画像処理検定エキスパート ギリギリ合格体験記(2024年度 前期)
はじめに
2024年7月14日にCG-ART主催の画像処理検定エキスパートを受験し、合格しました。
全41問中、29問正解(70.7%)でした。
ボーダが70%であるならば、ギリギリ合格でした。
この記事では以下の内容にて紹介します。
なぜ画像処理エンジニアが改めて画像処理の試験を受けようと考えたか
どのように試験に向けて対策を行ったか
画像処理検定エキスパートで学べたこと
試験を受けた目的
目的1:画作りから画像処理までの一連の知識を抑えたかった
撮像による画作り・画像化から、画像処理までの一連の技術を学びたかったのが一番の理由です。
今までは既に画像化された状況から、画像処理アルゴリズムを考える場面が大半でした。
撮像条件や照明環境を考えることは範疇外でした。 特に、近年はAI向けの公開画像データセットが公開されていたりと、画像ありきで考えることがほとんどでした。
一方、直近は画像処理アプリケーションを0ベースで構築する場面が増えてきました。
要件を立てたうえで、撮像環境からアルゴリズムまでを0ベースで考える必要があります。
特に撮像系の知識が不足しており、撮像系と後段の検知系との密接な関係性を肌で感じたことが動機でした。
(アプリケーションによっては、アルゴリズムよりも撮像系のほうがボトルネックとなりうる)
目的2:画像系AIが高度化していく中で、使いこなしや差別化技術のための前処理・後処理の習得
近年はVision Transformer等の検知系AIから、Stable Diffusion等の生成系AIまで、画像処理技術において、AIが広く活用されています。
一方で、これら画像系AIへの入力や出力に対して、また学習や評価のプロセスにおいて、基本的な画像処理系の知識は重要と考えています。
基本的な画像処理技術を抑えることが、AIの使いこなしや差別化技術のために重要と考えています。
以下、画像系AIを用いる際の基本的な画像処理技術の活用一例です。
AIに有利な入力画像にするための前処理(e.g. 正規化、ノイズ除去、事前フィルタリング)
AIでの特徴抽出を汎用的なRGBやグレースケール以外の特徴空間にて行うための前処理
AIの学習・評価に必要なデータセットのData Augmentationへの活用
AIの出力に対して、定量的な出力・評価を担保するための後処理
AIの出力を後段のアプリケーションに接続するための後処理
目的3:画像系スキルの定量化
画像処理・画像認識の技術を飯の種にしていくため、スキルの定量化をしたいと考えました。
特定のドメインの技術者のスキルは定量化することが難しい一方、画像処理系においてはこの検定の存在があることを知ったので、挑戦してみることにしました。
試験に向けて
試験概要
試験概要は公式HPにて確認することができます。
ベーシックとエキスパートがありますが、難易度が高い方のエキスパートを選択しました。
合格率は2023年度[後期]にて29.0%と、そこまで簡単な試験ではないようです。
試験対策
What:対策に使った資料
公式の試験対策本
公式HP掲載の過去問2回分
公式の教科書と試験対策本は価格が高いです。
公式の教科書の「2章 ディジタル画像の撮影」と「16章 光学的解析」では、マシンビジョンにとって重要なカメラモデルから画像化までの撮像系、光学的考えを抑えることができました。
また、appendex aの「画像処理の歴史」では実応用での技術変遷をたどることができ、非常に興味深かったです。
How:対策方法
公式の教科書は画像処理の基礎を学ぶ上での研究室の推奨本ということで、学生時代に一度目を通していました。
その際に自分のノートに書き写していた重要な箇所の振り返りだけを行いました。 試験までに一度目を通しておくのが良いと思います。
基本的には公式の試験対策本を繰り返し解くことで、試験対策を行いました。
試験対策本の回答がすべて正解するまで繰り返しました。
最後に公式HP掲載の過去問2回分を仕上げとして解きました。
解説が付属していなく、振り返りがやり辛いので、ある程度慣れてきた段階で使うことをおすすめします。
When:対策期間
試験4週間前ぐらいに検定への申し込みを行い、試験勉強を開始しました。
試験勉強は平日は1日30分程度、休日は3時間程度行いました。
試験4週間前:対策本の1周目、この時点では合格ボーダーラインの70%あたりをウロウロする
試験2週間前:対策本の2周目、間違えた・怪しいところを重点的に復習
試験前日:間違えたところの見直しと、公式HP掲載の過去問2回分(正解率80%あたりを出せるように)
試験当日
エキスパートの試験は午後から実施されました。
ご飯を食べると眠くなるのと、14時20分には試験が終わるため、昼食を抜いて受験しました。
指定されている持ち物は鉛筆・消しゴム・時計でした。
生憎、鉛筆は持ち合わせていなかったため、シャープペンシルで代用しました。
また、計算機がついていない腕時計を持っていなかったことと、過去問での経験にて時間は足りると判断し、時計無しで挑みました(良くない)
試験時間は35分経過時点と、残り10分時点にて、試験監督よりアナウンスがありました。
残り10分時点での呼びかけぐらいで、一通り回答することができ、残り時間は見直しに回すことができました。
試験内容に関しては、過去問よりも難しかったと感じました。
