~循環型経済から考える”豊かさ”とは②~
Q2以前は中東でエネルギー向けのファイナンスをご専門にビジネスを展開されていたかと思いますが、循環型経済について研究されることになった経緯を教えていただけますか?
今までは大量生産・大量消費の線形経済から、"経済が豊かになれば幸せになれる"という価値観のもと、地球の資源を掘り起こして経済を発展させてきました。そこで地球環境問題など様々な問題が起こり、我々が考えをあらためて行動を変容させる時期に来ていると思います。
今世界で抱えている問題を解決するためには、製品やサービス提供の設計段階から環境への負荷を軽減するような、製造元によるシステムマネジメントなども重要ですが、もっと重要なのは我々消費者側のディマンドコントロールをはじめとする、消費者の意識・行動変容がとても大切になってきます。
そこで我々日本人の歴史を振り返ってみると、江戸時代は循環型社会で、 “もったいない精神”の、今で言う“reduce・reuse・recycle”で循環させて生活を営んでいました。食事から体内に取り入れた栄養素はこえだめを経由して畑の肥料になったり、食べ物は捨てるところなくすべての部位を食するような知恵を持ち、“いただきます”という自然からの恵みに感謝しつつ自然に敬意を払い、人間も自然の中の一部として生活していました。
ヨーロッパでは、自然と人間を分けて考えるのが一般的ですが、日本は人間も自然の一部であるという考えでした。ただ今はそのバランスが崩れてしまっているという危機感をおぼえています。江戸時代の循環型社会を研究することで、世界の共通課題を解決する手がかりがあると考え、このようにアジアからの視点も含めて研究を行っています。
Q3ビジネスや研究などを通じて色々な世界を体感された玉木先生が考える"豊かさ"とは?
自分の根底にあるのは、人が幸せに生きるには?という問いがあると思います。経済的・物質的な豊かさを追い求めて環境を破壊したり国同士が争ったりしても、平和でなければそもそも人がウェルビーイングな状態でいることはできません。
人の数だけ価値観があるなかで、我々はどのように“豊かさ”を得ることができるのか?そもそも“豊かさとは何か?”と考えてみると、人間も自然の一部であるということを再認識して、自然の中に身を置くこと、そして自分の心が求めているものは何なのかをそれぞれが自覚することが豊かさを感じる一つの方法になると思います。自分の心を満たせるのは自分しかいません。
自分の過去を振り返ると、“物欲大魔王”で自分も消費することが大好きでした笑。ただ、今は物を手に入れる喜びよりは、“足るを知る”ことで心が満たされるのがわかります。忙しく日々生活していると、自分の心が本当は何で満たされるのかを感じることが時に難しくなる時もあると思います。そんな時に自然の中に身をおいたり、瞑想を通じて自分の心に触れたりすることを習慣化すると何かしらの気づきや感じることがあると思います。
今回は江戸時代の循環型経済のお話から、”豊かさ”についてお話いただきました。次回は玉木先生の原動力になっているものについてもお話いただきます!③へつづく