「車に足をかけるサイ」
バンクシー・シリーズ 第6回
バンクシー・シリーズの第6回は「車に足をかけるサイ」(Rhino stepping on a car)です。
2024年8月5日から9日間連続で、バンクシーはロンドン各所で新作を発表しました。モチーフは動物。その8作目は路上に廃棄された”車に足をかけるサイ”のステンシルアートです。サイと車の交尾ではないかなど、愉快なコメントがネットを賑わせました。
バンクシーといえば、ヨルダン川の分離壁に描いた抵抗の壁画で強者(イスラエル)を批判し、弱者(パレスチナ)を擁護しましが、なぜロンドンで動物たちを描いたのでしょうか?
ご存知のように、イギリスはアニマルウェルフェア(動物福祉)の先進国。ペットや家畜や野生動物たちの、自由や幸せを守る法律がしっかり整備されている感があります。
しかし、バンクシーからすると、野生動物たちはまだまだ危機的状況。人間たちの強欲さや残酷さを許せなかったのではないでしょうか。
たとえば野生のシロサイやクロサイは、南アフリカのサバンナで、密猟者に怯えながらひっそり生息しています。
ツノ1本が2000万円で取引されるとあって、密猟者は法を破ってでも絶滅危惧種に指定されたサイを捕え、残酷にも顔の一部をえぐり取り根元からツノを奪っています。
そのツノは、遠く離れたアジアに密輸されます。いまだにサイの角には解熱や催淫効果があると信じられ、高価な漢方薬として取引されているのです。
バンクシーは、車の前部にツノに見立てた三角パイロンを乗せて、人間たちの欲望を厳しく叱責しているのですね。(園長の独断)
論より証拠。バンクシーは最終回(9作目)の舞台に、ロンドン動物園のシャッターを選択。網に閉じ込められたアシカや鳥、蝶などを、大きなゴリラが開放する構図としました。
園長の耳には、「強者(人間)の弱者(野生動物)への傲慢を許さない」という、バンクシーの厳しい叱咤が聞こえるのですが、考え過ぎでしょうか?
貝と園長の固い約束 「割らない」「塗らない」「削らない」
第6回「車に足をかけるサイ」―貝のキャストー
★サイ:コハクイモ/スガイ(ふた)/ヒメキリガイ/イソニナ/ヤクシマダカラ/シマメノウフネガイ ほか
★車:ウミウサギ/サザエ(ふた)/ボウシュウボラ(ふた) /ムラサキウニ/キサゴ ほか ★道路:マドガイ