LoGフィルタの脳内イメージが抜けてしまい、係数部分の設定を誤ってしまったり。
バンドパスフィルタを2回適用する問題に関しては、実用面でのどのような用途を想定していたのかに関して、出題意図が読み切れていないものがありました。
難易度は基本情報試験と応用情報技術者の間ぐらいように感じました。(画像処理の専門という前提はありますが)
試験結果
結果
試験実施日の2日後に解答速報を確認しました。
この時点の自己採点では、正答率が70%を超えていたので、一旦大丈夫かなと考えました。
約4週間後にマイページに合否結果が開示され、無事合格でした。
試験から約2ヶ月後に以下のような合否結果通知書が届きました。
全41問中、29問正解(70.7%)でした。
合格ボーダが70%であるならば、ギリギリでした。
CG検定公式の2024年度前期の合格率では、503名の受験者数で21.0%の合格率でした。
例年、合格率は30%台のイメージであったので、それなりに難しい回であったのかなと思いました。
考察
間違っていた問題を中心に考察します。
全体
大半の問題は、過去問に近しい内容からの出題でした。
一方で、「図形のrpmを求める」や「2回フィルタ適用」など、あまり過去問では見られないものもありました。
各種計算式や定義式を答えさせる設問が複数あり、画像処理の概要だけでなく、数式まで抑えておくことが大事だと思います。
全体的には、例年の過去問に比べて難しかった印象です。
第1問:知的財産権
知的財産権は2/4問誤っており、知的財産権への詰めの甘さがでました。
著作隣接権に関して、レコードに対する権利が適用される対象者を誤って認識していました。
著作人格権では、具体的にどのような権利が発生するかまでを抑えられていませんでした。
こちらは細かい事項まで問いている設問だと思いました。
第2問:幾何学的変換
合成変換の等価計算ができないものに関して、縮小→拡大の順で行った際に、情報が復元できない観点から、拡大・縮小を選択するのが適切でした。
第3問:ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間
動画のフレームレートと図形が静止している条件から、図形の回転数を求める設問でした。
過去問では同様の問題は見たことがなく、「rpm」の単位の扱いを誤り、間違ってしまいました。 (rpm、rotations per minute、1分の間での回転数)
第4問:ディジタル画像の撮影と画像の性質・色空間
こちらは全問正解でした。
色空間に関する問題であり、教科書通りの内容でした。
第5問:画素ごとの濃淡変換と領域に基づく濃淡変換
LoG(Laplacian of Gaussian)フィルタの係数の式を間違えました。
フィルタの係数項は勉強対象から外し、かつ知識からも漏れていたため、勉強不足で間違いました。
第6問:2値画像処理と領域処理
2値化処理後の画像を選択する問題を間違えました。
冷静に考えればわかる問題であり、単純なミスでした。
取りこぼしすべきではない問題でした。
第7問:周波数領域におけるフィルタリングと画像の復元・生成
バンドパスフィルタを2回適用した後の画像を選択する問題を間違えました。
最初は正答を選んでいたものの、単純すぎる問題と深読みをした結果、見直しでの修正で間違ってしまいました。
フィルタを複数回適用する問題は、過去問ではそこまで多くなかった印象です。
第8問:パターン・図形・特徴の検出とマッチング、パターン認識
知的財産権と並んで、正答率が2/4と悪かった設問です。
(画像認識を専門としているにも関わらず...)
アクティブ探索法でのテンプレートマッチングの問題を間違えました。
集合積の考えでシンプルに考えると、わかる問題でした。
ハフ変換の可視化の問題も間違えました。
第9問:動画像処理、画像からの3次元復元、光学的解析、画像符号化
フォンモデルの問題を間違えました。
反射モデルを直接的に考える機械が少なく、知見不足で間違えました。
今回の勉強目的である光学系の把握という観点では、正答すべき問題でした。
第10問:動画像処理、画像からの3次元復元、光学的解析、画像符号化
こちらは全問正解でした。
画像符号化や情報理論に関わる領域であったため、知見がありました。
まとめ
画像処理エンジニア検定 エキスパートを受験した際の内容をまとめました。
当初の3つの目標に対しては、
目的1:画作りから画像処理までの一連の知識を抑えたかった
→ 目的達成:試験勉強を通して、一連の技術は抑えることができた。特に画像化する前の光学系目的2:画像系AIが高度化していく中で、使いこなしや差別化技術のための前処理・後処理の習得
→ 目的達成?:基礎知識は抑えることはできたが、実務に直接役立つ目新しい知見の獲得は少なかった目的3:画像系スキルの定量化
→ 目的達成?:今後の「画像処理エンジニア検定 エキスパート」の普及に期待、本記事が助けになれば
試験結果としては、画像処理エンジニアとしては、ギリギリで自慢すべき内容ではなかったと思います。
2ヶ月前から、きちんと試験勉強をすべきだったと思います。
この記事が画像処理エンジニア検定を受験される方や、資格の普及に役立つと幸いです。
参考文献
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