『貝の火』
宮沢賢治シリーズ 第九回
今回は、宮沢賢治の短編童話『貝の火』(Gem Fire)です。
川で溺れたヒバリの子供を、命がけで助けた子ウサギ(主人公ホモイ)は、疲れてひどい熱病にかかってしまいます。ようやく回復したのは鈴蘭が青い実をつけた頃。ヒバリ親子が訪ねてきて、母親がお礼を述べ、王さまからの贈り物として"貝の火”を置いていきました。
それはまるく美しい宝珠で、中で赤い火がチラチラ燃えています。翌朝から、ウマもリスも意地悪キツネも、動物たちは皆、かけがえのない”貝の火”を持つホモイを大将として敬い恐れ、命令に従うようになります。でも、知らず知らずのうちに”おごり”にとらわれてしまったのでしょう。わずか6日後に"貝の火”は割れ、ホモイは視力を失い・・・。
賢治が亡くなった翌年(1934年)に出版されたこの作品は、さまざまに解釈されながら、古びることなく現在に読み継がれています。
制作中に困ったのは、”貝の火”の表現でした。とりあえず仕上げ、撮影したものの炎のイメージが出せません。一日中思案を重ね、ある手法を思いつき、ようやくシャッターを切ることができました。
個人的ですが、子供たちはもちろん、若き政治家や期待のアスリートたちにとって、必読の書ではないかとひそかに思っています。
2003年の開園時より、貝たちとは「割らない」「塗らない」「削らない」と固く約束して制作しています。園長
<貝の配役>
子ウサギ(ホモイ):キイロダカラ/スガイ/ホトトギスガイ/ウミナシジダカラ父ウサギ:ハツユキダカラ/イガイ/スガイ/オミナエシダカラ
母ウサギ:カイコガイ/サクラガイ/スガイ/マメニセザクラガイ/
ジュドウマク ラ
(手足共通)フトコロガイ/ムシボタル/ハナムシロ/ヒメカノコ
貝の火(宝珠):ゴシキカノコ
鈴蘭:ミドリイガイ/ヤカドツノガイ/ヒメカノコ/アカウニ
眼鏡:イシダタミ/ムラサキウニ 大地:ハマグリ
『貝の火』青空文庫https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1942_42611.html