「生みの親も、育ての親も」
<舞台裏>シリーズ No.19
かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。
このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。
第19回目は「生みの親も、育ての親も」です。
多くの人に惜しまれ別れを悲しまれながら、人気者のシャンシャンが中国に返還されたのは2023年2月のこと。
四川省の「中国ジャイアントパンダ保護研究センター」での生活に慣れない!との噂に、やきもきしていました。
センターで、観光客が日本語で話しかけたら、ガラス越しに近寄ってきて、しばらくその場を離れなかった!との新聞記事を読んで、気をもんでいました。
しかし、中国の飼育員たちの親身な対応で、最近では中国での生活にだいぶ慣れてきたようで、胸をなでおろしています。(園長ひと安心)
ところで、2017年生まれの彼女(シャンシャン)がまだ上野動物園で暮らしてい
たころ、母親シンシンが次の子供を妊娠しました。
そして2021年6月23日。深夜の上野動物園で、母親の出産の様子が撮影・公開されました。
総員9名の飼育員と獣医師がパンダ舎とモニター室の二手にわかれ、産室の様子を無言でじっと見守ります。
0時1分、母親のシンシンが破水し、0時3分に一頭目を出産。産室の柵の外から、飼育員がスマホのライトで確認しました。
大きな声で鳴き、床でバタつく新生児。体重120kg、巨体の母親がやさしくなめ、そっとくわえて右の前足で抱きました。
3時32分には二頭目を出産。飼育員は柵の間から、小型の熊手でそっと一頭をおさえて素早くとりあげ、別室の保育器へ移しました。赤ん坊は文字通り赤裸で元気いっぱい。体長は13.4cm、体重は124gの極小サイズでした。
パンダは高い確率(約45%)で双子を出産。しかし一頭しか育てないことが多く、一頭は保育器に入れて、人工乳で育てることもできます。
ところが上野動物園では、双子を入れ替えるという面倒な方法をえらびました。母親の乳房から直接、免疫をつくる成分を含んだ”初乳”を、二頭に飲ませたいという、スタッフの強い願いがあったからです。
スタッフが積極的に介在して、双子の両方に母乳を飲ませる試みが、24時間体制でスタート。しばらくすると「二頭とも活力や体重、便の状態から母乳を飲んでいて、健康状態は良好」と発表されました。日を追うごとに体が大きく、パンダらしい紋様も色濃くなり、性別もオスとメスと判明しました。
ちなみに、双子の父親のリーリー(力力)と 母親シンシン(真真)は、2005年・中国生まれ。
姉のシャンシャン(香香)は2017年6月12日東京生まれです。
記録動画をつぶさに見ると、かよわき生命に寄りそうシンシンとスタッフの信頼関係と、哺乳類ならではの”母性”が伝わってきました。
双子の名前は公募され、シャンシャンの弟(オス)はシャオシャオ(暁暁)、妹はレイレイ(蕾蕾)と名付けられました。
いつかは姉シャンシャンのように、中国に返還されるのでしょうが、しばらくは可愛い様子を楽しませてくれそうですね。 つづく
貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負
「双子パンダ」〜成分表〜
★頭・体:トミガイ ★手足:イガイ
★目・耳:ヒメイガイ ★鼻:マメニセザクラガイ
★尾:ムシボタル ★保育器:ヒオウギガイ+タイワンツキヒ