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LIGHT YEARS [長編小説] PART-2:伝説の夏

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女子高校生5人のフュージョンバンド「The Light Years」が駆け抜けた、10ヶ月の物語。2023年夏に完結させた、187話・115万文字に及ぶ長編小説のうち第2部です。
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2024年12月の記事一覧

Light Years(58) : Mistral

 シルバーのハイエースは、ひとまず国道沿いのコンビニの、広い駐車場の片隅に停車した。竹内顧問は、電話で警察とやり取りをしている。顧問の娘の由貴さんは、ミチルとマヤにアイスコーヒーを買ってきてくれた。さっきカフェラテを飲んだばかりだが、好意としてありがたく受け取る。 「だめだ、話が通じない」  竹内顧問は、多少の憤りを込めてスマホをドンと置いた。 「明らかに迷惑行為だと説明できる状況でないと、事件として扱えないんだと」 「この間のストーカーの時は、すぐ動いてくれたのに」  ミチ

Light Years(59) : HUMAN

 ミチルたちフュージョン部に夏休みらしい日々が戻ってきたのは、残り10日ほどという頃だった。ステファニー・カールソンの発言によって発生したミチル達への集団ストーカーは、ステファニーによる働きかけと、ネット内でさらに発生した、ストーカーの情報を晒す事による「ストーカー狩り」に恐怖した人々によって、一応の収束を見る。  ミチルたちの個人情報を晒した何人かについては、法的に対処する事になる。これについては、学校や保護者側が動いてくれる事になった。小鳥遊さんも協力してくれるらしい。ま

Light Years(60) : 哀愁交差点

 夏休み中とはいえ、フードコートの一角に高校生15人が集まっているのは、なかなか人目を引く。しかもそのうちの5人は、わりかし最近テレビで取り上げられたガールズフュージョンバンドである。チラチラと遠巻きに眺める人もいる中、フュージョン部の面々は高校生らしく、ささやかなランチタイムを楽しんでいた。 「はいっ、いま全員でランチ中でーす」  ブレないキリカとアオイは、容赦なくカメラを回す。「行儀が悪いわよ」とクレハがたしなめるものの、カメラを向けられるとにっこり微笑んでみせた。  ふ