第2回ジェンダー単元予習@LAP9期
【課題図書を読んで】
課題図書:「現実はいつも対話から生まれるー社会構成主義入門」
ケネス・ガーゲン メアリー・ガーゲン 著
本書のテーマである社会構成主義は、大学時代の専攻の中で少し触れていたが、それと対話を結び付ける視点は初めてであったため、とても興味深かった。当時学んでいたことと、ここ数年取り組んできたことがここまでつながるとは思ってもいなかったので素直に驚いた。社会学について学ぶ中で、個人の状態の原因はその個人にのみあるわけではないという視点はもっていたので、比較的スムーズに読み進めることができた。そのうえで最も興味深かったのが、社会構成主義に対する批判を取り上げた部分だった。ニヒリズムの視点からの批判のように、社会構成主義は全ての真実をあきらめたり、あらゆるものを「絶対の真実ではない」と曖昧にしてしまうものではなく、あくまでそれがどの場面の、どの枠組みにおける、誰に対しての真実なのかを明らかにする視点を与えるものである、という部分が、自分にとって視界が開けたような気持ちになるものだった。ある課題の解決方法を考えるときに色々な視点から見つめるということは重要だが、そうすると時に絶対の答えはないように感じ、無力感を感じるときがある。しかしそういった際に様々な視点を考えるのは、あくまで解決のための道を開くためであり、解決はないと諦めるためのものではないということに改めて気づかされた。社会構成主義が真実なのではなく、あらゆる課題を考える際に重要な手段としてうまく「使う」という視点が必要であるように感じた。
【日本における男女間賃金格差問題について現状を把握し、自分なりの考察をしてみる】
〇OECDの男女間賃金格差 (Gender wage gap)から
日本の男女間賃金格差は、OECDの平均からほぼ倍ほどの差があった。また、グラフ上で最も格差の少ないベルギーと比較すると、20倍の差となっている。
〇連邦労働省とEEOCによるアメリカの男女間賃金格差の調査から
アメリカにおけるフルタイム労働者の賃金水準における男女間格差は少なくなりつつあるが、2022年時点でも15%程度の差がある。賃金水準の格差の中で、同じ女性であっても人種/民族間で差の大きさが異なっており、とりわけヒスパニック系女性との差が大きくなっている。
◯考えたこと
日本における賃金格差は少しずつ解消傾向にあるが、国際的にはOECDの平均にも至っていない。また、参考資料内の数値はあくまでフルタイム労働者における格差のため、その他の労働形態における格差はまだ見えていない部分があるように思われる。
男女間賃金格差を解消するための政策や支援は様々あるが、フルタイム労働へアクセスすること/被支援者がフルタイム労働にアクセスしたいと希望を持っていることを前提としているものも多い。全員がフルタイム労働ができるようになる、という状態が真に目指されなければいけない状態なのかという視点は必要であるように感じた。
さらに、昨今の物価上昇を鑑みると、男女間賃金格差を解消することが即ち男女間格差を解消することには繋がらないのではないかと感じた。
【男女間賃金格差問題について考えるとき、Aの問いで考える場合と、Bの問いで考える場合で、どのような違いが生まれるか/生まれないかについて考えてみる】
A「なぜ女性の賃金は男性より低いのか」
B「格差を説明するために、どのように優劣を可視化し、論理化しようとしてきたか」
AとBのそれぞれで問われた際に、Aの方は自分の認識している範囲や興味のあるトピックから説明するように思われ、Bの方は実際の歴史や過程を客観的に捉えようとするように思われた。
また、Bの問いは明確に「優劣」という言葉が使われているため、単なる違いの説明ではなく差別として問題を捉える視点が生まれるように感じた。それと同時に、どちらが劣っているかを示していないため、ある面においては男性側が劣っている部分もあるのではないかという視点を含んでいるように感じられた。