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「合縁奇縁」
<舞台裏>シリーズ No.10
かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。
第10回目は「合縁奇縁」です。
最初から動物にピッタリ合う貝があります。逆に、何にも使えないと諦めていたのに、思いがけずも、ふさわしい役が見つかることがあります。
動物と貝は、目には見えないご縁の糸で結ばれているのですね。
漁師の家で生まれ育ち、漁師に嫁いだ父方の祖母は、魚の食べ方がとてもきれいでした。
煮魚でも焼魚でも身を食べ小骨までしゃぶって、最後に白湯をそそいで美味しそうに飲む姿をはっきり覚えています。
飯碗の底にのこった白い骨は、まさに「ネコまたぎ」。
祖母宅から徒歩1分の砂浜には、マツバガイやウノアシなどの貝が、完全な形で打ちあがっています。
となりの砂利浜には、割れて原型をとどめない貝の破片が、小石の間にころがっています。サザエやホラガイなど大型貝の、芯の部分や厚い口縁部の破片で、誰もひろいません。
けれど、独特な形状が好きで、見つけるたびに採集。使うあてもなしに倉庫に放置していました。
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「かいのどうぶつえん」を開園してから数年後に「ティラノサウルス」や「ステゴサウルス」など、恐竜の制作を開始。四肢にカニモリガイやウミニナなど、スリムな巻貝を使用しました。恐竜といってもサイズも小さく華奢な感じでした。
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ところが、ミュージアムパークの企画展への参加が決定。学芸員から館のシンボル「松花江マンモス」の制作を打診され、
訪問して実物を見た瞬間、従来の貝では貫禄不足と直感しました。
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恐竜は約2億5千万年前に誕生し、「ジュラ紀」などを経て6600万年前に絶滅しました。
制作を打診されたマンモスは恐竜よりずっと後世の、3万4千年前に生存した、史上最大の陸生哺乳類(体長9㍍、体重約20㌧)。太くて逞しい脚は、倉庫で埋もれていた、あの貝にまかせようと即決しました。
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荒波で岩に叩きつけられ、砂利の粉砕機で噛み砕かれ、砂のヤスリで削られた大型巻貝の破片たち。白い肌で大小バラバラ、組み合わせに苦労しましたが、完成してわかったのは、本来の貝の姿を失っているからこそ、化石マンモスの姿に近づけたということでした。
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その経験をもとに制作した「アンキロサウルス」(体長9㍍、体重3.5㌧)は、北米大陸を、のそのそ歩き回っていた草食恐竜です。
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尾の先の強力なコブをハンマーのように振り回して、襲いかかる強敵の肉食恐竜と果敢に戦いました。
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恐竜の絶滅後に登場した新人類(20万年前)は、残念ながら巨大生物たちの姿を見ていません。
しかし、学者や研究者は化石化した巨大な歯や骨のかけら、足跡などから太古の雄姿を想像しリアルに再現・描写しています。
世界中の地中には、化石新発見のチャンスとロマンが埋もれています。そうだ、次は日本で発見された「フクイサウルス」をつくろう。つづく
貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負
「松花江マンモス」 ~貝の配役~
★頭 :イワガキ ★牙 :ヤカドツノガイ
★背骨 :キサゴ / アカウニ ★肋骨 :ヤカドツノガイ
★脚 :ヤツシロガイ(芯) ★爪 :チョウジガイ
★尾 :キタケノコガイ