「もっとサプライズを!」
<舞台裏>シリーズ No.8
かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。
このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。
第8回目は「もっとサプライズを!」。
日本の歴史に目覚めた園長の、無謀なチャレンジのお話です。
はじめての方からの作品展示や教室依頼は、なぜかドキドキします。
条件や内容などは無関係で、頼まれると、ただただ嬉しいのです。
かなり前のことですが、3月に50人規模のワークショップを開催したいとのメールが届きました。着信は2月初旬のことで準備期間が1か月しかありません。実際は無理でした。
ところが、依頼主は鎌倉の鶴岡八幡宮。
日本の伝統文化や年中行事にちなんだ活動を通して、子どもたち(小学生)に、祖先や自然に感謝する心を伝える「鶴の子会」の「春の親子教室」でした。
「うーん。なんとかしなくては!」
まったく時間がありません。翌週、葉山教室での打ち合わせを決定。
担当の権禰宜(男性)と二十代の「鶴の子会」の先生4人(女性)に、ご来園いただき、ワークショップで制作したいキット教材の種類や展示希望作品を決めました。
数日後に、女性たちと逗子海岸で落ち合って貝ひろいを実習。
全員、貝殼採集の経験がゼロで、サクラガイを見つけると女学生のようにはしゃいで大喜び!
数日後、八幡宮に教材の完成見本を届けると、その若い女性たちが凛とした巫女装束であらわれてびっくり仰天しました。巫女さんが先生を兼任していたのですね。
教材はイルカ、ウミガメ、イカなど海の生物を中心に7種類。展示は神輿、流鏑馬など70点余に決定。
打ち合わせの中で、今年も「神話」読み聞かせの舞台があり、テーマが「天岩戸」と判明。
ちなみに去年は「八岐大蛇」と聞いたとたん、内緒でサプライズを2つ用意して御馳走しよう!と思いついてしまったのです。
ところが教材などの準備にてこずって、残り一週間となって、ようやく「天岩戸」の制作に着手。
岩屋にかくれた天照大御神をはじめ神々は8体、ニワトリ3羽,榊、鏡、たき火などに手間がかかり,完成したのは、作品搬入三日前でした(間に合った!)。
もう一つのサプライズ「八岐大蛇」も約束したわけではありませんが、なんとかびっくりさせたい!
そこからは、徹夜、徹夜・・・。
襲いかかる8匹の大蛇、髪に櫛を挿した須佐之男命が、十束剣を振り回すシーンを、ギリギリで間に合わせました。
「春の親子教室」の前日、源平池前の鶴岡幼稚園に搬入し展示を完了。
当日、子どもたちは家族と一緒にワークショップの作品制作に没頭し、苦労しつつも完成させ、達成感を味わったようです。
制作の合間に展示作品を熱心に見学。午後は、二人の語り部や太鼓係による本格的な演出の「天岩戸」の読み聞かせを鑑賞しました。
源頼朝がひらいた鎌倉幕府の中枢、鶴岡八幡宮でのワークショップとミニ作品展示は得難い晴舞台でした。
そして、頼まれもしないサプライズを遮二無二につくった気分の中に、子供の頃から繰返し聞かされた「いざ鎌倉」の逸話が潜んでいたことに気づきました。
とある大雪の夕暮れ、上野国(群馬県)のあばら家に一夜の宿を求めた旅の僧。主人の貧しい武士は、なけなしの粟飯を出し、薪が尽きると、貴重な盆栽を折り、せめてもの“おもてなし”に、火にくべたという謡曲「鉢木」の一節です。
さて、神話の世界の魅力に目覚めた今、次は大国主命にチャレンジしようかと、園長は舌なめずりしているところです。 つづく
貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負
「天岩戸」 ~貝の配役~
★天岩戸:ツメタガイ/ヤツシロガイ/マガキ/アワビ
★手力男神★神々:アマオブネガイ/スズメガイ/ハツユキダカラ/スガイ/フトコロガイ ★受売命:カイコガイ/サクラガイ/スガイ/タモトガイ ★安河の川原:ホタテガイ
★桶:チャイロキヌタ/ホタテガイ
★ニワトリ:ハナマルユキ/ホトトギスガイ/サクラガイ/ムシエビ/アカウニ
★榊:ヒメトクサ/フジノハナガイ/アカウニ
★八咫鏡:ナミマガシワ
★たき火:パイプウニ/ベニガイ
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