読書完走#279『コモンの再生』内田樹 2020
インタビュー形式でこの2年間ほどの内田さんの言葉を形にした本書、話題は公共、政治、国際関係から日常の些事まで多岐にわたるが、一番言いたかった「コモンの再生」を書名にしたという。
国民主権や基本的人権や平和主義を否定する政治家を市民がなぜ長期にわたり熱狂的に支持したのか。
安倍晋三が数々の醜聞にまみれながらも8年近く長期政権を維持できたのは、我々国民の「うんざりする能力」の劣化に加え、彼が人間の「性根の卑しさ」を熟知しているからだと内田氏は看破する。
安倍は民主主義を破壊したのではなく、むしろそれを巧妙に活用したとも言う。彼ほど民主主義の恩恵をこうむり、その操縦に長けた政治家はいないと。えらい褒めようだが、そういう見方もあるのか。考えさせられる。
桜を見る会問題もトカゲの尻尾切りで終わるのだろう。法的な罪(crime)は問えなくても、コモンを破壊した原罪(sin)が消えることはない。