話の通じない人間
特養に入職したばかりのときは、毎日【さみしさ】を感じていた。
同僚が皆、利用者とばっかり喋るからだ。
職員同士でのトークがほとんど無かった。
いや実際は職員同士も喋っていたのかもしれないが、ろくに会話できないお年寄りにばかり声がけする若者たちのインパクトがあまりに強くて、嫉妬心と寂しさがとめどなく襲ってきたのだ。
利用者より僕のほうが会話のできない、話の通じない人間だと、レッテルを貼られた気分になった。
なんと愚かな考え方だったか。
入職から8ヶ月経ったいま、私もまた、同僚よりも会話のできない利用者にばかり喋りかける人間になった。
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