前位相空間を理解する7

ここからは,  コンパクトと並んで重要な概念である"Hausdorff空間"を扱う.

定義14

前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$が,  次の性質を満たすとき$${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}}$$という.

$${X}$$上の任意のフィルター(基)は,  収束するならばその点は一意である.

即ち,  $${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}}$$であるとは,  同時に2点以上に収束するフィルターは存在しないことを意味する.

定理12

前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$が$${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}}$$であることは,  次と同等.

任意の$${X}$$の異なる2点$${x,y}$$に対し,  ある$${U\in \mathcal{V}(x),V\in \mathcal{V}(y)}$$が存在して,  $${U\cap V=\varnothing}$$

証明

($${\impliedby}$$)
定理の条件が成り立つとき,  $${x}$$に収束するフィルター$${\mathscr{F}}$$は$${U\in\mathscr{F}}$$を満たすが,  $${V\in\mathscr{F}}$$とすると,  フィルターの条件に矛盾.
($${\implies}$$)
任意の$${U\in \mathcal{V}(x),V\in \mathcal{V}(y)}$$に対し,  $${U\cap V\neq\varnothing}$$のとき, 
$${\mathscr{F}=\{A\bm{\mid}U\cap V\subset A\}}$$
と定義すれば,  $${\mathscr{F}}$$は$${x}$$にも$${y}$$にも収束するフィルターとなるため$${\mathrm{Hausdorff}}$$でない.

定理13

$${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}X}$$の部分集合$${M}$$がコンパクトならば,  $${\mathrm{cl}(M)=M}$$

証明

$${X}$$の点$${x}$$について,  $${x}$$に収束し,  $${M}$$を含むようなフィルターが存在したとき$${x\in M}$$を示せばよい.

$${\mathscr{F}}$$を$${x\in X}$$に収束し,  $${M}$$を含む極大フィルターとする.  $${M}$$のコンパクト性から,  これはある$${M}$$の点$${y}$$に収束するが,  $${X}$$の$${\mathrm{Hausdorff}}$$性から$${x=y}$$.  即ち,  $${x\in M}$$でなければならない.

定義15

$${(X,\mathcal{V}),(X',\mathcal{V'})}$$を前位相空間とする.  写像$${f\colon(X,\mathcal{V})\to(X',\mathcal{V'})}$$が次の($${\mathrm{a}}$$)または($${\mathrm{o}}$$)を満たすとき,  前者を閉写像,  後者を開写像という.

($${\mathrm{a}}$$)$${\mathrm{cl'}(f(M))=f(\mathrm{cl}(M))\quad(M\subset X)}$$
($${\mathrm{o}}$$)$${\mathrm{op'}(f(M))=f(\mathrm{op}(M))\quad(M\subset X)}$$


定理14

コンパクト空間$${X}$$から,  $${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}X'}$$への連続写像$${f}$$は閉写像.

証明

$${M}$$を$${X}$$の$${\mathrm{cl}(M)=M}$$なる部分集合とすれば,  $${X}$$がコンパクトであるから$${M}$$はコンパクト.  従って$${f(M)}$$は$${X'}$$のコンパクト部分集合.  $${X'}$$が$${\mathrm{Hausdorff}\text{空間}}$$であるから,  $${f(M)}$$は$${\mathrm{cl'}(f(M))=f(M)}$$を満たす.  従って,  $${\mathrm{cl'}(f(M))=f(\mathrm{cl}(M))}$$.

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