前位相空間を理解する8
この記事では局所コンパクト空間と, コンパクト化の問題について扱う.
定義16
前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$の任意の点に対し, コンパクトな近傍が存在するとき, $${X}$$を局所コンパクト空間という.
定理15
前位相空間$${(X,\mathcal{V})}$$が局所コンパクト$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$のとき, $${X}$$に含まれない点$${x_\infty}$$を加えた集合$${X_*=X\cup\{x_\infty\}}$$に適当な$${x_\infty}$$の近傍を含めた$${X_*}$$の近傍系$${\mathcal{V}_*}$$を与えて, 次の(i)(ii)が成り立つようにできる.
(i)$${x\in X}$$に対しては$${\mathcal{V}_*(x)=\mathcal{V}(x)}$$
(ii)$${(X^*,\mathcal{V}^*)}$$はコンパクト$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$
証明
$${\mathcal{A}_0}$$を$${X}$$のコンパクトな部分集合全体とする.($${X}$$が$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$であることから, これらは閉包作用子により不変である.)
$${X_*}$$の部分集合族$${\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$を
$${V\in\mathcal{V}_*^*(x)\iff X_*\setminus V\in\mathcal{A}_0}$$
と定義する. これが$${x_\infty}$$の基本近傍系となっていることを示そう.
まず, $${V\in\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$のとき, $${\mathcal{A}_0}$$の元は$${x_\infty}$$を含まないため, $${x_\infty\in V}$$でなければならない.
次に, $${U,V\in\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$のとき,
$${X_*\setminus(U\cap V)=(X_*\setminus U)\cup(X_*\setminus V)}$$で,
$${(X_*\setminus U),(X_*\setminus V)}$$がコンパクトであることから,
$${(X_*\setminus U)\cup(X_*\setminus V)}$$もコンパクト.
即ち, $${U\cap V\in\mathcal{V}_*^*}$$. 従って, $${\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$は$${x_\infty}$$の基本近傍系である.
この基本近傍系から定まる近傍系$${\mathcal{V}_*(x_\infty)}$$及び, $${x\in X}$$に対しては$${\mathcal{V}_*(x)=\mathcal{V}(x)}$$とすることで$${X_*}$$に(前)位相を入れることができる.(この$${\mathcal{V}_*}$$が(i)を満たすことは明らかである.) この前位相空間$${(X_*,\mathcal{V}_*)}$$がコンパクト$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$であることを示そう.
$${\mathscr{F}}$$を$${X_*}$$の極大フィルターとする. この$${\mathscr{F}}$$は当然, $${X}$$のとある極大フィルターを含む. もし, $${\mathcal{V}_*^*(x_\infty)\subset\mathscr{F}}$$ならば, フィルターの性質から$${\mathcal{V}_*(x_\infty)\subset\mathscr{F}}$$より, $${\mathscr{F}}$$は$${x_\infty}$$に収束する.
逆にもし, ある$${V\in\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$が存在して, $${V\notin\mathscr{F}}$$のとき, 極大性から
$${X_*\setminus V\in\mathscr{F}}$$.
$${\mathcal{V}_*^*(x_\infty)}$$の定義から, $${X_*\setminus V}$$はコンパクトであることと, $${\mathscr{F}}$$が$${X}$$のとある$${X_*\setminus V}$$を元に持つ極大フィルター$${\mathscr{G}}$$を含むことから,
ある$${x\in X_*\setminus V}$$が存在して
$${\mathcal{V}(x)=\mathcal{V}_*(x)\subset\mathscr{G}\subset\mathscr{F}}$$
より, $${\mathscr{F}}$$は$${x}$$に収束する. これによって, $${X_*}$$の任意の極大フィルターに極限が存在することが分かったため, $${X_*}$$はコンパクトである.
次に$${X_*}$$が$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$であることを示す. $${X_*}$$のフィルター$${\mathscr{F}}$$が(異なるとは限らない)2点$${x,y\in X_*}$$に収束したとしよう.
$${x,y\in X}$$なら, $${X}$$の$${\mathrm{Hausdorff}}$$性から, $${x=y}$$.
$${x\in X,y=x_\infty}$$なら, $${x}$$のコンパクトな近傍$${V}$$に対して, 定義より$${X_*\setminus V}$$は$${x_\infty}$$の近傍となるが, 明らかにこの2つの共通部分は空である. 即ち, $${X_*}$$は$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$.
定理16
定理15とは逆に, (i)(ii)を満たすように$${\tilde{\mathcal{V}}_*}$$をとれたなら, $${X}$$は局所コンパクト$${\mathrm{Hausdorff\text{空間}}}$$でなければならない.
定理17
定理15, 定理16における$${X_*}$$の(前)位相$${\mathcal{V}_*}$$は(i)(ii)により一意的に定まる.
定理16, 定理17の証明は一般の位相空間の教科書に載っているので, 割愛.
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