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「オウムの胸像」
記念作品シリーズ 第一回
「かいのどうぶつえん」では、2006年の開園以来、毎週一回新作を制作してきました。ここでは100回目ごとの記念作品をご紹介します。
トップバッターは、2023年に公開した第900回目の作品「オウムの胸像」 (Bust of parrot)です。
いつものことですが、記念作品の制作には、あれこれ悩みます。
毎週発表の作品とは別に、900回作品はどうしようか?と思案を重ねているところへ、中欧のスロベニアを旅する友から、数点の写真が届きました。
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おしゃれな雰囲気のレストラン。天井から吊り下げられた、たくさんのランプシェードが、本物のオウムガイ(nautilus)!だったのです。
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そうだ、”生きた化石”とよばれるオウムガイで、900回記念作品をつくるぞ!と即断しました。
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ところが、貝で鳥をつくると決めたものの、保有するオウムガイは殻長が20cm、殻幅が9cmと両掌にあまるビッグサイズ。しかも450gと重量級で、脚や爪、羽根をつけると自立は困難です。
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そこで急遽、”全身像”から”胸像”へと針路変更し、オウムには、お詫びに貝の首飾りをプレゼント。イベント用に制作した「泳ぐオウムガイ」も、脇役にプレゼントしました。
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貝は「割らない」「塗らない」「削らない」の“3ない”ルール
第900回 「オウムの胸像」 使用した貝
★「オウム」
頭部:オウムガイ 目:リュウテン 鼻:スガイ(ふた)
胸部:ヤツシロガイ/アサリ
★首飾り:ゴシキカノコ ★台:シラナミガイ/マドガイ
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補遺
☆オウムガイの名称
和名は、殻の黒い部分がオウムの嘴に似ていることに由来。
英名ノーチラス(Nautilus)の語源は、ギリシャ語の”船乗り”。
『海底二万里』(ジュール・ヴェルヌ/1870)の潜水艦名はノーチラス号。
☆オウムガイの生態
フィリピンなど西太平洋の、水深200メートル付近の海底に生息。
現在も漁師が籠網を使って捕獲し、肉は食用に、貝殻は装飾用や工芸品に利用。
☆オウムガイとアンモナイト
オウムガイ類は5億年前のカンブリア紀に姿を現し、古生代末にはオウムガイ目以外は絶滅。現生種はオウムガイ(Nautilus)のみ。アンモナイト類はオウムガイ類から派生し、6500万年前に絶滅。
☆オウムガイの体の構造
オウムガイの殻の内部は”住房”と”気房”で構成。住房には身体(肉)が入り、気房の内部は隔壁で多数の気室に仕切られ、浮力を調整します。