読書完走#96『立憲的改憲』山尾志桜里 2018
やらないと見せかけていた改憲が国民投票の俎上に乗りそうな今年の憲法記念日に、改憲か護憲かという不毛な二者択一の議論に一石を投じる一冊を読み終えた。少し時間をおいて書く。
7人の専門家との対談で山尾さんの主張する立憲的改憲案は論理的かつ明快。現行9条を残し、条文を追加して専守防衛・個別的自衛権の枠内で戦力の保有・行使を明示的に承認し、同時に戦力統制規範を憲法に書き込むことで戦力の濫用を抑えるというのが主旨。
2015年の安保法制で現行9条が権力を縛る力を失ってしまった上に破茶滅茶な加憲案が提起されようとしている今、改憲へのアレルギーを乗り越え平和憲法の理念を守るための議論を尽くさない限り、平和国家は画餅でしかない。
山尾志桜里(現・菅野志桜里)は名前にある通り"志"の人である。日本の将来のために、自らの政治生命を賭して立憲的改憲を提案する真摯な姿勢は、改憲という"偉業"を成し遂げ歴史に名を残すことしか頭にない政治家とは対極の位置にある。