2022年 11月5日 奈良クラブ 1-0 ヴィアティン三重 感想
はじめに、この試合の感想を改めてnoteへ書いた理由は、当初YouTubeのJFL公式チャンネルのこの試合のライブ配信及びアーカイブ動画がところどころでカクつきがあり、私がTwitter上で濱田社長へ改善の要望をし、数日後にキレイな動画を再アップして頂けたので、その時からこの試合の感想をnoteへ書きたいと思っていたが、なかなか書くことができずようやく今に至ってしまったからである。ここで、濱田社長並びにJFL公式チャンネル様へ改めてお礼を申し上げたい。
さて、この試合を振り返るにあたって、一番の出来事といえばもちろん、ホームのロートFでヴィアティン三重に勝ってJ3昇格を決めたこと他ならない。その価値ある決勝ゴールを決めたのは…
(以下敬称略)
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
山本の鮮やかなゴールだった。そして、浅川の昇格への執念ともいえる足を投げ出してのパスカットには本当に心打たれた。劇的な勝利とJ昇格の決定に私もかなり興奮して喜んだが、改めてこの試合を振り返ってみたとき、どういった内容であったかをはっきりと覚えていないことに気がついた。そこで、奈良クラブにとってこのメモリアルなゲームをいつでも思い出せるよう、このnoteで振り返ってみたい。
それでは、この試合の両チームのスターティングメンバーと基本フォーメーションについて。
奈良クラブの基本フォーメーションは、2021シーズンからフリアン監督が就任して以来ずっと使用しているスペイン式の4−3−3。(4141、4231もあり)攻撃時は、CHダウン3、SB左右の横ヅレ、右IH下りての2ボランチ、WG CFレイオフ、など相手の布陣を見てエコノメソッドを活かし様々なポジショナルプレーを駆使しながらビルドアップをしていく。守備時は、左IHが前線へ上がってCFと2トップとなり、両WGが下がっての4−4−2。前線から相手CBへアグレッシブにプレッシングを掛け続けるというよりも、全体的にはミドル・サードで待ち構えてブロックを組み、前線は相手ボランチの脇から効率的に最終ラインをプレッシングしパスコースを限定させ、2、3列目が数的優位を保って相手をサイドへ囲い込んでボールを奪っていく。そのため、相手に押し込まれると最終ラインは下がってしまう傾向が多いのだが、2022シーズンは最終ラインからCFへのロングフィードのカウンター攻撃でゴールを量産し、勝点を積み上げていった。
一方、三重の基本フォーメーションは4−2−3−1(442もあり)攻撃時は、2ボランチどちらかが上下し、両SBが上がってSTがレイオフをするなどして丁寧に後方からビルドアップしていくのが特徴だ。この際、GKからロングキックを蹴ることはあまり見せない。守備時は、STが前線へ上がってCFと2トップとなり4−4−2。時間帯によっては前線2人+左右SH+ボランチ1人の計5人が連動して相手最終ライン+GKへアグレッシブにプレッシングを仕掛けていくこともある。しかし、それ以外は基本的にミドル・サードで待ち構えてブロックを組むことが多い。
それでは、次にこの試合のスタッツを見ていこう。
このように、前半はシュート数が奈良4本、三重1本となっており、お互い慎重にゲームを進めていった。しかし、後半は奈良7本、三重5本となっており、お互い積極的にゴールを目指して攻撃していったことがよく分かる。とはいえ、1試合を通して見てみれば奈良11本、三重6本と奈良の方が上回っている。これは、ここでは精神論になってしまうが前回アウェイ三重戦の手痛い後半AT弾でドローとなってしまった悔しい気持ちと、ホームのロートFでJ昇格を決めたいという強いメンタリティが三重より勝っていたからではないだろうか。
それでは、この試合をもっと具体的に見てみよう。前述した通りスタッツでは奈良が三重より上回ったとしたが、決定機があったのはむしろ三重の方であった。
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
このように、三重がこの後半59分と76分の2回の決定的なチャンスがあった。もしここで三重が先にゴールをしていれば、おそらくこの試合は三重が勝利していたに違いない。なぜならば、この2回の決定機はいずれも後方から速攻を仕掛けてバイタルエリアで三重が奈良の守備陣に対して3対3、3対2という圧倒的に有利な状況を自らの意思で作り出し、奈良を完全に崩し切っていたからだ。そして、これは後述するが、三重はこの2回の決定機以外でも幾つもの速攻を見せている。それだけに、ここでも三重の決定力不足の課題が浮き彫りになってしまった。
