「頼みの綱は想像力」
<舞台裏>シリーズ No.20
かいのどうぶつえん 園長です。
貝の動物の制作現場では、毎日さまざまなエピソードが生まれています。
このシリーズでは、舞台裏の失敗談や内緒話、奇想天外な空想や徹底した“こだわり”などをチョイスしてみました。
第20回目は「頼みの綱は想像力」です。
擬人化した動物を主人公に、教訓や風刺をたっぷり織りこんだイソップ寓話は、「かいのどうぶつえん」にとって、ぴったりなテーマです。
これまで数多くの場面を制作してきましたが、『オオカミ少年』もそのひとつ。羊飼いの少年が暇をもてあまし「オオカミがきた」と叫んで、嘘をくりかえすストーリーは、広く知られています。
イソップ寓話の制作は、毎回とても楽しいのですが、完成後に書く400字ほどの紹介文に、四苦八苦してきました。
理由のひとつは、時代感覚です。寓話がつくられたのは紀元前6世紀。いまから2500年も昔のことで、キリスト誕生よりずっと以前、日本では稲作が始まった弥生時代のことです。
華やかな古代ギリシャ時代の文献やエピソードは山ほどあり、何を書くか選択に悩むほどですが、どんな時代だったかという平凡な臨場感が、なかなか実感できないのです。
さらに厄介なのは、空間感覚です。イソップは奴隷身分で、サモス島で活躍しました。
地図をひらくと、アテネから約250km離れたエーゲ海東部で、狭い海峡の対岸は敵国ペルシャ(現トルコ)。北方には、シュリーマンが発掘したトロイ遺跡など、名所旧跡にあふれています。
しかし、今は世界遺産のサモス島のどんな場所で、イソップが語ったのか?
聴衆は何人くらいで、拍手や笑い声が聞こえたか?など、現場の空気感がわからないのです。
そして、奴隷から自由の身になったイソップはギリシャ各地をめぐり、寓話を語り続けます。当時の都市国家アテネは民主政で、生産は奴隷に依存、市民12万人、在留外人3万人、奴隷8万人という人口構成でした。
イソップはアテネに行ったのか?訪問地で、誰に語りかけ、どんな話術で聞き手の心をとらえ、どの話が好まれたのか?そして、なぜ殺されたのか?など、あれこれ気にかかることばかりです。
400話をこえる寓話を読むほどに、謎が深まるイソップの世界。
これからも、想像力の翼を大きく広げて、「イソップシリーズ」の充実にチャレンジします。つづく
貝は「割らない。塗らない。削らない」のスッピン勝負
イソップ寓話 『オオカミ少年』 〜成分表〜
★少年:タマガイ/イガイ/スガイ/ヒメキリガイダマシ/
マクラガイ/ヒメカノコ他
★ヒツジ:タマガイ/スガイ/コウサギガイ/ニセコザクラガイ/
キサゴ/ヒメカノコ他
★帽子:スズメガイ ★丘(牧場):ヒラサザエ
★杖:アカウニ ★地面:マドガイ/ホタテガイ
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