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台風と開口部の強化【台風の最大風速と窓の耐風圧力】

台風11号の勢力や動向が気になりますね。

今回は風圧力のお話です。

「風」に対する建物強度の話は今後数回に分けて投稿させていただくとして、今回は開口部(主に窓など)の強化について記事にしたいと思います。

まず、台風の強さの指標として台風情報に表示されるのがhPa(ヘクトパスカル)というのはよく目にされていると思いますが、同じ「台風」を表現するなかでも、通常よりも強い風速が予想される場合は、更に強く注意喚起する意味で、おおよその強さを示す階級として次のような3種類の段階に分けて表示されております。

「強い」「非常に強い」「猛烈な」

というように、例えば『非常に強い勢力を維持したまま○○半島付近に上陸の見込みです』といった表現を付け加えて報道されるのが一般的です。

これらの表現の違いは次のように定められています。

「強い」最大風速が33m/s以上~44m/s未満
「非常に強い」44m/s以上~54m/s未満
「猛烈な」54m/s以上

今回の台風11号は当初「猛烈な」台風という表現でとなっていましたが、昨夜、一旦「非常に強い」に変更され、9月2日午前9時発表では再び「猛烈な」台風に変更。現在(9月2日19時30分時点)では、再び「非常に強い」になっており、こんなにもコロコロ変更されると不思議に思いますし、なんだか勢力が弱まってるのでは?と錯覚しそうですが、そうではありません。 まだまだ「非常に強い」勢力を維持したまま本州付近に近づいてくる見込みで大変危険な台風に違いはありません。台風の暴風域では、風速44〜54mの風がいつ吹いてもおかしくないということを表していますから厳重な注意が必要です。※前回の投稿で2019年の台風15号は千葉市付近に上陸した際の勢力は「強い」台風(中心気圧960hPa・最大風速40m/s)で、それでも前述のとおり、送電線が倒壊するなどの強烈な暴風(観測史上最大の最大瞬間風速58.1m)が陸上に発生してしまったように、必ずしも一致するとは限りません。

一方、住宅の窓はどの程度までの風速を想定しているのだろう?という事が気になります。

戸建て住宅などのサッシには実は10項目にも及ぶ性能基準があり、「窓の基本性能の3項目」(耐風圧力・水密性・気密性)・「安全・安心に関する性能の3項目」(防火性・バリアフリー・防犯性)・「居住の快適性に関する4項目」(断熱性・遮音性・防露性・日射取得性)とされており、合計10項目となっております。※この他にもJIS規格や建築基準法や住宅性能表示など様々な観点での指標がありますが、今回の話題にはこれらの規格や基準を網羅している一般社団法人日本サッシ協会様の基準を引用致しました。

この10項目の中で、特に台風に関連性が高いのが、主に「耐風圧力」と「水密性」です。細かい解説は省略させていただきますし、厳密に言えば他にも関連性の高い項目もあるのですが、今回は「耐風圧力」のみにフォーカスいたします。(今後、その他の項目も含め順次投稿してまいります。)

「耐風圧力」は主に窓やドアがどれくらいの風圧に耐えられるかを表す性能(指標)のことで、台風などの際、想定される強風に耐えられるのかどうか。つまり、サッシの変形などによって破損・脱落などの問題が起こらない強度があるかどうかという基準と、加えてガラスそのものが耐えられるかどうかという両面での指標となります。

サッシの「耐風圧力」はS-1〜S−7のランクがあり、想定される耐風圧力は 以下の通りとなります。

JIS等級 風速目安(参考)

S-1  36m/s 

S-2       44m/s

S-3  51m/s

S-4        57m/s

S-5        62m/s

S-6        67m/s

S-7        76m/s

戸建て住宅用は主にS-1〜S-3が使用されますが、建築される地域、立地条件、階数などにより使用(選択の目安)される性能は異なります。(沖縄など一部地域ではS-5の採用も徐々に増えてきましたが、まだまだ流通量自体も少なく、S-5自体が選択できるサッシの種類が制限されたり、そもそも流通していない地域すらあり、コスト面でも割高感があるのも否めません。

おそらく、自宅の家の窓がどの性能にあたるのか正確に把握しておられる方はほとんどいらっしゃらないのではないかと思います。「断熱性能はわかるが、他はあまりよく知らないし聞いていない」という方が多いような気がしておりますが、もし、ご存じだとしても、何を指標として安全であるかどうかを判断するのが困難ではないでしょうか。

また、仮に「最大瞬間風速○○m」を記録したと言っても、それは観測地点でのデータであり、我が家の窓に直接その風速の圧力がかかるかというと、ほとんどが、立地環境や台風の進路や変化していく風向きで「悪条件が重なった時」である事が多く、【予想最大風速>サッシの許容耐風圧力】となったからと言って、必ず被害が出るというものでもありません。しかし、これらの指標を参考にしつつ、進路や諸条件によってリスクが高いと判断した場合、できるだけ早めの準備と対策が重要であると思います。

今回はサッシの耐風圧力に対する強度についての視点でのみ話題にしましたが、新築やリノベーションの場合は様々な要素を考慮し、バランスを考え適切な性能を選択すれば良いですし、対策には多くの選択肢があります。(Zoo工務店では全棟で詳細な構造計算とシミュレーターによる強度検証を実施し、「性能評価制度」で【耐風圧力】においても最高等級基準としております「Zoo工務店の家は全棟で最高等級2等級を取得するということ」。建築基準法レベルの耐風圧力は現時点で二段階であり、1等級と2等級のたった2段階しかないのですが、耐震等級は三段階に分かれており、同じく建築基準法レベルの1等級・壁量で言えば1.25倍とされている2等級、同じく1.5倍の強度を基準のひとつとする最高等級3。この「耐震等級3」をクリアするよりも「耐風圧力2」をクリアする方が難易度が高い項目があるなど、耐風圧力2等級は決してレベルの低いものではありません。また、前述で出ていたサッシの耐風圧力レベルを表したものではないので誤解の無いようにお願いいたします。)

このように考えると、同じ耐風圧力でも、サッシのみの耐風圧力と建物全体の耐風圧力ではそもそも範囲が大きく異なります。性能評価で全体のバランスの良い性能品質を確保した上で、個別の項目についても更にそのご家族さまにとって最適な選択をすることが、最終的にはバランスの良い質の高い住宅になると思います。

もし、賃貸住宅などの場合、やれる事に制限は出てくるでしょうが、普段から避難先の検討や退去時の原状回復を前提としてできる事もあると思いますから、まずはお近くの工務店などに相談されるといいのではないでしょうか。

少しずつのペースではありますが、こんな感じで投稿して参りますのでよろしくお願い致します。

※パースは窓の無い家を推奨している訳ではございません。パースをキャンバスと見たてて、「美しい窓を描こう」という思いが込められております。