科学雑誌を読んで、四色定理のゲーム『サバンナテリトリー』をつくった話 アイデア編
バンソウから新作ボードゲーム『サバンナテリトリー』を発売することになりました。全国発売日は11月16日、バンソウのECサイトでの先行販売は11月上旬を予定しています。絶賛予約受付中です。
今後、発売日までの間、詳しいルールや予約特典のご紹介、デザインノートなどの最新情報をnoteで順次公開、マガジン化していきます。
というわけで、本noteはその第一弾。このゲームが生まれた時のことをお話したいと思います。
アイデアは数学の「四色定理」から
サバンナテリトリーはこんなにかわいらしいパッケージなのですが、アイデアの根っこにはミヤザキが科学雑誌の「Newton」の特集で知った四色定理という数学の定理があります。
四色定理は、「地図上で隣あう領域が異なる色になるように塗り分けるには、4色あれば足りる」という定理です。
(画像はWikipediaより引用)
上の画像のようなヘンテコな絵でも、日本地図でも、どんな地図でも4色あれば塗り分けできます。たったそれだけ。シンプル。そして僕が面白いと思ったのは、このように「どういう定理か」を説明するのは簡単なのに、それが証明されるまでにとてつもなく長い時間とドラマがあったところです。
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最初にこの定理を”四色問題”として発案したのは1852年、当時イギリスの学生だったフランシス・ガスリーさんでした(証明されるまでは「定理」でなく「問題」でした)。それから証明されるまでに120年以上かかっています。
その間に「証明されてないのは問題がしょぼすぎて有能な数学者が手を出してないからだ」とイキった発言をしておきながら解けなくてごめんなさいする数学の先生がいたり、ある人が解けたと思ってみんなで「やったー!」ってなってたら10年後に証明の間違いが証明されたり…と色々ありました。
最終的には1976年、コンピューターに計算させるという珍しい方法で証明されました。ちなみにそれについても人の手によらない証明なんてエレガントじゃないですぞ、というアンチが湧いたそうです。
ちなみに、解けたからと言ってなんの役に立つの? という点については僕もそんなに詳しくはないのですが、Newtonによれば携帯電話の基地局のエリア配置に利用されているそうです。同じ周波数をもつ基地局が隣同士にならないようにするのに活躍しているとか。
そんな四色定理の記事から、歴史と面白さを知り「これはゲームになるのでは?」と思ったのでした。「隣に同じ色を置いてはいけない」ってすでにゲームのルールっぽいですしね。
そういう時、とりあえず僕はツイートします。良くも悪くも、みんなの反応がわかるからです。
正月の深夜に何を言ってんだって感じですが、すると良いリアクションをいただけました。
杉木さんは富山でengamesというボードゲームショップ&カフェをされている方で、以前からトポロメモリーの販売でご協力いただくなどお世話になってました。僕が大好きな『BIG SHOT』の日本語版を出版されているなど出版事業もされています。
こんなに心強いことはないぞとすぐにお返事をし、杉木さんが都内にいらっしゃるタイミングでお話をすることになりました。
カフェでプロトタイプをぶつけ合う
ゲームのアイデアを思いついたばかりの段階で、似たことを考えていた人とアイデアをぶつけ合える時間を得られたのは、振り返ると物凄い幸運だったと思います。これで、モチベーションがすっごく上がりました。
杉木さんとお互いに四色定理をもとに作ったプロトタイプをプレイして、あーでもない、こーでもないと2時間くらい議論しました。プロトタイプといっても、この時のものはメモ用紙に線を引いて、色がついたチップスタンドを乗せただけです。
この段階で、ほぼ最終型の基礎になるルールはできあがりました。エリアが区切られたフィールドに、色分けされたコマを同色が隣り合わないように配置していき、最後に置けなくなったほうが負けというものです。
四色定理に従うなら、うまいことやればエリアにコマを置ききれるはず。ですが、他のプレイヤーと妨害しあえば置けなくなります。かといって、妨害しすぎると自分が置けなくなってしまうというジレンマ。置けそうで置けない、気を抜いているとあっさりと負ける、シンプルながら油断のならない面白いゲームになりそうな予感がしました。
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しかし、ゲームデザインが大変なのはここからです。「面白さ」を作るのは、実はそんなに大変なことではありません。この面白さを、どうすれば誰もが楽しめるように届く形にできるかがゲームデザインなのです。
ネタバレをすると、そこがとっても大変だったのがサバンナテリトリーでした。今回は長くなってしまったので、それは「ルール実装編」でお話ししたいと思います。
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