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LIGHT YEARS [長編小説] PART-1

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女子高校生5人のフュージョンバンド「The Light Years」が駆け抜けた、10ヶ月の物語。2023年夏に完結させた、187話・115万文字に及ぶ長編小説をまとめていきます…
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#一次創作

Light Years(1):イントロダクション

◆主な登場人物 大原ミチル  南條科学技術工業高等学校、情報工学科2年。フュージョン部2年組のバンドリーダーで、主にアルトサックス、EWI担当。直情型の行動派。 折登谷ジュナ  電子工学科所属のフュージョン部2年。担当はエレキ、ごく稀に生ギター。少々尖った性格で、ミチルの親友。 工藤マーコ  電子工学科所属のフュージョン部2年。ドラムス担当。どんなリズムも耳と腕で覚えてしまう。やや天然型。 金木犀マヤ  情報工学科所属、フュージョン部2年。キーボード担当。独学で譜面の

Light Years(19) : Control

 翌朝、フュージョン部の面々はミチルがいない状況で部室に集合した。リアナが不安そうにしている中で、2年生は表面的には落ち着いたものだった。 「昨日連絡もらったけど、ミチルはひとまず大丈夫なのね」  クレハが、いつものように保冷ボトルの赤い液体を飲んでいる。それが何なのかいまだに不明だったが、ルイボスティーもしくはローズヒップティー説が有力らしい。  ジュナはいつものようにギターをかき鳴らし、全員を見渡して言った。 「ああ。疲れてはいたけど、ちゃんと起き上がってたよ。ニンニク注

Light Years(20) : Money

 噂が広まるのは早く、速かった。一昨日のラジオ局来校のインパクトが大きかったせいで、5時限目が終わる頃にはもう多くの生徒の間で、「フュージョン部が話題づくりのためにラジオ局に金を渡した」という噂が、もはや事実であるかのような空気が出来上がっていたのだ。  当然、それを全くデマだと理解している生徒もいる。部費の使途は学校に提出しなくてはならないのに、話題づくりのためにわざわざ帳簿に使途不明金を追加する部活など、あるわけがない。  だが問題はフュージョン部の千住クレハが見抜いた

Light Years(21) : 仲間を求めて

 ポニーテールとミディアムヘアの二人組の前に現れたのは、先刻フュージョン部の部室前でピンク・フロイドとビートルズを歌っていた、不審な仮面の3年女子だった。赤い帽子は脱いで、やや癖毛ぎみのショートヘアが露わになっているが、仮面はつけたままだ。 「ミチルに暴言を吐いたことで、菜緒から叱責を受けた腹いせに、くだらない噂を流したということね。信じる方もどうかと思うけど、まあ嫌がらせの仕掛けとしては悪くないわ。証拠が残らないよう、LINEなんかは使わないでアナログの伝聞を用いたところも