前位相空間を理解する3
前回は連続写像についての定理を扱った. 今回からは部分空間, 直積空間を扱う. なお, 以下特に断りのない限り, "位相"と書いたら前位相のことを指すこととする.
定義6
集合$${X}$$上のフィルター基$${\mathscr{F,G}}$$について, $${\forall F\in\mathscr{F}\quad\exist G\in\mathscr{G}\quad s.t.\quad G\subset F}$$となるとき, $${\mathscr{G}}$$を$${\mathscr{F}}$$の細分という.(もし$${\mathscr{F,G}}$$がフィルターならばこれは$${\mathscr{F}\subset\mathscr{G}}$$であることを意味する)
定義7
$${\mathcal{V,V'}}$$を$${X}$$における位相とする. 任意の$${x\in X}$$に対し, $${\mathcal{V'}(x)}$$が$${\mathcal{V}(x)}$$の細分となるとき$${\mathcal{V}}$$は$${\mathcal{V'}}$$より弱い位相, $${\mathcal{V'}}$$は$${\mathcal{V}}$$より強い位相という.
定理3
集合$${X}$$と前位相空間$${(X',\mathcal{V'})}$$, 及び写像$${f\colon X\to X'}$$が与えられたとする. このとき$${\mathcal{V_0}(x)=\{f^{-1}(V')\bm{\mid}V'\in\mathcal{V'}(f(x))\}}$$とすると$${(X,\mathcal{V_0})}$$は前位相空間となり, $${f}$$は$${(X,\mathcal{V_0})}$$から$${(X',\mathcal{V'})}$$への連続写像となる. また, この$${\mathcal{V_0}}$$は$${f}$$が連続写像となるような$${X}$$における(前)位相のうち最も弱いものである. この$${\mathcal{V_0}}$$を写像$${f}$$によって$${(X',\mathcal{V'})}$$から誘導される(前)位相という.
証明
$${\mathcal{V_0}}$$が位相であること, $${f}$$が連続写像であることは明らか. $${\mathcal{V_0}}$$が最弱の位相であることを示そう.
$${\mathcal{V}}$$を$${f}$$が$${(X,\mathcal{V})}$$から$${(X',\mathcal{V'})}$$への連続写像となるような連続写像とする. このとき任意の$${V'\in\mathcal{V'}(f(x))}$$に対し, $${f^{-1}(V')\in\mathcal{V}(x)}$$より, $${\mathcal{V_0}(x)\subset\mathcal{V}(x)}$$である.
(補足)
$${X}$$を集合, $${(X'_\lambda,\mathcal{V'}_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}}$$を前位相空間の族とし, 各$${\lambda\in\Lambda}$$に対し, 写像$${f_\lambda\colon X\to X'_\lambda}$$が定められているとする. この$${f_\lambda}$$が全ての連続写像となる$${X}$$における最弱の位相は$${\mathcal{V}^{(0)}(x)=\sup\{\mathcal{V}_\lambda(x)\bm{\mid}\lambda\in\Lambda\}=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\mathcal{V}_\lambda}$$となる.(ただし, $${\mathcal{V}_\lambda(x)}$$は$${f_\lambda}$$によって$${(X'_\lambda,\mathcal{V'}_\lambda)}$$から誘導される位相とする)
これは具体的には$${\bigcap_{1\leq i\leq n}V_{\lambda_i}}$$ ($${V_{\lambda_i}\in\mathcal{V}_{\lambda_i}(x)}$$, $${\lambda_1,\cdots,\lambda_n}$$は$${\Lambda}$$の相異なる元)の形に表されることに注意しておこう. これがどのように構成されるかは, 別の記事に載せようと思う.
定義8
$${((X_\lambda,\mathcal{V}_\lambda))_{\lambda\in\Lambda}}$$を前位相空間の族, $${X=\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda}$$, $${\pi_\lambda}$$を射影とする. このとき, $${(\pi_{\lambda})_{\lambda\in\Lambda}}$$によって$${((X_\lambda,\mathcal{V}_\lambda))_{\lambda\in\Lambda}}$$から$${X}$$に誘導される位相を直積位相という. この$${(X,\mathcal{V})}$$を直積空間という.
直積空間における基本近傍系$${\mathcal{V}^*(x)\quad(x=(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda})}$$の元は$${\bigcap_{i=1}^n\pi_{\lambda_i}^{-1}(V_{\lambda_i})=(\prod_{\lambda\in{\Lambda}'}X_\lambda)\times(\prod_{i=1}^nV_{\lambda_i})}$$の形の集合となる.
定義9
$${(X,\mathcal{V})}$$を前位相空間, $${M}$$をその空でない部分集合, $${\iota\colon M\to X}$$を包含写像とする. この$${\iota}$$によって$${(X,\mathcal{V})}$$から誘導される$${M}$$の位相を$${\mathcal{V}_M}$$とする. これを相対位相といい, $${(M,\mathcal{V}_M)}$$を部分空間という.
相対位相は次のように表せる.
$${\mathcal{V}_M(x)=\{V\cap M\bm{\mid}V\in\mathcal{V}(x)\}}$$
これは$${M}$$上のフィルター, $${X}$$上のフィルター基となっている.
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