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「こうあるべき」の指導が私からストロークの楽しさを奪った話
「なんで決勝まで行けたのに、この打ち方を直さないとダメなの?」
小学生の私には、それがどうしても納得できませんでした。
当時の私は、予選リーグを突破するのが夢のまた夢で、悔しい思いを繰り返していました。そんなある日、練習にある先生が訪れました。その方は私のストロークを治してくれました。
その教えはシンプルで、小学生の私でもすぐに取り入れることができるものでした。たったワンポイントアドバイスでしたが、威力もコントロールも抜群に安定したのです。
そしてついに私は予選リーグを突破し、ソフトテニスを始めて半年で北海道2位という結果を手にしたのです!あの時の喜び、みんなに「すごいね」と言われた興奮は、今でも鮮明に覚えています。
しかし、成功の喜びも束の間。次の練習で、自分の先生から「前衛はストローク力は必要ない」と打ち方を矯正されました。その時の私は「これも上手くなるためなんだ」と思い、何の疑問も持たずに従いました。でも結果は、次の大会でまさかの1回戦負け。打ち方に自信をなくし、ストロークが大嫌いになりました。それ以降、私は「型にはめられる指導」の怖さを身をもって知ることになったのです。
そして、私のような思いをしてほしくないという思いから、今も指導を続けています。
この記事では、この経験を通して学んだ「固定概念が生徒に与える影響」と、指導者が柔軟な視点を持つことで生徒の可能性を引き出す方法をご紹介します。あなたの指導が、生徒の力を最大限に伸ばすきっかけになることを願っています。
1. 記憶に残るのは気持ちだけ。だから記録をつける
小学4年生の私は、外部の先生から教わったストロークのアドバイスで初めて予選を突破し、北海道2位という結果を出しました。けれど、何を教わったのか具体的には思い出せません。もし当時ノートをつけていたら、矯正された後でも自分の打ち方を取り戻せたかもしれません。
その経験をきっかけに「テニスノート」をつけるようになりました。ノートには練習内容だけでなく、その時の感情も残せます。字を見るだけで、自分がどんな気持ちだったのかがわかるのです。
アクション:生徒に練習ノートをつける習慣を勧め、気づいたことを書き出させてみましょう。
2. ベースは必要だけど、型にはめすぎない
私はストロークでポイントを重ね、前衛のポジションにつく前に勝負を決めるスタイルで北海道2位になりました。しかし、自分の先生に「前衛にストローク力は必要ない」と言われ、ロブだけを打つように矯正されてしまいました。その結果、次の大会では1回戦負けし、ストロークに苦手意識を持つようになったのです。基本を教えることは重要ですが、ある程度打てるようになったら生徒の得意な動きや個性を活かす指導が求められます。
アクション:練習時間の中で、生徒が自由に工夫できる時間を設けてみてください。
3. いろんな考えに触れる機会を与える
最初にストロークを教えてくれた外部の先生との出会いがなければ、私は北海道2位になることはできなかったかもしれません。一人の指導者だけではなく、さまざまな考え方に触れることは生徒にとって貴重な経験になります。YouTubeや他のスポーツから学べることもたくさんあります。
アクション:外部の講習会に参加したり、他スポーツの練習法を1つ取り入れてみましょう。
4. 違う考えも受け止める勇気を持つ
自分の指導方針と違う方法を生徒が試みている時に「いつも言っているのに」と頭ごなしに否定するのはNGです。私も、先生の指導に「本当にこれでいいの?」と思いつつ、反論する勇気がなく従ってしまいました。指導者が「違う方法もあるかもしれない」と受け入れることで、生徒に新しい可能性を与えられます。
アクション:他の指導者の意見や、生徒の提案を1つ試してみてください。
5. 生徒に気持ちを聞き、素直に話せる環境を作る
当時の私は「先生に言われたことが絶対」と思い、自分の気持ちを伝えることはありませんでした。でも、普段から素直に意見を伝えられる環境があれば、私は「これがやりにくい」と言えたかもしれません。日々のコミュニケーションが生徒の成長を支えます。
アクション:練習後に「今日の練習はどうだった?」と生徒に感想を聞いてみましょう。
結論
失敗や挫折を経験したからこそ、私は指導者として「生徒の個性を活かす指導」を大切にしています。この記事でご紹介した5つのポイントを参考に、あなたの指導にも取り入れてみてください。生徒の未来を大きく変えるきっかけになるはずです!
挫折と恩師から学んだことを次世代へ
ストロークを嫌いになった私は、それから「苦手をカバーして勝つためにはどうすればいいか」と考えるようになりました。守りを強化し、ロブやツイストなどの小技を磨きながら、戦術の大切さを学びました。その結果、中学2年生で全国優勝を果たすことができました。
また、私の打ち方を矯正した先生とは、今も良好な関係を築いています。あの時の矯正が「成功」ではなかったとしても、その後の努力と結果があったからこそ、今ではこの話も笑い話にできるのだと思います。
最後に私にストロークを教えてくれたのは「72分の1理論」で知られる安藤先生でした。小学生の時に出会い、実業団を引退した後もお世話になり続けた恩師です。安藤先生の本当にすごいところは、子どもでもすぐに直せるポイントを、わかりやすく伝える技術にあります。そのおかげで私は結果を出せただけでなく、テニスを楽しいと思えるようになりました。
私が指導するうえで一番大切にしているのは、この「わかるように伝える」ことです。安藤先生にいただいたギフトを、今度は私が生徒たちに届けることで、少しでも恩返しができたら幸いです。