本筋から少し逸れた命題
定義
$${X}$$を集合とする. 写像$${\mathrm{cl}\colon\frak{P}(X)\to\frak{P}(X)}$$が
(i)$${\mathrm{cl}(\varnothing)=\varnothing}$$
(ii)任意の$${M\subset X}$$に対し, $${M\subset\mathrm{cl}(M)}$$
(iii)任意の$${M,N\subset X}$$に対し, $${\mathrm{cl}(M\cup N)=\mathrm{cl}(M)\cup\mathrm{cl}(N)}$$
を満たすとき, これを(擬)閉包作用子という.
閉包作用子$${\mathrm{cl}}$$に対し$${X}$$の部分集合族を
$${\mathcal{A}=\{\mathrm{cl}(M)\bm{\mid}M\subset X\}}$$
と定める. この$${\mathcal{A}}$$を(擬)閉集合系という.
定義
$${X}$$を集合とする. 写像$${\mathrm{op}\colon\frak{P}(X)\to\frak{P}(X)}$$が
(i)$${\mathrm{op}(X)=X}$$
(ii)任意の$${M\subset X}$$に対し, $${\mathrm{op}(M)\subset M}$$
(iii)任意の$${M,N\subset X}$$に対し, $${\mathrm{op}(M\cap N)=\mathrm{op}(M)\cap\mathrm{op}(N)}$$
を満たすとき, これを(擬)開核作用子という.
開核作用子$${\mathrm{op}}$$に対し$${X}$$の部分集合族を
$${\mathcal{O}=\{\mathrm{op}(M)\bm{\mid}M\subset X\}}$$
と定める. この$${\mathcal{O}}$$を(擬)開集合系という.
定理
前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$に対し, 写像$${\mathrm{cl}\colon\frak{P}(X)\to\frak{P}(X)}$$, 写像$${\mathrm{op}\colon\frak{P}(X)\to\frak{P}(X)}$$を次のように定めると$${\mathrm{cl}}$$, $${\mathrm{op}}$$はそれぞれ閉包作用子, 開核作用子となる.
任意の$${M\subset X}$$に対し,
$${\mathrm{cl}(M)=\{x\in X\bm{\mid}\forall V\in\mathcal{V}(x),V\cap M\neq\varnothing\}}$$
$${\mathrm{op}(M)=\{x\in X\bm{\mid}\exists V\in\mathcal{V}(x)\quad s.t.\quad V\subset M\}}$$
証明
同じようにしてできるので$${\mathrm{cl}}$$のみを証明する.
(i)任意の$${V\in\mathcal{V}(x)}$$に対し, $${V\cap\varnothing=\varnothing}$$より, $${\mathrm{cl}(\varnothing)=\varnothing}$$
(ii)$${x\in M}$$のとき, $${V\in\mathcal{V}(x)}$$と$${M}$$のintersectionは$${x}$$を含むので空でない. よって$${M\subset\mathrm{cl}(M)}$$
(iii)$${\forall V\in\mathcal{V}(x),V\cap(M\cup N)\neq\varnothing}$$のとき, これは明らかに$${V\cap M\neq\varnothing}$$または$${V\cap M\neq\varnothing}$$と同値なため, $${\mathrm{cl}(M\cup N)=\mathrm{cl}(M)\cup\mathrm{cl}(N)}$$
以後, 閉包作用子, 開核作用子についての命題は特別断りのない限り, 一方のみの証明とする.
これにより前位相空間にはそれに対応する閉包作用子, 開核作用子が与えられることが分かった. 逆に, 閉包作用子, 開核作用子が与えられたとき, そこに前位相空間を定められる.
定理
$${\mathcal{A}}$$は閉集合系, $${\mathcal{O}}$$は開集合系である. $${\mathcal{V}(x)}$$を次のように定めると$${(X,\mathcal{V})}$$は前位相空間となる.
$${\mathcal{V}(x)=\{V\bm{\mid}\exist A\in\mathcal{A}\quad s.t.\quad x\in A\cup V=X\}}$$
$${\mathcal{V}(x)=\{V\bm{\mid}\exists O\in\mathcal{O}\quad s.t.\quad x\in O\subset V\}}$$
証明
(i)定義から明らか.
(ii)$${U,V\in\mathcal{V}(x)}$$を任意にとる. このときある$${A,B\in\mathcal{A}}$$が存在して$${U\cup A=V\cup B=X}$$であるが, $${C=A\cup B}$$とおくと$${C\in\mathcal{A}}$$であり, $${(U\cap V)\cup C=(U\cup C)\cap(V\cup C)\subset X\cap X=X}$$となり, この$${C}$$が条件を満たすため, $${U\cap V\in\mathcal{V}(x)}$$. また, $${x\in C}$$は明らか.
(iii)$${V\in\mathcal{V}(x),V\subset V'}$$なら明らかに$${x\in A\cup V'=X}$$
定理
($${\mathrm{I}}$$)$${X}$$の任意の部分集合について, $${x\in\mathrm{cl}(M)}$$であることは$${M}$$を含み, $${x}$$に収束するようなフィルター(基)$${\mathscr{F}}$$が存在することと同値である.
($${\mathrm{II}}$$)$${x\in\mathrm{op}(M)}$$であることは$${x}$$に収束するような全てのフィルター(基)$${\mathscr{F}}$$が$${M}$$を含むことと同値である.
証明
($${\implies}$$)
$${x\in\mathrm{cl}(M)}$$であることは, 任意の$${V\in\mathcal{V}(x)}$$に対し$${V\cap M\neq\varnothing}$$であることと同等であった. そこで$${\mathscr{F}=\{A\bm{\mid}\exist V\in\mathcal{V}(x)\quad s.t.\quad V\cap M\subset A\}}$$とおくと, $${\mathscr{F}}$$は$${x}$$に収束し, $${M}$$を含むフィルターである.
($${\impliedby}$$)
$${x\notin\mathrm{cl}(M)}$$とし, $${x}$$に収束するフィルターが$${M}$$を含まないことを示す.
$${\mathcal{V}(x)\subset\mathscr{F}}$$なるフィルターをとる. 仮定から$${\exist V\in\mathcal{V}(x)\quad s.t.\quad V\cap M=\varnothing}$$より, $${M\in\mathscr{F}}$$とすると, フィルターの条件に反する.
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