Pro Tools以降の音質
CDが売れなくなった原因は様々ですが、個人的には「音質」もその一つではないかと思っています。プロツールスが業界の標準となり、音源もプラグインもあらかた定番のソフトが選ばれる事で、「完パケ2mixの答え」がいつのまにか出されてしまったように思います。その「完パケ2mixの答え」とは、100トラック以上のパラデータがEQ技術により周波数帯を交通整理され、歌のピッチとリズムは強制的に修正され、オートメーションで綿密にボリュームカーブが書かれ、ただでさえ空間を埋め尽くされた挙句、さらに隙間をつぶすような音圧上げマスタリングがされたものです。これらの音楽はどれも、似たような音質なのです。ソフトが同じで、完成形の答えが出てしまったらそうなるでしょう。制作者は当然、細部に渡るまで完璧を求めます。ですが、その完璧とされて製品となった音楽の音質が全部金太郎飴のように同じ。だから、飽きる。そもそも、そうした音楽の音質が完璧にはほど遠い(ここから個人的感想に入ります)。やっぱりプラグインソフトで空間を表現するのは限界がある。左右の定位はPANである程度なんとか出来ても、奥行き。こればっかりは実際に録音した音にかなわない。コンプと空間系エフェクトで遠い感じにしても、実際の奥行き感と違うのは、人間の耳は左右二つから対象物への距離を測り、部屋の反射音と合わせて奥行きを感じるからです。シミュレートしてもそれはやはり紛いもの。とにかく、実際に音を出して空気に触れたものと、プラグインを通しただけで一切空気に触れさせなかった音源はまるで違います。デスクトップの中だけで完結した音、音質はプロツール以前の音楽の音質とまるで違うんです。でも、これって懐古趣味の戯言なのでしょう。音質だけでなく、昔のジャケット写真の質感の方が味があると思ってしまうから、きっとそうです。
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