前位相空間を理解する(補足)
ここでは, フィルター基と写像について解説していなかったことを補足する.
定理
$${X,Y}$$を集合. $${\mathscr{F}}$$を$${X}$$上のフィルター基, $${\mathscr{G}}$$を$${Y}$$上のフィルター基, $${f:X\to Y}$$を写像とする. このとき,次が成り立つ.
(i)$${f(\mathscr{F})}$$は$${Y}$$上のフィルター基
(ii)任意の$${A\in\mathscr{G}}$$に対し, $${f^{-1}(A)\neq\varnothing}$$ならば$${f^{-1}(\mathscr{G})}$$は$${X}$$上のフィルター基
証明
(i)$${A\neq\varnothing\implies f(A)\neq\varnothing}$$より, $${\varnothing\notin f(\mathscr{F})}$$. $${f(A),f(B)\in f(\mathscr{F})}$$を任意にとる. このとき$${\mathscr{F}}$$はフィルター基であるから, $${\exist C\supset A\cap B\quad s.t.\quad C\in\mathscr{F}}$$. 写像の性質から, $${f(A\cap B)\subset f(A)\cap f(B)}$$. よって, $${f(C)\in f(\mathscr{F}),f(C)\subset f(A)\cap f(B)}$$となり, $${f(\mathscr{F})}$$はフィルター基.
(ii)仮定から$${\varnothing\notin f^{-1}(\mathscr{G})}$$ $${A,B\in f^{-1}(\mathscr{G})}$$を任意にとる. このとき, ある$${A',B'\in\mathscr{G}}$$が存在して, $${A=f^{-1}(A'),B=f^{-1}(B')}$$であり, $${\mathscr{G}}$$がフィルター基であることから, $${\exist C'\in\mathscr{G}\quad s.t.\quad C'\subset A'\cap B'}$$であり, $${f^{-1}(A'\cap B')=f^{-1}(A')\cap f^{-1}(B')}$$なため, $${C=f^{-1}(C')}$$とすると, $${C\in f^{-1}(\mathscr{G}),C\subset A\cap B}$$となり, フィルター基の条件を満たす.
(一般に, フィルターの像はフィルターになるとは限らないし, フィルターの逆像もフィルターになるとは限らないことに注意しておこう.)
反例
$${X=Y}$$を無限集合とし, 適当な$${a\in X}$$に対し写像$${f:X\to X}$$を$${f(x)=a}$$と定義すると, 任意の空でない$${A\subset X}$$に対し, $${f(A)=\{a\}}$$となってしまい, $${b\in X}$$を$${a}$$と異なるようにとると, $${\{a\}\subset\{a,b\}}$$であるが, $${\{a,b\}}$$を含むようなフィルターの像は存在しない.(逆像も同様)
定理
$${X}$$上の任意のフィルター基$${\mathscr{F}}$$及び, 任意の$${M\subset X}$$に対し次の(i)(ii)(iii)のいずれか一つだけが成り立つ.
(i)$${\exist A\in\mathscr{F}\quad s.t.\quad A\subset M}$$
(ii)$${\exist A\in\mathscr{F}\quad s.t.\quad A\subset M^c}$$
(iii)任意の$${A\in\mathscr{F}}$$に対し$${A\cap M\neq\varnothing,A^c\cap M\neq\varnothing}$$
証明
(i)(ii)(iii)が両立しないことは明らか. (i)(ii)が成り立たないことを仮定して, (iii)を導く.
$${A\in\mathscr{F}}$$を任意にとる. このとき, $${A\cap M=\varnothing}$$とすると, $${A\subset M^c}$$となり, (ii)でないことに矛盾. $${A\cap M^c\neq\varnothing}$$も同様.
系
任意のフィルター$${\mathscr{F}}$$及び, 任意の$${M\subset X}$$に対し次の(i)(ii)(iii)のいずれか一つだけが成り立つ.
(i)$${M\in\mathscr{F}}$$
(ii)$${M^c\in\mathscr{F}}$$
(iii)任意の$${A\in\mathscr{F}}$$に対し$${A\cap M\neq\varnothing,A^c\cap M\neq\varnothing}$$
($${\because}$$定理で(i)が成り立つときフィルターの条件から$${M\in\mathscr{F}}$$となる. (ii)も同様.)
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