動物の福祉に配慮した「ホントの夜の動物園プロジェクト」
ガサガサガサッ。動物の気配やにおいはするけれど姿は見えません。
ナイトスコープを付けた少年が、動物たちに聞こえないように耳元で話しかけます。
「お父さん、あそこ!こっちを見てる!」
案内役は動物公園の飼育係。
動物たちの世界にお邪魔して、ナイトスコープや暗視カメラを使って暗闇の中で動物たちをそーっと観察する特別な体験。
私たちが動物を観察しているというよりも、私たちが動物たちに観察されているよう。
さぁ飼育係と一緒に誰も知らない「ホントの夜の動物園」を探検してみよう。
このプロジェクトの紹介は、こんな語り出しで始まります。
ご存知の方もいるかもしれませんが、今年からZOOMOでは「ホントの夜の動物園」という新しいイベント行っています。外灯で園路や獣舎を照らさず、真っ暗闇の動物公園内で暗視スコープを使ってひっそりと動物を観察したり、園内に設置したセンサーカメラで野生動物の暮らしを垣間見ることができる特別なイベントです。
このようなプロジェクトを企画した背景には、ZOOMOの取り組みの大きな柱である動物福祉と環境教育・保全教育が深く関わっています。
動物園の夜間開園といえば、夏の大人気企画として全国の動物園で行われている恒例イベントです。暑い夏は動物たちもあまり活発に活動しませんし、来園者にとってもつらい季節。そこで、涼しくなる夕方以降まで開園をすることで、動物も人も過ごしやすく、夜行性の動物の本来の姿も見ることができると謳っている動物園も少なくありません。
しかし、実際のナイトズーを見てみるとどうでしょうか。来園者の安全確保のために園路を外灯で照らすだけでなく、動物たちにもライトを当ててよく見えるようにして、普段は来園者のいない時間帯に数百人、数千人の方が来園します。
もちろん飼育係は動物たちの様子をしっかり観察して体調管理に努めていますが、あくまでも動物たちが人に合わせてくれているイベントであるだけでなく、場合によっては動物たちの本来の姿や習性に関する間違ったイメージを植え付けてしまい、野生動物への正しい理解や人と野生動物のより良い関係に向けた保全教育にも繋がらない恐れがあるのではないか、というジレンマを抱えている飼育係や動物園職員は少なくありません。
そこで、動物への影響を最小限に抑えながら、彼らの本来の暮らしぶりや野生動物と人とのより良い関係について学んでもらえるプログラムを行うことは出来ないだろうかという思いから企画されたのが「ホントの夜の動物園プロジェクト」です。
「夜の動物たちの世界にお邪魔する」をコンセプトに、動物福祉に配慮した動物との接し方、動物たちの夜の習性や野生動物を身近に感じる保全教育を目的として、人が動物に敬意を払い、人が動物に合わせる、“本当の意味での夜の動物園”イベント。
動物をライトで照らすことなく、少人数で暗視スコープを使って、暗闇の中にいる動物たちをそっと観察し、センサーカメラを使って野生動物の姿を捉える、これまでに世界のどの動物園も行っていない手法で行う特別なプログラムです。
このプロジェクトは令和2年6月にクラウドファンディングで開催に向けた機材の購入費用などの支援者を募りましたが、なんと開始3日目にして目標額を達成することができ、さらなるプログラムの質の向上を目指して設定したネクストゴールも達成することが出来ました。
これまでにどの動物園も行っていないプロジェクトでしたので、みなさんにどのように受け取っていただけるか不安もありましたが、ご支援とともにいただいたたくさんの温かいメッセージから、私たちの取り組みに対する理解と共感、みなさんの期待度の高さを感じることが出来ました。ご支援いただいた皆様にあらためて御礼申し上げます。
※園内の散策路に仕掛けたセンサーカメラに映る野生動物を確認している様子
※暗視ゴーグルで見たホンドタヌキ
令和2年度はクラウドファンディングの支援者を対象としたプレ開催という形でイベントを実施しましたが、満を持して今年から一般の申込みを受け付けて開催をしています。定員は各回5名のみ。外灯を一切使わず、真っ暗闇の中での開催ですので、開催時の記録写真などがほとんどないというのが残念です。
※センサーカメラで撮影された野生のホンドタヌキとニホンカモシカ
開催後にはこのような素敵な感想をいただきました。いくつか参加者からの声をご紹介します。
「生き物達の保護や福祉のため、また環境の保全のため役割が動物園にはあるのだということ、そしてZOOMOの職員の皆さんが動物を愛し周囲の環境を大切にしているという思いをしっかり感じられた機会となりました。」
「テレビで見る赤外線での動物ではなく、まさに昨日ここを通ったかもしれない動物の話は、なんだか心に沁みる話でした。野生動物と共存する気持ちを育めるホントの夜の動物園。奥がまだまだ深いなと思いました。」
来年以降の実施方法などについては現在検討中ですが、ZOOMOだからこそ出来る特別な体験と学びを、これからもみなさんに提供していきたいと考えていますのでお楽しみに。
企画営業広報担当 荒井