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浜益の果樹園で、すぐりのお手伝い

先日、浜益の果樹園ですぐりのお手伝いをしました。
「すぐり」って言葉、聞いたことありますか?
りんごや梨などの果実を間引きしていくことをすぐりと言います。

「摘果」という言い方が一般的ですが、浜益のみなさんは「すぐり」と呼んでいました。他の地域では「実すぐり」などとも呼ばれているようです。
(摘果について詳しく知りたい方は、ぜひ『りんご 摘果』などのキーワードで検索してみてください)

おそらく『選りすぐり』(良いものの中からさらに選び抜かれたもの)が短くなって「すぐり」になったのではないかと思います。
選りすぐりのりんごや梨を大きく育てるために、この剪定ばさみを使って他の実を取っていきます。

まずは安定した地面を選んで、しっかりと脚立を立てます。
枝の先端から、もしくは幹の方から順ぐりと実を取っていきます。

最初はおそるおそる大きな実を選んで剪定ばさみを入れます・・・
栄養をたっぷりと吸って果実が大きくなっていく姿を想像しながら、選りすぐりの実だけ残していきます。

最初はどれを取って良いのか一個一個の実を見て悩んでいましたが、枝全体を見ながらおいしそうな果実がなっているのを想像していたら少しずつスムーズに作業できるようになってきました。

すぐりに没頭してきて時間感覚がなくなってきた頃に、ポタポタと雨が降ってきました。
脚立がすべったりして危ないので、雨が降ってきたら作業は中断。ちょっと早い休憩時間となりました。

・・・

明治の時代に山小屋として建てられた渋くてカッコいいお家が休憩所です。ここは直売所も兼ねています。

出面さんたちとお茶を飲んだり、お菓子を食べたりしながら、楽しく談話タイム。浜益のみなさんは、とっても温かい方ばかりに感じます。

浜益では季節に応じて仕事をいくつも掛け持ちする人のことを「出面(でめん)さん」と呼びます。時には果樹園、時には水産加工、時には田植えといったように、業種を超えてお手伝いしにいくのです。

談話中に出面さんと、こんなお話をしました。
「普段食べている果物が、こんな風にたくさんの中からひとつ選ばれて大切に育てられたものだって、お家で食べてるだけじゃ気がつかないよね。果樹園で働いてみて初めて、こんなに時間をかけて育てられていることに気がついたの。だからとても感謝して食べるようになったわ。」

お話したり、1日のすぐり作業を通じて、実際に育っていく姿を見てから食べることはとても大切な経験になるのだなと感じました。

ネットワーキング浜益第12号(1990年2月発行)「聞き書き 浜益に生きる」のコーナーに、昔のリンゴ園についての記事が残っています。
「昔は、若いもの三人も四人もデメン頼んで、荒れ地をおこして、リンゴつけたのさ。」「草刈るのにも一日いっぱいだったし、全部みんな手で堀ったもんですよ。」と、機械がない時代はやはり畑を整備するだけでも相当な作業量が必要だったことがよくわかります。
果樹産業は自然との闘いでもあります。記事にも「洞爺丸台風」の時が一番ひどかったとの記載が。「洞爺丸台風」とは、1954年9月に北海道を中心に大きな被害を出した台風です。
北海道各地で30m/s以上の暴風が吹き、「洞爺丸」という青函連絡船が遭難するなど、とにかく暴風による被害が大きかったようです。記事によると1954年は、リンゴの実の成りがとても良かったようですが、その洞爺丸台風で全滅。木も根っこごと倒されてしまったそう。
そこから、リンゴを育てる農家さんも減ってしまったようです。


昔から、様々なことを乗り越えながら大切に守られてきた、果樹産業。このお手伝いを通して、出面さんの思いや、浜益の果樹産業に関われることの嬉しさも感じました。

雨が強くなってきてしまったので、残念ながら今日の作業は終わりになってしまいました。天気に応じて仕事をする感覚は、都会にいたら中々味わえないものです。
次の日は晴れ予報。太陽の下ですぐり作業をするのが楽しみです。


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