"トウモロコシ栽培の闇"は陰謀論か
マイケル・ポーランの著書『雑食動物のジレンマ』や映画『Food, Inc.』ではアメリカにおけるトウモロコシの大規模産業やそれを発端とする様々な問題が盛んに提起されていた.
そして本当のオーガニック, 本当に持続可能な生活とは何かを主張していた.
前提として私はこれらに衝撃を受け, 危機感を覚えた.(つまり, これらの主張に肯定的である.) その上で, これらが正しいのか, それとも単なる陰謀論なのか, それをなるべく客観的な立場で考察していきたい.
まず, トウモロコシ産業の実態は果たして事実なのか. 私も実際に自分の目で見たことも, そうしたことに精通した信頼できる人物と関わりがあるわけではない. しかし, これは認めざるを得ないと判断する. 店にある商品を少し見れば, そこには"高果糖コーンシロップ"の字が必ず見つかるはずだ. トウモロコシは世界で最も生産量が多い作物であり, その生産量は10億tにも達する. そしてその4割弱の3億6000万tはアメリカで生産されている.
近年はスローフードを求める動きがアメリカでも盛んになり, 本物のオーガニック農業が浸透しつつあることもまた事実だ. しかし未だにアメリカの肥満率は70%近くになり, 世界でも上位である. 特に金銭的, 時間的に余裕のない貧困層における肥満は大きな問題となっている. これはアメリカに限った話ではない. そして, 未だにアメリカ産の様々な商品は安い.(もちろん中国やその他の国でも安い商品は存在するが.)これが未だにトウモロコシ産業が盛んである何よりの証拠のように思える.
ではマイケル・ポーランやジョエル・サラティン, その他トウモロコシ産業の危険性を訴える人々は陰謀論者なのか? 彼らは文明社会を否定し, スピリチュアルな言動で一般人から金を巻き上げるカルト集団の一員なのか? 彼らはトレビの泉に塗料をぶちまけた環境活動家と同等の存在なのか? 東京から女性用トイレを取り除いたツイフェミのような人々なのか?
私はそうは思わない! 彼らは悪目立ちして承認欲求を満たしたいわけではない!(もちろん作家として売れたいとは思っているだろうが.)彼らは"トウモロコシ産業から人類を守る会"など設立して, お布施を集めてはいない! 展示されている蒸気機関にオーガニックスープをぶちまけてなどいない! トウモロコシ畑でテロを起こしてなどいない!
彼らは言論, そして商品を買わないこと(つまり市場の力)でトウモロコシ産業に対抗している. これこそが彼らが陰謀論者でない何よりの証拠ではないか.
とはいえ, 最終的な判断はあくまでも個人1人1人に委ねられている. その考えを否定する気は私にはない. 少なくとも私は彼らが陰謀論者でないと思っているというだけの話だ.
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