それでは、次に奈良について見てみよう。これも前述した通りこれまで奈良といえば、試合を通じて守備に重心を置く傾向が強く最終ラインはいつも下がっている印象を持ってしまっていた。しかし、この試合をもう一度冷静になって振り返ってみると、その印象は全く違っていたことに驚いた。この試合では、奈良が積極的に最終ラインを上げて三重陣内まで押し込んでいる時間帯がとても多かった。その押し込むきっかけを作っていたのは、最終ラインからのロングフィードだった。三重が8分、25分、47分、65分、その他で見せたようなハイプレスを多く仕掛けてきた為に、三重の最終ラインの裏の空いたスペースへ向けて、主に右CB伊勢の正確なロングキックとそのボールを収めるCF浅川の認知判断能力の高いポストプレーがとても素晴らしかった。
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
このように、昨期JFL得点王ばかりが目立つCF浅川だが、ボディーコンタクトに決して優れているとはいえなくても、認知判断能力の高いポストプレーで、ここで挙げた以外でも数多く押し込む攻撃のきっかけを見せてくれていた。そのなかでも、前半39分、浅川が最終ラインへ戻さず金子昌へ積極的にスルーパスを通したプレーがとても素晴らしかった。このプレーといい決勝ゴールのアシストといい浅川のプレーの凄さを随所に感じられた試合であった。
次に、最終ラインを上げた奈良の攻撃を幾つか見てみる。
YouTube JFL公式チャンス クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
このように、奈良が最終ラインを上げることによって全体が三重陣内へ押し込む時間帯が増え、後半49分では、本来右IHの片岡が逆サイドへ回り込める時間が生まれ、左サイドの局面で数的優位な状況を作り出し、この素晴らしいターンからのクロスへ繋がった。すると、後半52分では、三重GKからのビルドアップに対しても、左SB加藤が前方へ積極的にプレッシングを仕掛けることが出来て素晴らしいインターセプトへと繋がった。確かに、押し込む時間帯が多いということは、それだけ三重からカウンターを受けてしまうことにはなるのだが、この積極的な姿勢がチーム全体で生まれていたからこそ、後半70分前後で三重へ一時的にペースを握られてはいたものの、後半86分の左IH山本の決勝ゴールへと繋がっていったのは言うまでもない。
それでは次に、この試合の奈良の攻撃のなかで、一番私が素晴らしいと思った連携を挙げたい。
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
このように、最後のCF浅川の股抜きシュートが決まっていれば最高ではあったが、左IH山本のワンタッチではないものの、効果的なレイオフによってCH森田へフリーでパスを通せることができ、そこから、左WG長島もフリーでボールを受けられた。ここで三重の前線6人の背後を一気に突けたことがとても素晴らしかった。
それでは、これまで述べたことをまとめてみると、三重がハイプレスを仕掛けたときはロングフィード、ミドル・サードでブロックを組んだときは後方からビルドアップと、三重から決定的なカウンターを受けるリスクも当然ながら負うことにはなるが、どんな状況であってもこの試合の奈良は三重陣内へ積極的に前へ押し込んでいく迫力があった。そして、押し込む時間帯が多くなることで試合の主導権を握り、奈良のペースで試合を進めていく。途中、三重のブロックにパスカットされてもCH可児が回収して最後はシュートで終える。これを何度も繰り返した為に、先述したスタッツの通りシュート数で三重を上回ることが出来たのであろう。そこへ、勝利のメンタリティがシンクロし、86分の決勝ゴールが決まって勝利した。この試合は昨期JFLを優勝した象徴的な試合であったと改めて感じた。
それでは最後に、三重のゴールこそは生まれなかったが、この試合でも後方から素晴らしいビルドアップを見せてくれていたのでここで幾つか挙げてみたい。
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
YouTube JFL公式チャンネル クリップ参照
このように、ボランチ8番のボールの受ける位置、左SH5番の逆サイドへの積極的な動き出し、ST22番の頭脳的なレイオフからビルドアップの手助けをするなど、後方から素早い速攻を何度も見せていたのが、とても好印象だった。ただし、最後のクロスやシュートのところで奈良の守備陣が粘り強く守ってクリーンシートで抑えたことは付け加えておく。
以上