ジョルダン標準形(構成について)
不変なもの
線形変換の標準形を考えるモチベーションは, その"性格"を知るためであった. 与えられた線形変換に対し, 適当な基底をとることでその行列表示をどれだけ簡単にできるか, それが重要な課題である. そのために基底の取り換えで(即ち正則行列とその逆行列を掛けて)変化しないものが重要になってくることは数学ではよくあることと言えよう. その不変なものとは何だろう? 行列式やトレースは当てはまるが, それだけでは不十分なのだ. そこで登場するのが固有値・固有ベクトルである.
対角化という夢
固有値・固有ベクトルは基底変換で不変な上, 考えている線形変換によってスカラー倍しかされない. これほど我々の目的にピッタリなものはなかろう.
あとはこの固有ベクトル達が基底となってくれれば, 線形変換を各基底に対しスカラー倍しかしない簡単な変換として見ることができる! …のだが, そうそう事は上手くいかない. 固有ベクトル達が基底になるよう取れないことがあるのだ. 線形変換の対角化という夢は儚くも音を立てて崩れ去ったのだ…
苦肉の策
全ての線形変換を対角化することは不可能だと分かった. このような絶望的な状況に対し, 我々ができることは何だろう? 対角化出来なかった原因は固有ベクトルが線形空間の基底とならなかったことだ. なんとか固有ベクトルに似た性質を持ったベクトルを基底となるように持ってくることはできないだろうか? そしてそのベクトルに課される条件とは? それこそが一般(広義)固有ベクトルであり, そこから我々はべき零変換を考えるのである. さて,
一般(広義)固有ベクトルは線形空間の基底となり得るのか? 結論から言うとYESである. ではこのような基底によって線形変換はどのような行列表示を得るのか? そう, 皆さんご存じジョルダン標準形. あの対角成分の上に1が並んだ行列である.
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