前位相空間を理解する9(最終回)

定義16

前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$が次の条件を満たすとき$${\mathrm{T}_1\text{空間}}$$という.

$${\quad}$$任意の$${x}$$で生成される単項フィルターは$${x}$$にのみ収束する,

$${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}}$$は明らかに$${\mathrm{T}_1\text{空間}}$$である.

定理18

$${X}$$が$${\mathrm{T}_1\text{空間}}$$であることと,  任意の$${X}$$の点$${x}$$に対し,  $${\mathrm{cl}(\{x\})=\{x\}}$$であることは同値.

証明

($${\implies}$$)
$${y\in\mathrm{cl}(\{x\})}$$であることは,  $${y}$$に収束フィルター$${\mathscr{F}}$$で,  $${\{x\}\subset\mathscr{F}}$$,  即ち$${\forall A\in\mathscr{F},x\in A}$$であるもとが存在することであるが,  この$${\mathscr{F}}$$は$${x}$$で生成される単項フィルターは$${x}$$に含まれるため,  $${y=x}$$.  即ち$${\mathrm{cl}(\{x\})=\{x\}}$$である.
($${\impliedby}$$)
とある$${x}$$で生成される単項フィルター$${\mathscr{F}}$$が,  $${x}$$と異なる点$${y}$$に収束したとする.  そのとき$${y\in\mathrm{cl}(\{x\})}$$となる.

位相空間ではこれらに加えて,  "$${\mathrm{T}_3}$$"や"$${\mathrm{T}_4}$$"というのも存在するが,  これは近傍の性質に強く依存しており,  フィルターで表現しようとすると非常に回りくどくなるので省略させてもらう.

まとめ

ここまで見てきたように,  前位相空間は位相空間とほぼ変わらない命題が成り立つ.  違いとしては,  開集合,  閉集合が主役にならないことである.  逆に言えば,  様々な性質が開集合,  閉集合でかけることこそが位相空間のいいところと言えるだろう.  このあとショケ空間や収束空間も扱っていこうと思うが,  その前に一様空間について記事を出すと思う.

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