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「河川と人間②ー荒川の瀬替えと堤防決壊地点を歩くー」第1回 全体の流れと事前課題のこと
1)全体の流れ
これから5回分にわたって、2023年8月実施の土曜講座「河川と人間②」をご紹介します。この講座は、通称「荒川ガチ歩き」、真のタイトルを「久下~荒川の瀬替えと堤防決壊地点を歩く」としています。参加生徒を募集する保護者向けプリントには、次のような文面を掲載しました。
土曜講座「河川と人間」は、探究学習の手法をフィールドワーク、博物館見学等を通じて学ぶ講座です。宿泊合宿を伴いますので、自分自身の事は自分自身で管理してもらうことを前提に講座を実施したいと考えております。
自分のことは自分で出来ると誓った、中2~高1までの生徒12名が参加しました。1日目は、埼玉県立川の博物館に11時に現地集合とし、17時の閉館近くまで滞在。前回のプレ講座で痛感した、事前知識の欠如という反省を活かして、徹底的に博物館で「荒川」や「河川文化」そのものについて学んでもらった上で、フィールドワークにつなげる設定としました。熊谷駅に宿をとり、2日目はひろせ野鳥の森駅に集合しました。前日に引き続き、埼玉県立川の博物館学芸員の羽田武朗先生に合流していただき、終日フィールドワークをご指導いただきました。16㎞を、夏の炎天下にひたすら歩く講座です。コンビニに複数回立ち寄り、休めそうな場所では必ず休む方針で、実施しました。旧荒川の流れやカスリーン台風の決壊地点、移転による村跡等、見所たくさんの内容をご紹介いただきながら、行田駅を目指しました。余力のある希望者には、補習も実施していただきました。この壮大な合宿について、生徒のワークシート記載の素朴な感想や事後に実施したグーグルフォームで回収した報告文を交えながら、合計5回分のnoteにまとめたいと思います。お時間ある時に、一緒に歩いたつもりで全5回をお読みいただけると幸いです。
2023「河川と人間②ー荒川の瀬替えと堤防決壊地点を歩くー」
No.1 全体の流れと事前課題のこと
No.2 1日目 博物館での取り組み
No.3 【コラム】参加者生徒の視点で「合宿」紹介
No.4 2日目 フィールドワーク報告
No.5 事後の感想
2)事前課題のこと
なお、今回の記事ではプレ講座での反省をふまえ、事前アンケートに、長谷川敦著『人がつくった荒川』(旬報社 2022)の感想も課しておきました。早速、アンケート内容と簡単な結果についてご紹介しておきます。
Q)今回の土曜講座に申し込んだ理由
・昔住んでいた場所が荒川と新河岸川の合流地点に近かった。昔住んでた家から岩淵水門が見えた(J3Iくん)
・面白そうだから(J3Aくん)
・去年の荒川ガチ歩きを通して、もっと荒川について知りたいと思ったから(J2Iくん)
・担当の先生が授業で宣伝していたため(S1Tくん)
・宿泊合宿という貴重な体験に興味を持ったため(J3Nくん)
・埼玉県立川の博物館には日本一大きな水車があったり、川にいる色々な生物を観察することができたりするということがテレビで紹介されていて行ってみたいと思っていたら、埼玉県立川の博物館に行くという土曜講座を見つけたのでこの講座に申し込みました。(J2Yくん)
・歩きたかったから(J3Hくん)
・実際の川を見て歴史を体験したかったから(J2Iくん)
・フィールドワークが面白そうだったから(J3Nくん)
・中学1年生のときの荒川のガチ歩きが楽しかったから。(J2Kくん)
・家の近くに多摩川という大きな河川が流れており、川沿いに散歩をしたりサイクリングをしたりする中で川というものに親しみを覚えたから。(S1Mくん)
前回のプレ講座参加者も複数含まれていることが分かります。そして、訪問場所の「埼玉県立川の博物館」や「荒川」「河川」そのものへの関心、「宿泊合宿」や「フィールドワーク」「歩くこと」への関心などから参加してくれていることがうかがえます。
Q)前回に引き続き、河川との関わりについても聞いてみました。
Q3)君自身と河川との関わりについて、以下にあてはまるものを全てチェックしてください。(複数可)以下右の()は延べ人数。
昨年度講座「荒川ガチ歩き」に参加した(4)
川で遊んだことがある(9)
川で虫をとったことがある(5)
川で魚釣りをしたことがある(4)
川で泳いだり、水遊びをしたことがある(6)
川下りをしたことがある(6)
