F=F}$$とすると,  $${<|F|,\hat{F},F>}$$は$${\mathcal{C}}$$から$${\mathcal{D}}$$へのanafunctorとなる.  この意味でanafunctorは関手の一般化である.

(ii)$${I,\mathcal{C}}$$を圏とする.  このとき次のように$${<|F|,\hat{F},F>}$$を定めるとこれは$${\mathcal{C}^I}$$から$${\mathcal{C}}$$へのanafunctorとなる.

$${(\mathrm{a-I})\mathcal{Ob}(|F|)}$$は,  三つ組み$${< T,c,\eta>}$$で,  $${T}$$は関手$${T\colon I\to\mathcal{C}}$$,  $${< c,\eta>}$$はコンマ圏$${\Delta\darr T}$$の終対象(同型も異なるものとして見る).


$${(\mathrm{a-II})|F|}$$の対象$${< T,c,\eta>,< T',c',\eta'>}$$に対し,  $${\mathrm{Hom}(< T,c,\eta>,< T',c',\eta'>)}$$は二つ組$${<\pi,f>}$$で,  $${\pi}$$は自然変換$${\pi\colon T\Longrightarrow T'}$$,  $${f\colon c\to c'}$$はコンマ圏$${\Delta\darr T}$$における普遍性より一意に生える射$${f\colon < c,\eta>\to< c',\eta'>}$$.  そして$${\theta\circ\eta=\eta'\circ\Delta f}$$を満たすもの全体.

$${(\mathrm{b})\hat{F}\colon|F|\to\mathcal{C}^I}$$は対象$${< T,c,\eta>}$$に対し,  $${\hat{F}< T,c,\eta>=T}$$とし,  射$${<\pi,f>\colon< T,c,\eta>\to< T',c',\eta'>}$$に対し$${\hat{F}<\pi,f>=\pi}$$とする.

$${(\mathrm{c})F\colon|F|\to\mathcal{C}}$$を対象$${< T,c,\eta>}$$に対し,  $${F< T,c,\eta>=c}$$,  射$${<\pi,f>\colon< T,c,\eta>\to< T',c',\eta'>}$$に対し$${F<\pi,f>=f}$$とするものと定める.

これは関手$${\lim\colon\mathcal{C}^I\to\mathcal{C}}$$に対応するものである.  このような構成法によって,  $${\lim}$$が同型を除いて一意で関手$${T}$$に$${\lim T}$$を対応させる関手が選択公理に依存しているという問題(?)を回避できる.

anafunctorの間には自然変換に対応するものが定義できる.

定義

anafunctor$${F,G\colon\mathcal{C\xrightarrow{a}D}}$$に対して$${F}$$から$${G}$$へのananatural transformation$${\theta\colon F\xRightarrow{a}G}$$は,  次のように構成する..

圏$${P(\hat{F},\hat{G})}$$を次のように定める
(i)対象は二つ組$${< c_0,c_1>}$$で,  $${c_0}$$は$${|F|}$$の対象,  $${c_1}$$は$${|G|}$$の対象であり,  $${\hat{F}c_0=\hat{G}c_1}$$を満たす.

(ii)$${P(\hat{F},\hat{G})}$$の対象$${< c_0,c_1>,< c_0',c_1'>}$$に対して$${\mathrm{Hom}(< c_0,c_1>,< c_0',c_1'>)}$$は二つ組$${< f_0,f_1>}$$で,  $${f\colon c_0\to c_0',f\colon c_1\to c_1'}$$であり,  $${\hat{F}f_0=\hat{G}f_1}$$を満たす.

関手$${P_0\colon P(\hat{F},\hat{G})\to |F|,P_1\colon P(\hat{F},\hat{G})\to |G|}$$を,  射影とする.

このとき関手$${FP_0,GP_1\colon P(\hat{F},\hat{G})\to\mathcal{D}}$$が得られるため,  ここに自然変換$${\theta\colon FP_0\Longrightarrow GP_1}$$が得られるが,  この$${\theta}$$を$${F}$$から$${G}$$へのananatural transformationと定める.

特に$${P_0,P_1}$$が全射で忠実充満ならば,  $${< P(\hat{F},\hat{G}),\hat{F}P_0,FP_0>,<P(\hat{F},\hat{G}),\hat{G}P_1,GP_1>}$$は$${\mathcal{C}}$$から$${\mathcal{D}}$$へのanafunctorとなる.

定理

$${\mathrm{Ana}}$$を圏全体を対象とし,  その間のanafunctorを1-morphism,  その間のananatural transformationを2-morphismであるものとする.  この$${\mathrm{Ana}}$$はbicategoryになる.

この証明は思ったより面倒なので,  余裕があったらやる予定.

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