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音楽講師の「所得」

音楽家の皆さんこんにちは。
「持続化給付金」の申請開始から今日で14日目となりました。
私も申請しましたが、初日申請にもかかわらずまだ着金していません。

ようやく振込手続きも本格化してきたようで、週明けからは人員も増員されるとのことなので、週明けに届くことを期待しながらこの記事をまとめているところです。

さて、今日は「所得」について。
「事業所得」であることが給付要件のひとつとなっている持続化給付金ですが、その支給条件から「委任契約なのに給与所得の私は?」と疑問に思っている方が多く見受けられます。
そこで、今日の記事では音楽講師がどんな「所得」を得ているのかについて考察していきます。

契約書から紐解く「所得の種類」

確定申告をテーマにする際に詳しく書いていきますが、国税庁によると所得の種類は10種類に区分することができます。
そのなかで「給与所得」は勤務先から受ける「給料・賞与」などの所得を指し、「事業所得」はさまざまな「事業」から生じる所得を指します。

給与所得を得ている人たちの契約形態は例外なく雇用契約です。
雇用契約とは、一方が指揮・命令に従って仕事をすることを約束し、相手がその労務について報酬(給与)を支払うことを約束することによって成立する契約のことを指します。

音楽教室と講師の間で交わされる契約書は様々ですが、その多くは「業務委託契約」または「委任契約」と書かれてあり、講師は音楽教室に「音楽教育・音楽指導業務」を委託(委任)されるといった内容の契約です。

これらは業務の遂行を目的とし、業務を行うことで報酬が発生する契約形態ですが、少なくとも雇用契約ではない以上、この契約形態で得られる所得は「給与所得」ではありません。

これらの契約によって得られた報酬は、その報酬が働き方としてメインの収入源であれば「事業所得」として、サブ…副収入的な要素が強いのであれば「雑所得」として扱われることになります。

ちなみに「雑所得」とは所得の10種類のうち、いわゆる「その他」にあたるもので、それがメインの収入になるという考え方はありません。
収入額による違いではなく「職業」によって判別しても大きく差し支えはないでしょう。

よく事例に出されるのが「文筆業を営む人以外が原稿料を受け取った場合には雑所得として計上する」です。
例えば音楽家が「演奏」でいただく報酬を「雑所得」というのは、皆さんに対してちょっと失礼ですよね。
「あなたは音楽家じゃないでしょ?」と言われているようなものです。

そしてこれは「収入額」だけで判断するものではないということも付け加えておきます。
あなたが自己紹介するときに「音楽講師の〜」「音楽家の〜」と言うのであれば、それがメインの収入ですからその所得は「事業所得」とすべきです。

契約の実態を整理して浮かぶ「疑念」

委託(委任)講師の所得は「事業所得」であることが分かりました。
「あれ?」と疑念が浮かぶ方、あなたは勘が鋭い。

会社から配布された「源泉徴収票」を手元にお持ちの方、そして確定申告をされていない方が多くいらっしゃるとTwitterのやり取りで伺いました。
この源泉徴収票は「法定調書」のひとつで、給与等の支払をする者(雇用主)が、被雇用者の支払額及び源泉徴収した所得税額を証明するものです。

「給与」の支払額が書かれているということは、源泉徴収票は雇用契約を結んだ労働者がもらうべきものです。
皆さんは先ほどの「所得の種類」から判断すると「給与」の支給対象者ではありませんね、業務委託契約・委任契約ですから。

間違っているのに気づいてもらえない人

これ、断言しますが実は会社の「完全な間違い」です。
給与は「雇用契約における報酬」ですから、業務委託(委任)契約における報酬は「給与」として支払われることはありません。

つまり源泉徴収票を発行するなんてことはありえないんです。
事業所得を得ている皆さんは、本来「支払調書」をもらうべきなんです。

支払調書は源泉徴収票と同様に「法定調書」のひとつで、法人や個人事業主に対し「誰にどんな内容で年間いくら支払ったか」を税務署に報告するための書類ですが、確定申告をする際に支払調書を提出する義務はありません

余談ですが、税務署は電子的に給与所得や控除額、税額などのデータを「マイナンバー制度」で集約できるようになりましたので、2019年4月からは確定申告に源泉徴収票の添付も必要なくなりました。

さて、ちょっと厄介な話しになってきました。
今の皆さんの状況を税務署の立場からみると「給与所得として報告されている人」という、いわば「間違っているのに気づいてもらえない」状況です。

市区町村には会社から「給与支払報告書」が提出されているでしょうから、お役所だって同じです。
税務署も市区町村も、あなたと会社との契約書なんて見ていませんから、それが違っているとは微塵も思っていません、これが現状です。

納得のいかない方は、税理士さんにぜひ契約書をみせながら聞いてみてください。源泉徴収票じゃダメですよ、契約書です。
この際ですから税務署で税務相談するのもひとつ、国税調査官を始め「税務のプロ」が優しく丁寧に教えてくれます。

なお、会社に源泉徴収されてしまった分についてですが「税金の前払い」であることに変わりはありませんから、確定申告時に「既に納めている税金」として申告することで、もし多く払いすぎているようなことがであればちゃんと還付されます。

事業主として堂々と「持続化給付金」を申請しよう

こうして「間違い」がここまで放置され、そうこうしているうちにコロナウイルス感染症の感染拡大によって皆さんは仕事の機会を失いました。
この「失業状態」に対し、いくつかの支援策があることは先日の記事でまとめたとおりです。

本来、事業所得を得ているはずの皆さんは「持続化給付金」の対象になるはずなのに、会社が給与所得として扱ってしまっているがために「給与所得をもらっている人は給付金もらえないでしょ」と誤解されています。

もし今の状態が間違っていると考えるのであれば「事業所得者」として確定申告をすべきです。
そして自信をもって堂々と持続化給付金を受給するべきで、それは「プロの音楽家」「プロの音楽講師」として果たすべき義務ではないでしょうか。

もちろん現在は給与所得控除を受けていらっしゃるのであれば、過去の分を含めて修正する必要が出てきます。
納税額が増えるケースがほとんどでしょうし、社会保険料などの計算も変わってくるので手間がかからないのかというとそうではありませんし、なによりも確定申告のことを知る必要があります。

現状をそのままで「良い」とするのか、それともこの機会に持続化給付金を受給すると同時に「正しい」形に戻すのか。

もうひとつ誤解のないように、この記事は「自分は労働者だと思う人」を応援しないものではありません。
契約実態が「雇用契約である」と捉える方のなかには、実際に労働組合(ユニオン)を設立して行動される方もいらっしゃるようですし、被雇用者としてその主張や考えを会社に訴えていくのもひとつの手段だと思います。

判断するのはもちろん皆さんですから、まずは自分にとってどのような形態が適切なのかを検討してみてください。

少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございます。
次回は「持続化給付金」がテーマでしょうか…その前に「確定申告」かな?
持続化給付金を受給するには必要になりますが、フリーランスに向けた新制度が出るとの噂もありますね。

今週発表の予定が来週にズレたとのことなので、動きを見ながらテーマを検討していきますね。

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