川沿いや河原でバーベキューをしたことがある(5)
川沿いや河原でキャンプをしたことがある(5)
川で防災研修や安全講習に参加したことがある(0)
川の調査に参加した(水質調査、生物調査など)ことがある(2)
幼稚園や小学校において、河川をテーマにした授業に参加したことがある(3)
その他(→次のQ3)①の問いに進んでください)(0)
なお、最後になりますが、課題図書の感想を紹介しておきます。
Q)長谷川敦著『人がつくった川・荒川ー水害からいのちを守り、暮らしを豊かにするー(旬報社2022)』の感想
・人間は面白い。岩淵水門のできた経緯や去年歩いたあたりが人工の川だということを知れた。(J3Iくん)
・荒川が、あれほど東京にとって重要なものだとは思わなかった。特に2回目の大工事の時に、青山士さんをはじめとする多くの人の手によって荒川の道のりを変え、東京を守ったと知って驚いた。(J2Iくん)
・昔の人々との密接な関係であったからこそ、荒川の整備が行われた事(S1Tくん)
・時代とともに人々の工夫と驚異的な力を持つ自然が共生していく姿を知り、より具体的な背景や原因などをフィールドワークという体験を通して理解したいと感じました。また、地球温暖化を始めとした様々な近年の大規模な水害について、荒川の現在から未来までに思いを巡らせました。(J3Nくん)
・この話を読んで度々大洪水を起こして川崎市や東京都南部に甚大な被害を引き起こしていた多摩川を小泉次大夫らが二ヶ領用水を引くことで洪水が起きないようにしたという話を思い出した。関東地方は多摩川、荒川、鬼怒川、利根川など大きな川が多いがこれらの川による洪水などはあまりない。これらの川があるのにも関わらず川による被害を受けずに生活できているのは誰かが川を整備しているからということをこの本によってより強く感じ、川を整備して我々の生活を守ってくれている人たちには感謝したいと思った。(J2Yくん)
・人間の力で大地を変えたこととそれが100年前でまだ土木技術が発達してないときに流路を変えたことに驚きました(J3Hくん)
・治水をすることがいかに長い間重要な課題であることと、水が十分かつ安全に利用できることが人々の暮らしに直結していることは今も変わっていないと感じた。特に荒川は首都東京を流れている川という事もあって、江戸時代から現在まで努力が続いていることがよく分かった。荒い川の名の通り様々な被害を荒川はもたらしてきたが、放水路やダム、貯水池など大規模な設備を莫大な資金をかけ建設しているところに水害から東京を守る意志の強さが江戸時代から変わらず受け継がれているなとも感じた。ただ、いかに対策を講じても予想外の災害というものは起こるものだし、地域の情報を集めたり、避難したあとのことや、その後の生活についても準備を怠らないことを大切にしたい。(J2Iくん)
・荒川は江戸時代に役立ったように、今も放水路などで役立っていて、未来のために今守らないといけないものである。荒川には歴史があり、守らないといけない。(J3Nくん)
・この本を読んで一番面白いなと思ったのは荒川放水路が作られる話です。実際に地図で22キロを調べましたが思っていたよりも何倍も長かったのでびっくりしました。また、この長さを一部の作業は手作業でやっていたと思うと相当大変だったんだろうな、と思いました。また、この荒川を整備するのにどれほどの人とお金を使ったのかが計り知れなくて、それも面白いと思いました。(J2Kくん)
・河川と人間の生活における繋がりを再認識出来た。特に近世から近代にかけて、日本という国が欧米の文化を取り入れる中で河川をどういう様なものにするか、という視点を大幅に変えたということに関してはその時代の流れによる価値観の変化を色濃く河川が反映しているということを知れた。(S1Mくん)
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読めなかった生徒が二名いました。夏休み前に周知し、合宿は8月半ばの実施ですので、少し残念でした。それ以外の生徒は、著作を何らかの形で手にしてくれていたようです。たまたまですが、第69回青少年読書感想文全国コンクール(中学生の部)の課題図書になったこともあり、今現在、最も手に入れやすい「荒川」の入門書になっていると思います。今後も、荒川実践の参加者には、推薦図書として課したいです。 次のNo.2 では、1日目の博物館での取り組みをご紹介します。